小説むすび | 著者 : 酒寄進一

著者 : 酒寄進一

牡猫ムルの人生観牡猫ムルの人生観

漱石の『吾輩は猫である』の原点と言われる 教養ある天才猫ムルが自らの人生を綴った奇書! 幻想文学の鬼才・ホフマン最大の問題作を 名手の翻訳で贈ります。 猫のムルは生まれたての子猫の時、稀代の知識人にして奇術師アブラハム氏によって、橋の下から拾いあげられ、大切に育てられた。アブラハム氏の家にいるあいだにムルは、氏が書き物をするそば近くに陣取って、読み書きを習得したのだった。そして、自らの人生を回想する原稿を書き始めたが、羽根ペンで書いては、近くにあった一冊の本、『楽長ヨハネス・クライスラーの伝記』のページをちぎり、吸取紙や下敷きとして原稿にはさんだのだった。いざ、原稿を出版する運びとなった折、印刷所が、はさまれた『クライスラー伝』をうっかりそのまま組み込んで印刷してしまったというのが、本書である。つまり、牡猫ムルが自らの人生を語っている文章のそこここに、音楽家クライスラーの伝記が、はさみ込まれているという二重構造の物語(二重小説)なのである。 猫が主人公の動物小説であり、怪奇小説であり、犯罪小説であり恋愛小説でもあるという贅沢なこの物語は、当初は全三巻を予定していたのだが、著者ホフマンの死によって、第二巻で未完のまま終わっている。訳者あとがき=酒寄進一

ある晴れたXデイにある晴れたXデイに

日常に忍びこむ幻想。 歪で純粋な人間心理。 みな、あとから気づく。 あの奇妙な一撃がすべてを変えた、と。 『その昔、N市では』に続く 全15作の日本オリジナル短編集! 非行の果てに死んだはずの養子に怯え、戸締まりを厳重にする妻。夫との会話から見えてくる真実とは……(「雪解け」)。知らぬ間に手脚に痣や傷が増えていく会社員の女性。親指の付け根を切ってしまっても気づかず、すねを拳骨で打ってもまったく痛みを感じない。自己観察を続ける彼女の生活は、どんどん異様になっていき……(「火中の足」)。広告塔に大きな写真が貼られ、新聞でも連日報道された、行方不明の少年を探すことに取り憑かれた女性は、その少年を見つけたのだが……(「幸せでいっぱい」)。町が消え、家も、学校も、図書館も、なにもかもがなくなる。みんないなくなり、あとは地を這う人間の残骸がいるだけ。--世界が滅亡するXデイが気がかりで、ある母親はその日に起こるはずのことについて詳細な手記を執筆する……(「ある晴れたXデイに」)。 日常に忍びこむ幻想。悲劇と幸福が結びついた人生観。歪で奇妙な家族たち。 戦後ドイツを代表する女性作家による、『その昔、N市では』に続く全15作の傑作短編集! ■目次 「雪解け」 「ポップとミンゲル」 「太った子」 「火中の足」 「財産目録」 「幸せでいっぱい」 「作家」 「脱走兵」 「いつかあるとき」 「地(じ)滑(すべ)り」 「トロワ・サパンへの執着」 「チューリップ男」 「ある晴れたXデイに」 「結婚式の客」 「旅立ち」    訳者あとがき

人間の彼方人間の彼方

わたしたちには人間である勇気があるか?  2020年春のロックダウン下のドイツを舞台に、自分とは異なる境遇の相容れない人間との一風変わった交流と友愛を、ウイットに富んだリズミカルな文体で描くウィズコロナ小説。 ベルリンの広告代理店でコピーライターとして働く36歳のドーラは、愛犬を連れて田舎の小さな村ブラッケンに逃げてきた。表向きはロックダウンした都会から人の少ない田舎に避難したようにみえるが、本当の理由は別にある。環境問題にのめりこむパートナーとの間にはしばらく前から隔たりができていて、コロナを機に過激の度合いを増す彼の態度に辟易したドーラは、彼と距離を置くことにしたのだ。のどかな田園生活を夢見ていたドーラだが、隣人のゴートはスキンヘッドのマッチョなネオナチで、もとは空き家だったドーラの家の鍵をまだ持っていて、勝手に出入りするなど、ひと筋縄ではいかない村人たちに振りまわされることになる。ゴートは無愛想ながらドーラにベッドを作ってくれたりといろいろ親切にしてくれるが、ドーラは心情的に受け入れることができない。しかしある事をきっかけにドーラの心は変わりはじめる。 ドイツ100万部超のベストセラー! ドイツ最大の人気作家のひとりユーリ・ツェーが描くウィズコロナ小説。 初の本格コロナ小説。2020年春のロックダウンの最中を描く。パンデミックが及ぼした影響を社会のレベルと個人のレベルで克明に描き切っている。 ーー「南ドイツ新聞」イェルク・マーゲナウ評 この小説を心の底からすべての人に薦める。さまざまな集団のあいだに存在する数々の壁を壊すために。 ーーベルリン=ブランデンブルク放送、フランク・ディーチュライト評

