著者 : 長野きよみ
北部の都市へ職探しに行ったきりで消息のない夫を探してほしい。マシュー・ホープのもとを訪れた妻がそう依頼した直後、当の夫の身分証を持ち、顔を吹き飛ばされた無惨な射殺死体が浜辺で発見された。だが身元を確認しに来た妻は、死体は夫ではないと言う。では、この死体は何者なのか?夫の行方は?向こうで何があったのか?夫の足取りを追うマシューは、北の都市の警察に助力を乞うことにする。電話をかけると、受話器の向こうで冷静な刑事の声でこう答えた。「87分署、キャレラです」-二大ヒーロー夢の競演で贈る、シリーズ大団円。
ホープが何者かに狙撃され重傷を負った。現場はめったに一般人が足を踏み入れない危険な歓楽街。彼はなぜそんな場所に居合わせたのか?そしていったい誰に撃たれたのか?私立探偵のチェインバーズら仲間たちは、ホープの事件前の足どりを追い、彼がサーカスの興行主の依頼で用地買収の交渉にあたっており、その権利をめぐるトラブルに巻き込まれていたことを知る。一方、意識不明で病院のベッドに横たわるホープの脳裏には、銃撃前の様々な出来事が去来していた…。ミステリ史上初の“昏睡探偵”誕生。大胆な設定と練達の筆致で贈る第11作。
ニューオーリンズ伝統のジャズ・フェスティヴァルを数日後に控えた四月のある夜、祭りのプロデューサーであるハム・ブロカートが自宅で刺殺体となって発見された。気さくな人柄で誰からも愛されていた彼をいったい誰が?それと時を同じくしてハムの異母妹メロディが忽然と姿を消した。彼女が兄を殺した犯人なのか?それとも殺人を目撃して犯人に拉致されたのか?メロディの行方を捜す女刑事スキップは、やがてブロカート一族にまつわる過去の痛ましい出来事を掘り返すことに。
世界有数の暗殺者パヴァンの今回の標的ーそれはスペイン沖メノルカ島に暮らす平凡な実業家のチャリスだった。旅行客を装って島に潜入したパヴァンは、偶然チャリス一家と近づきになる。天涯孤独のパヴァンは、そこで生まれてはじめて家族の情愛に触れ、暗殺に疑問を抱きはじめた。だが、彼の逡巡を知った暗殺組織は、新たな暗殺者を送り込み、平和な島は殺戮の場に!暗殺者の孤独な生きざまを鮮烈に描いたサスペンス。
農夫のラルフが悲鳴を聞きつけて階下におりてみると、そこには胸に包丁を突き立てられ、血まみれになったゲイの弟ジョナサンが横たわっていた。-殺人の容疑で逮捕されたラルフの弁護を引き受けたホープは、犯行現場から立ち去るのを目撃された黒ずくめの男の行方を追った。さらに、被害者の交友関係をたどってカルーサのゲイ社会を調べて歩くホープの前には、過去の意外な事実が…。家族の悲劇を描くシリーズ第八弾。
「メアリー、メアリー、すごいへそ曲がり。どうしてあなたの庭はよく茂るの。銀の鈴やら貝殻や、かわいい少女が一列に…」有名なマザー・グースの一節は、あたかも三週間前に起きたショッキングな事件を予見していたかのようだった。メアリー・バートンという名の元教師が、いたいけな少女三人を殺害し、自宅の庭の花壇に遺棄した容疑で逮捕されたのだ。彼女の教え子の依頼でマシュー・ホープは弁護を引き受けるが、当のメアリーは容疑を否定するだけで、なぜか多くを語ろうとしない。その上、死体を埋めているのを目撃したという隣人や、血のついた服を預かったというクリーニング屋も現われて、状況はますます不利になっていく。はたしてホープは、万全の構えを見せる検察側を切り崩すことができるのか。息もつがせぬ法廷シーン、円熟の語り口。シリーズ中もっともエキサイティングな展開を見せる第10作。
カリブ海に浮かぶ孤島の刑務所に、精神科医セバスタポル博士が政治犯として投獄された。ある朝、同じ監房の囚人が、いきなり血を吐いて倒れる。身の危険を感じた博士は這うようにして刑務所を逃げ出すが、教会の礼拝堂にたどり着いたところで、追手のライフルに倒れる。敵の狙いは博士が密かに持ち出した一冊の大学ノート。そこには死の間際に書いたある暗号が…。偶然にノートを預かった、事件を追うジャーナリストの娘アメリアに、アメリカ壊滅を企むテロリストたちの魔の手が、次々と襲いかかる。
ニューオーリンズの街を熱くするカーニヴァルの興奮は、山車にのった〈王〉の登場で頂点に達した。そのとき、沿道のバルコニーにいたカウガール姿の人物が腰の拳銃を抜き、おどけた調子で〈王〉に狙いをつけると、引き金をひいた。次の瞬間、〈王〉は床にくずおれた。事件を目撃したスキップ・ラングドン巡査は、被害者を知っていた。学校時代の友人の父親、ニューオーリンズの政財界を牛耳るサンタマン家の主人チョンシー・サンタマンだ。市民権運動の熱心な活動家として人望も厚かった彼が、なぜ?サンタマン家の知りあいということで交通巡査から殺人事件の捜査に抜擢されたスキップは、初めての経験にとまどいと興奮を覚えながら捜査にあたった。だが、旧家の歪んだ人間関係の裏には、思いも寄らない衝撃的な秘密が…。猥雑なエネルギーに満ちた街を舞台に、旧家の悲劇を重厚な筆致で描く、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作。
