著者 : 阿部和重
大麻取締法違反で起訴され、初監督作品はお蔵入り、四十を前にキャリアを失い派遣仕事で糊口をしのぐ横口健二に舞い込んできたのは、一冊の映画雑誌を手に入れるという謎の「極秘任務」だった。横口は北朝鮮からの“名前のない女”とともに、禁断の世界に足を踏み入れていく。一触即発のリアルな国際情勢を背景にくりひろげられるスリルと“愛”の物語。
ゴシキヌマの水をよこせー突如として謎の外国人テロリストに狙われることになった相葉時之は、逃げ込んだ映画館で旧友・井ノ原悠と再会。小学校時代の悪友コンビの決死の逃亡が始まる。破壊をまき散らしながら追ってくる敵が狙う水の正体は。話題の一気読みエンタメ大作、遂に文庫化。本編開始一時間前を描く掌編も収録!
謎の疫病「村上病」。太平洋戦争末期に蔵王山中に墜落した米軍機。世界同時多発テロ計画。これらに端を発する陰謀に巻き込まれた相葉と井ノ原は、少年時代の思い出を胸に勝負に出た。ちりばめられた伏線が反撃のために収束する、謎とアクション満載の100%徹夜エンタメ!巻末に書き下ろし掌編小説を収録する。
現代文学を代表する阿部和重が、9.11から3.11に至る世界と対峙した12の小説集。秘密研究施設、国際テロリスト殺害、放射能警戒区域窃盗団、少女都市伝説、拉致監禁、ヘイトデモ…世界中のエッジな場所から、おなじみのヒットナンバーに乗せて届くとびきりキツい毒と笑いの彼方に、ほのかに見える一筋の光。
アイドルのあらゆる情報を入手せよ。ネット空間で過熱するパパラッチ競争の中で、元写真週刊誌記者のタカツキリクオは若き資産家カキオカによって選ばれたターゲットEDのミカをモニターするチームの一員として能力を発揮。しかし新メンバーの加入が緻密なチームプレイを徐々に狂わせていく。
留守番電話のテープに聞き入る三人の男「声の巣」。決められた役割を忠実に演じる私たち「学校ごっこ」。女の姿をした蛇が私の部屋に住みついて「蛇を踏む」(芥川賞)。家族の頚木から解き放たれたはずなのに「家族シネマ」(芥川賞)。あのとき彼はなぜ人を拝んだのか?「不軽」。足先から滴る水と寝室に現れる兵隊たち「水滴」(芥川賞)。静かに老いゆく妻、友と見た景色「椿堂」。僕が深夜の公園で遭遇した、ある出来事「無情の世界」。現代文学四〇年の試みを眺望するシリーズ第五巻。
世界を救うために、二人は走る。東京大空襲の夜、東北の蔵王に墜落したB29。公開中止になった幻の映画。迫りくる冷酷非情な破壊者。すべての謎に答えが出たとき、カウントダウンがはじまった。二人でしか辿りつけなかった到達点。前代未聞の完全合作。
菖蒲家ー甘い香りと美しい歌声に満ちた夢の花園。だがその実態は、人心を自在に操る一子相伝の秘術を用いる魔術師一家が一二〇〇年前から住まうディストピアだった。自分の代で忌まわしい伝承を断つつもりだった父は、一族の遠大な呪縛に絡め取られていく。谷崎潤一郎賞受賞の「神町トリロジー」第二部。
神町。どこにでもあるようなこの片田舎の町は戦後日本の縮図でもあった。米軍の占領政策の一端を担ったパン屋とヤクザ、田宮家と麻生家は神町で絶大な勢力となり、息子の代になっても両家の固い結びつきは続いていたーあの事件が起きた炎熱の夏までは。壮大な構想の下に始まる「神町トリロジー」第一部。
未曾有の洪水に襲われ水没した神町。二つの死体と共に、終戦直後にこの町で起きた忌まわしい惨劇が浮かび上がる。不穏な噂が町を覆い尽くし、やがてそれは町を二分する勢力の全面抗争へ。神の町の狂態の行き着く果ては。小説のあらゆる可能性を追求し、毎日出版文化賞、伊藤整文学賞をダブル受賞した傑作。
歌を愛し、吟遊詩人を夢見ながらも、唄う能力を欠いた19歳の少女シオリ。唄うことを禁じられ、心ない者たちにその純粋さを弄ばれても夢を抱き続けるシオリに、運命はさらなる過酷な試練を突き付ける。小型核爆弾だというスーツケースを託され、東京の地下深くにひとり潜ったシオリが起こした奇跡とは。
周到に張りめぐらされた言葉が、不穏な予感を暴発させるーデビュー以来、日本文学の最先端を疾走し続ける阿部和重の危険な作品世界は、いまや次々に現実となっていく。今だからこそ読みたい初期の傑作6作品。3人のゲームクリエイターによる語り下ろし特別座談会“阿部和重ゲーム化会議”を巻末に収録。
「二〇〇一年のクリスマスを境に、我が家の紐帯は解れ」すべてを失った“わたし”は故郷に還る。そして「バスの走行音がジングルベルみたいに聞こえだした日曜日の夕方」二人の女児と出会った。神町ー土地の因縁が紡ぐ物語。ここで何が終わり、はじまったのか。第132回芥川賞受賞作。
これから起こるかもしれない“奇跡”を描いた物語ー唄うことが大好きで、吟遊詩人になることを夢見る女の子、シオリ。そんな、歌を愛してやまない少女が苛酷な運命に翻弄される、痛いほど切ない新世代のピュア・ストーリー。
17歳の鴇谷春生は、自らの名に「鴇」の文字があることからトキへのシンパシーを感じている。俺の人生に大逆転劇を起こす!-ネットで武装し、暗い部屋を飛び出して、国の特別天然記念物トキをめぐる革命計画のシナリオを手に、春生は佐渡トキ保護センターを目指した。日本という「国家」の抱える矛盾をあぶりだし、研ぎ澄まされた知的企みと白熱する物語のスリルに充ちた画期的長篇。
新世代携帯電話と高速ネットから妄想が続々と吐き出され、“リアリティ”がヤバいほど希薄になった現代ニッポン。昨日は、快楽殺人の犠牲者が夜陰に転がり、ガキたちが覚醒剤を吸う。今日も、大バカ者が超レアなブランド腕時計を命を賭けて万引きし、ストーキングを純愛と誤解する。この国を覆い尽くす狂気を抜群のユーモアとドライブ感で描破し、野間文芸新人賞に輝いた傑作作品集。