著者 : 長山さき
リスは夏のはじめについて考えたい。クマは二度とケーキを食べたくない。スズメは冷静さを身につけたい。アリはリスと真剣に話したい。イカはだれかに招かれたい。カブトムシはみんな陰気になってほしい。マンモスは絶滅をとりやめたい。カメはカタツムリにやさしくされたい。トカゲは目立ちたい。ザリガニは最悪なことに見舞われたい。カゲロウは明日話したい。ハリネズミはなにもほしくない…。63のどうぶつそれぞれに、まったくばらばらの、奇妙で切実な願いがある。その奇妙さが鏡となって、わたしたちの心をうつしだす。『ハリネズミの願い』『きげんのいいリス』『キリギリスのしあわせ』につづく、トーン・テレヘンの“どうぶつ物語”第4弾。
1945年1月、終戦間近なオランダの夜間外出禁止の夜に鳴り響く6発の銃声。親ナチス警視殺害の報復で家族を失った少年が、戦後に知る衝撃の事実とは何か。暴力に屈する裁判所書記の父、警官のピストルを奪って逃走した兄、慈愛に満ちた母のぬくもり、警察署の独房で遭遇した女性の柔らかい声…戦後、医師として働くアントンのもとに、忌まわしい事実の波紋が押し寄せてくる。対独協力者の父とユダヤ人の母から生を享け、「わたしが第二次大戦だ」と発言した巨匠が、戦争や罪や運命について精緻に織りあげた静かなる傑作、ついに邦訳!!!アカデミー外国語映画賞受賞『追想のかなた』。
本好きの中年男ヘンクは、離婚して老犬スフルク(ならず者)と暮らすICUのベテラン看護師。ある朝、運河沿いを散歩中、へばってしまった老犬をすばやく介抱してくれた女性がいた。この日は、かわいい姪の17歳の誕生日。元妻の情事の現場に出くわして以来、恋なんていうものとは無縁に生きてきたヘンクだが、けさ出会った同世代の女性にときめいている自分を発見する。戸惑う彼の背中を、姪のローザがどんと押す。離婚、不遇だった兄の死、やり手の弟との不仲、忍び寄る老い…人生の辛苦をさまざまに経験してきた男が、生きるよろこびを取りもどしていくさまをつぶさに描く。2020年、コロナに見舞われたオランダで、多くの人たちを慰め、励ましたベストセラー小説。リブリス文学賞受賞。
気乗りしない会合を断る嘘が作家の人生を激しく狂わせる。この作品を書いたのは、けっきょく誰なのだろう?著者の創造物「作家T」が、著者本人を創造しているかのような、複雑に入り組んだメタフィクション小説。AKO文学賞受賞。
森のはずれのキリギリスの店。窓には、大きな文字で、こう書かれていた。なんでもあります(太陽と月と星以外)。親切で働きもののキリギリスの店には、今日もまたどうぶつたちがやってくる。助け舟を出してくれるテーブル、なくならないケーキ、着替え用のうろこや羽毛、誕生会の“スピーチ”、ほんものの“絶望”、あと一日の“時間”、新しい“句読点”…。遠方の客のためにはどこへでも配達に行くが、“悲しみ”は少しずつしか売らない。たくさんだと、それは“痛み”になるからだ。だれのことも失望させたくないキリギリスは、なんでも取り揃えてどうぶつたちを迎える。ときにはいっしょにお茶をのみ、ときにはひとりでダンスをしてー。『ハリネズミの願い』『きげんのいいリス』につづく大人のための“どうぶつ物語”第三弾。
オランダ、アムステルダムのケアハウスで暮らすヘンドリック83歳。変わらない生活に辟易した彼は、もっと人生を楽しもうと、仲間と共に“オマニド(年寄りだがまだ死んでない)クラブ”を結成する。カジノに行ったり、電動カートを乗り回したり、恋をしたり。しかしそこには手強い施設長や厳しい使用規則、血糖値など、様々な壁が立ちはだかり…。高福祉国家をシルバージョークで皮肉る、オランダ32万部のベストセラー!
ブナの樹のうえに暮らす、心やさしく忘れっぽく、きげんのいいリス。知っていること考えることが多すぎて、頭の重みに耐えかねているアリ。旅に出たはずのアリは、なにかと理由をつけてはリスのそばにもどってくる。リスの家に始終やってきてあちこち壊す夢みがちなゾウ。誕生日がだいなしになって黒いなみだを流すイカ。小さい家に住んで小さいことばかり考えているカブトムシ。自分が変かどうかいつも気にしているタコ。そして、リスの背中におんぶして、小さな冒険にふみだすハリネズミ…。不器用で大まじめ、悩めるどうぶつたちが語りだす、テレヘン・ワールド!『ハリネズミの願い』の原点、幻の名作の完訳新版!
ロシア革命の翌年、サンクトペテルブルクからオランダに逃れ、痛ましくも滑稽なロシアをめぐる話を“ぼく”に語りつづけた祖父。鎮魂の思いがこめられた、宝箱のような掌篇小説集。
ある日、自分のハリが大嫌いで、ほかのどうぶつたちとうまくつきあえないハリネズミが、誰かを家に招待しようと思いたつ。さっそく手紙を書きはじめるが、もしも○○が訪ねてきたら、と想像すると、とたんに不安に襲われて、手紙を送る勇気が出ない。クマがきたら?ヒキガエルがきたら?ゾウがきたら?フクロウがきたら?-さまざまなどうぶつたちのオソロシイ訪問が、孤独なハリネズミの頭のなかで繰り広げられる。笑いながら、身につまされながら、やがて祈りながら読んでいくと、とうとうさいごに…。オランダでもっとも敬愛される作家による、臆病で気むずかしいあなたのための物語。
人生には五つの部屋があるー知識の部屋、可能性の部屋、神の暗室、がらくた部屋、そして、できれば知らなかった方がよかったことのための部屋…「疑問とともに生きるよりも、答えと生きる方がずっとむずかしいこともある」愛とは?夫婦とは?そして家族の絆とは?18ヵ国語に訳された世界的ベストセラー小説。
哲学する動物たち、ひっくり返れないことにコンプレックスをもつサギ、とまどいながらタコとお茶をするリス、理屈っぽくてナイーブなアリ、思い出をとっておく箱、風が運んでくれる木の皮の手紙…。大人のための哲学童話、待望の出版化。オランダ児童文学の金字塔、ついに翻訳刊行。