著者 : 辻仁成
離婚して十年、そして、私はようやく恋をした。パリで暮らすシングルマザーのマリエ。小さな投資グループを主宰するアンリ。運命的なふたりの出会いは、新型コロナウイルスに翻弄される。新しい世界の永遠の恋心を描いた辻仁成の最新長編小説。
愛はあるけれど性などいらない夫、愛も性も求める妻、性のために愛を見失う夫、性も愛も超えた魂の結びつきを求める妻。子どもが同じ幼稚園に通う二組の夫婦。パートナーに対するほんの少しの隙間から始まった不倫が、4人の運命を大きくかえてゆく。
その出会いは偶然か、必然か。葬儀屋で働きながら作家を志す日系四世のケイン・オザキ。遺骨をハワイの海に撤いて欲しいという祖父の遺言を叶えるため、日本からやってきたマナ。ひょんなことから知り合った二人だったが、実は祖父同士が第四四二部隊という日系人だけで構成された第二次大戦の伝説的な陸軍部隊で戦友だったことが分かり、物語は大きく動き出す。七十年の時を経て紡がれる一大巨編。
第二次世界大戦下、フランス戦線でドイツ兵と対峙する日系アメリカ人のニック、ロバート、ヘンリー。僕らは所詮、白人の弾除けなのか。“Go for broke!”を掛け声に戦う青年たちの心は次第に壊れ、行方も散り散りになった。あれから七十年、彼らの血を引くケインとマナは数奇な運命に導かれて出会う。歴史と信仰が交差するとき、生きることの本当の意味が姿を現すー。魂の邂逅が織り成す大河小説。
あの夜を越え、「真夜中」を生きる無戸籍の少年がいた。蓮司のよき理解者でテント暮らしの源太、心優しい客引き・井島、お腹を満たしてくれるスナックのママや屋台の主人、憧れの山笠の重鎮・カエル、兄のような存在の平治、警察官の響、そして中洲育ちの少女緋真ー土地と人とに育まれ、少年は強く成長していく。家族を超えた絆を描く感動作!
元料理人のサトジが居酒屋で一目惚れした女性と、14年ぶりに再会する。彼女の名はマヨ。いまは離婚を経験し、一人娘のウフと二人で静かに暮らしていた。別れの理由は夫の横暴なふるまい。そのことがウフのこころの傷にもなっている。決して豊かとはいえない母娘の暮らしだが、ともに卵が好物で…。サトジの作る卵料理が二人に幸せの笑みをもたらしていく、芥川賞作家による初の料理小説!
ぼくはパパに育てられた。パリで生まれたぼくは、ママを失った後、パパと二人で生きてきた。大人になったぼくは、恋人と共に、パパたちの物語と自らの未来に向き合っていく。フランスで子育てをする著者が描く、家族と愛をめぐる運命的な長編小説。
19世紀終わり、筑後川最下流の大野島で刀鍛冶の息子として生まれた稔。大正七年のシベリア出兵から帰国後、手先の器用さを活かして機械の発明、改良の職に就いた彼は、あるとき戦死した兵隊や亡き初恋の人、家族、友人の鎮魂に、島中の墓の骨で一体の仏像を造ることを決意するー。明治から昭和まで、激動の時代を生き抜いた男の一生を描く長編小説。フランス、フェミナ賞外国小説賞受賞作。
その男は、いつも深夜に現れるー角膜移植の手術後、悲しみの表情をたたえたアジア系男性の幻影を見るようになったヴァレリー。これは生前の提供者の強い記憶がもたらす残像作用なのか。彼を突き止め、どうしても会いに行かなければ。眼球に焼き付くほど強く愛したその痕跡を辿って、ヴァレリーはブリュッセルから東京へと飛び立ったー運命によって呼び合わされた男と女の、明日への希望と祈りに包まれた愛の遍歴。
映画『その後のふたりーParis Tokyo Paysage』と同じ骨格を持ちながら、映画で描かれる世界の裏側に潜むもう一つの真実を文学化。ふたりの秘密がここに明かされる。
「変わらない愛って、信じますか?」小説家を目指す潤吾は、失恋の痛手のなか、韓国からの留学生・崔紅と出会いそう問われる。そこから始まる狂おしい愛の生活ー。やがて二人は、小さな行き違いで決別するが、七年後の再会で愛が蘇り…。韓国人気作家・孔枝泳(コン・ジヨン)とのコラボレーションで放つ渾身の恋愛長編小説。
七十五歳になる周作は、真珠湾攻撃から五十年の節目に、戦友の早瀬、栗城とともにハワイへ向かった。終わらない青春を抱えて生きる男。その男を生涯愛しぬいた女の死。人生の輝かしい一瞬を求めて、男ははばたく。感動の長編小説。
恋人との穏やかな日常に、突然生じた疑惑。彼女は自分を裏切り、あの男と愛しあっているのではないだろうか?身を苛む嫉妬。崩壊して行く関係。それでもなお彼女の放つ香りは理性を奪い、「私」を虜にする。そして、白い花の香りをまとったもうひとりの女ー。欲望?それとも愛なのか?「香り」を通奏低音に、愛についての張りつめた問いが続く、狂おしく、ピュアな恋愛小説。
愛を知らずに育ち、生きることに倦んでいる君に、僕の想いは伝わるだろうか。もう君は一人じゃない。僕が必ず君を受け止めるからー。養護施設で成長し、自殺未遂を繰り返す十八歳の李理香の許に届いた一通の手紙。自らも同じ境遇だと明かす手紙の主・基次郎の素直な文面に、李理香も心を開くようになるが、意外な運命が二人を待ち受ける。往復書簡が織り成す、至純な愛の物語。
笑顔の両親のもとに、泣いて生まれてきたあかんぼう。いじめを知り、人を欺くことを覚えてしまったあかんぼう。泣き、喜び、悩み、ひたむきに生きることを学んだあかんぼう。幸福に気づき、成功を収め、人生に翻弄され、挫折を知ったあかんぼう。99才まで生き、笑いながらわたしのところへやってくるあかんぼうの、人生劇場。
無人の浜で、沖を行く船に手旗信号を送り続ける義足の少女。自らの棺にするために難破船を修理する瀕死の男ー。自殺願望を抱く青年が、偶然たどりついた海辺で見た、生と死の風景。映画『千年旅人』の世界を描いた「砂を走る船」ほか、全三篇を収録。個人の生死を超越して流れる、時という大河。その河の「彼岸」に渡らず、悠々と流れを下る“千年旅人”たちがいる…。著者の死生観を示す傑作短篇集。
「人間は死ぬとき、愛されたことを思い出すヒトと愛したことを思い出すヒトとにわかれる。私はきっと愛したことを思い出す」。“好青年”とよばれる豊は結婚を控えるなか、謎の美女・沓子と出会う。そこから始まる激しくくるおしい性愛の日々。二人は別れを選択するが二十五年後の再会で…。愛に生きるすべての人に捧げる渾身の長編小説。