著者 : 諸田玲子
眩惑眩惑
落人となった一行。山中の逃避行で生き残った足軽・三郎太と主君の娘・小夜姫。熱夏の下、激しく求め合う二人。しかし、姫は捕らわれ、高木勝政の側室に。三郎太は工藤泰兼と名乗り、二十五年を経て戦国の覇者となり、高木を攻め落とした。小夜姫を求める泰兼に対し、彼女は「わらわが欲しくば盲いて見せよ」と冷然と言い放った…(表題作)。他二篇所収の、麗質の時代作家・諸田玲子傑作集。
幽恋舟幽恋舟
すわ、幽霊舟か-暇をもてあます舟番所の惰眠を破った不可解な一艘。夜間航行の禁を犯した主は意外にも妙齢の町娘だった。心に病を宿したその儚げな佇いに、舟番所を預かる初老の旗本の胸は年がいもなく震えた…。女を繰り返し襲う夢魔。抑えようもない恋の焔。お家騒動の因縁話をからめ水の都は波間に揺れた-。
誰そ彼れ心中誰そ彼れ心中
夫の姿をしたこの男は誰!?妻である私にしか分からぬ違和感。いや、夫を別人と確信した男がもう一人。旗本屋敷に仕掛けられた悪意が、倫ならぬ恋に油を注ぐ…。江戸の闇を切裂くサイコサスペンス。