その昔、N市ではその昔、N市では

日常に忍びこむ幻想。戦慄の人間心理。 奇妙な出来事が人々を翻弄するーー。 その、巧みな一撃。 戦後ドイツを代表する女性作家の名作を集成した、 全15作の日本オリジナル短編集! ある日突然、部屋の中に巨大な鳥が現れる「ロック鳥」、旅行から帰ったら、自分が死んだと知らせてきた女がいたという話を聞く「六月半ばの真昼どき」、見た夢と現実が区別がつかなくなっていく少女を描く「ジェニファーの夢」、間違えて違う船に妹を乗せてしまった兄のもとに、常軌を逸していく妹の手紙が届き続ける「船の話」。日常に幻想が忍び込み、人間心理の恐さが背筋を震わせる。戦後ドイツを代表する女性作家の粋を集めた、本邦初訳7作を含む全15作の傑作短編集! ■目次 「白熊」 「ジェニファーの夢」 「精霊トゥンシュ」 「船の話」 「ロック鳥」 「幽霊」 「六月半ばの真昼どき」 「ルピナス」 「長い影」 「長距離電話」 「その昔、N市では」 「見知らぬ土地」 「いいですよ、わたしの天使」 「人間という」

座席ナンバー7Aの恐怖座席ナンバー7Aの恐怖

娘の命が惜しければ、おまえがいま乗っている飛行機を落とせ。 事件解決のデッドラインはブエノスアイレス発の旅客機がベルリンに着陸する瞬間。 とんでもない仕掛けをひそませた〈閉鎖空間タイムリミット・サスペンス〉! 出産を控えた娘に会うため、精神科医クリューガーは旅客機に乗り込んだ。だが機が高空に達したとき、携帯電話が鳴る。相手は言うーー娘を誘拐した。解放してほしければその旅客機を落とせ。同機のチーフパーサーのカーヤは、高校生だったときに無差別銃撃事件に巻き込まれ、心の傷を負ってクリューガーの患者となった。彼はカーヤの心の弱点を知り尽くしている。そこを突いて彼女の心を破壊し、飛行機を落とせ。 一方、ベルリン。クリューガーの娘ネレは若い男に拉致された。どことも知れぬ廃墟に監禁されたネレ。その行方を追うクリューガーの元恋人フェリ。空の密室に閉ざされたクリューガーは、なんとか事態の突破口を見出そうと恐怖に駆られつつ奔走するが、謎は深まるばかり。無差別銃撃事件の隠された真相とは? そして、なぜ機内には死んだはずの彼の妻の香水がどこからともなく香ってくるのか……? 飛行機内で展開する謎また謎。監禁された女性をめぐる必死の追跡と、その陰に張り巡らされた奸計また奸計。ドイツのベストセラー作家が再び贈る閉鎖空間サスペンス。すべての謎が解かれたとき、物語全体に波及する真実が明らかになる!

乗客ナンバー23の消失乗客ナンバー23の消失

一件落着ーーそう思ってからが本番です。 ニューヨークまで逃げ場なし。豪華客船に渦巻く謎また謎。 amazon(ドイツ)でレビュー数1,400超、評価平均4.2。 ドイツ・ミステリーの最終兵器セバスチャン・フィツェックの代表作登場。 事件解決のためなら手段を選ばぬ囮捜査官マルティンのもとに、5年前に豪華客船「海のサルタン号」船上から忽然と姿を消した妻子にまつわる秘密を明かすという連絡が届いた。相手がマルティンを呼びだしたのは、因縁の客船。そこでは2か月に船から姿を消した少女が忽然として出現。さらなる事件が次々に起きていた。 ニューヨークへ向かう客船の中で走り出す複数のプロットーー。船の奥底に監禁された女と、彼女を詰問する謎の人物。娘の忌まわしい秘密を知って恐慌を来たす女性客。何者かとともに不穏な計画を進める娘。船室のメイドを拷問する船員と、それを目撃した泥棒。船の売却を進める船主と、船の買い手である中米の男も乗船しており、マルティンを呼びだした富豪の老女は「この船には恐ろしい秘密が隠されているのよ……」とささやく。 この客船の中で何が起きているのか? からみあう嘘と裏切りと策謀ーー真相はめくらましの向こうにある! そしてあなたが「一件落着?」と思ってから、ドイツ・ミステリー界最大のベストセラー作家が腕によりをかけて仕掛けた意外な真相のつるべ打ちが開始される!

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