著者 : 陣出達朗
江戸城大奥で中〓@62E4夏乃が秘蔵する不思議な名器ー仲秋の名月の宵、月光に当てるとその表面に隠されているある秘密の文字が浮かぶという皿『満月丸』を奪わんと侵入した黒覆面黒装束の片目の怪人と、それを阻止せんとする白装束の美女と二匹の犬。るるとろろの忠犬二頭を従える美女は、上州安中三万石板倉伊勢守の娘美弥姫であった。数奇な運命の美弥姫は、実の父ー海の弥太郎が秘匿した十万両の謎を解かんと、仇敵竜巻権五右衛門一味と対立した。姫を助けて活躍するものに峠弦之丞があった。時に田沼意次が絶大なる権力を持つ時代であった。美弥姫の悲願ははたして成るか。-十万両と木曽川治水工事設計図の埋設場所の謎を秘めた名器をめぐる争奪の結果は。
お陰参りの集団で混雑する伊勢神宮参道に花吹雪のようにお札が舞った。打倒水野越前の不敵な文字を記したお札をまいた一団は、雲切十兵衛ひきいる雲切五人衆であった。捕り手に追われる雲切一党の美女千里のお虎の急場の難を救ってやった若侍は、岸波又四郎であった。次の集合場所に定められた尾張名古屋城の天守閣めざして、お虎と又四郎も名古屋へと急いだ。又四郎・伊織兄弟の幼き日、大坂城の金塊を江戸へ運ぶ宰領役を命じられた岸波半兵衛こそ兄弟の父であったが、宇津谷峠で盗賊団に襲われ、半兵衛は何者かの手で行方不明となった。孤児となった又四郎を養育してくれた恩人丸目洗心斎と名古屋で再会の又四郎は?黄金の行方をめぐって波瀾万丈の物語が展開する時代長編の快作。
天保4年の春のことであった。身延街道の1要地たる興津川に沿う小島の猫背山下の一本松に集まった織部熊太郎ら3人の武士が、鉄拐飛介という若者に松の根方を掘らせて取り出したものは。それこそは、200年の昔、寛永10年に埋められた月海老人の白髪の木乃伊であった。織部らに無人の塔に運ばれた月海老人の木乃伊は再生した。200年の昔、駿府城より運ばれた黄金の延棒15貫の秘宝はいずこへ?その埋没場所の秘密は月海老人の木乃伊によって握られていた。秘密の継承者猿丸柳斎の娘加代の乳房に月海の手により謎の文字が隠し彫りされた。加代の乳房に迫る悪人輩の魔手。かくて、加代を助けて美男旗本宗像宗太郎の活躍は…。-手に汗を握ぎる波乱万丈の物語。
下野国佐野ノ庄を知行地とする新御番五百石の佐野善左衛門政言とその弟の小源太義久の上に、権力者老中田沼主殿守意次と若年寄田沼山城守意知父子の横暴な手が下された。佐野家の系図と七曜の家紋の旗印はとりあげられ、鎮守様の大幟佐野大明神の文字も田沼大明神と書き替えられてしまった。佐野ノ庄をねらう田沼父子の陰謀とは。堪忍袋の緒を切った善左衛門は、江戸城中でついに山城守意知に斬ってかかった。その結果、善左衛門は切腹を命じられたが、“世直し大明神”として世にもてはやされた。一方、能勢家に迎えられた弟の義久は能勢小源太とその名を変え、営中巡察役・大御番組頭として堂々と不倶戴天の敵である主殿頭と対立していった。はたしてその結果は…。
牛込七軒寺町にある正栄山仏性寺は寺格も高く、また歴史も古い法華宗の寺であったが、その寺内の一室では住職日啓の娘お美代と、その恋人の中野清茂の2人が甘美なひとときを過ごしていた。16歳のお美代と19歳の清茂の情熱は尽きることがなかった。また、住職日啓も奇跡を現出する僧として大奥にも人気があったが、仏性寺内陣の闇の世界では色道羅刹と化して、大奥女中を相手に性の技巧を発揮し、女たちを随喜させていた。筆頭お年寄常の井はお美代を将軍家斉に献上すべく策動し、恋人中野清茂に同意させた。大奥に上がったお美代と清茂(後に石翁と改名)の野望ははてしなくふくらんでいく!-徳川11代将軍家斉の治世、将軍愛妾お美代の方をめぐる豪華絢爛たる“色道絵図”!