父の形見の老朽船で海運業を営むポールは、英国議会の議員から驚くべき事実を告げられた。コンビュータ技師である兄のチャーリーが、政府の極秘プログラムを持って失踪したというのだ。船の修理費が必要なポールは、絶縁していた兄の捜索を不本意ながらも請け負う。だが彼は、やがて自分が世界の行方を左右する熾烈な争奪戦を展開することになろうとは、知るよしもなかった。冒険サスペンスの名手が新境地に挑む野心作。
ホープの友人の探偵が何者かに射殺された。殺されたとき彼は、著名な実業家からの依頼で“シンデレラ”の行方を追っていた。実業家は舞踏会でガラスの靴をはいた美女と出会い、一夜をともにした翌朝、高価な時計を持ち逃げされたのだ。友人を殺した犯人を見つけるため調査を始めたホープは、女が麻薬組織からも追われているのを知るが…。マイアミを舞台に展開する二重三重の追跡劇を緊迫したタッチで描くシリーズ注目作。
ミス・メルヴィルは、政府の秘密機関で働くアンドリューから暗殺の仕事を依頼された。標的は血も涙もないと恐れられる独裁王国の王妃だという。一度は断わったミス・メルヴィルだが、王妃の意外な正体を知るにおよんで銃を手に取ることを決意。が、なんと相手の王妃も彼女の命を狙っていたのだ。刻々と対決の時は迫る。シリーズ最大の敵が登場する第四弾。
三人のヴェトナム人労働者の死体は見るも無残なありさまだった。眼球は床に転がり、口には切断されたペニスが突っこまれていたのだ。現場に落ちていた男物の財布から、農場主のスティーヴン・リーズが逮捕された。彼には動機もあった。妻をレイプした犯人として、殺された三人のヴェトナム人を告訴したことがあったのだ。裁判でヴェトナム人たちに無罪の評決がくだされたとき、スティーヴンは怒り狂って、「おまえらを殺してやる」と叫んでいた。彼はそれを実行に移してしまったのだろうか?スティーヴンの実直な人柄に接して無実を信じたホープは、レイプ事件を含めた調査にのりだした。だが、事件当夜スティーヴンは自宅で寝ていたという妻の証言にもかかわらず、犯行現場付近で彼を目撃したという証人がつぎつぎと現われた…。現代アメリカ社会における人種対立を背景に、異人種間の恋愛、偏見、憎悪に鋭く切り込むシリーズ問題作。
失踪した祖父が、遥か離れた町で発見された。交通事故にあって瀕死の重傷を負い、病院に収容されたのだ。祖父の行動の理由を探り始めたデイヴィッドは、さらに驚くべき事実を知った。第二次大戦中に迫害を受けたユダヤ人の祖父は、最近ナチの戦犯を追っていたという。黒い圧力を受けつつも、調査を続けるデイヴィッドは、純真な女性との運命的な出会いの果てに、邪悪な敵との対決の時を迎える。俊英の傑作冒険サスペンス。
愛する父を殺した憎い仇がアメリカにやってくる。しかも相手は悪虐無道で知られる中米某国の独裁者。もちろんミス・メルヴィルが許すはずがない。彼女はさっそく復讐の計画を練りはじめた。しかし自宅の天井は水漏れするわ、義弟の妻は怪しげな新興宗教に凝るわで、私生活はトラブル続き…。お嬢さま育ちの元殺し屋が再び銃を手に悪を撃つ、シリーズ最新作。
ケイトは男の前で平然と服を脱ぎ、裸身を浴槽に沈めた。男がケイトの頭を水面下に押しこんだとき、彼女は何が起きたのか理解できなかった。なぜなら、彼女は盲目ではないのに、男の姿が見えなかったからだ。-ロンドンの銀行に勤務する女性プログラマーが入浴中に溺死した。警察は自殺と断定。疑問を抱いた同僚のローラは、私立探偵のディーコンに調査を依頼した。やがて第2第3の殺人が起き、姿なき犯人は異常な性格を露にしてゆく。果たして現場に残された“グローリー”という血文字は何を意味するのか?サイコ・サスペンスの野心作。
厳格すぎる父親の影響で、異常な性向を強めていった男、アラダイス。彼は次の犠牲者にローラを選び、執拗な脅迫を繰りかえす。一方、ディーコンは殺害されたプログラマーが死の直前、銀行のコンピューターに異常を発見していたことをつきとめた。どうやら銀行はプログラムを細工して、不正な操作を行っていたらしい。だが、そのディーコンにも何者かの魔手が忍びよってきた。しだいに広がる事件の環を追うディーコンとローラは、やがて大西洋を狭んだ多国籍企業の野望を知る。俊英がサイコ・サスペンスと謀略小説を融合させた迫真の力作。