著者 : 隆慶一郎
戦国末期、武田水軍の海将・向井正綱は、留守中に城が徳川軍の攻撃を受け、父と義兄を失う。彼は父の遺志を継ぎ、北条水軍との駿河湾決戦で奮戦、水軍の長として汚名を返上する。そんな正綱の下に父の仇、徳川軍への誘いが来た。家康からも一目置かれた海の侍の活躍を描く隆慶一郎、未完の海洋時代小説!
捨て童子とは、この世ならぬ途方もないエネルギーを持ち、人を戦慄せしめる人物!徳川家康の第六子でありながら、容貌怪異なため、生まれ落ちてすぐ家康に「捨てよ」と言われた“鬼っ子”松平忠輝の異形の生涯を描く、傑作伝奇ロマン小説。新鮮な発想や史観、壮大なスケールで完結をみた、著者最後の長編。
凛々しく成長した忠輝は、越後福嶋藩の大名となる。福嶋藩のキリシタン化を企てる附家老・大久保長安には野望があった。ラテン語を理解し、南蛮医学まで修得するほどの開明的知性を持つ忠輝を将軍にしようというのだ。その能力と人望ゆえ、兄の将軍秀忠に恐れられた忠輝は、秀忠配下の柳生宗矩に狙われる。
後水尾天皇は十六歳の若さで即位するが、徳川幕府の圧力で二代将軍秀忠の娘、和子を皇后とすることを余儀なくされる。「鬼の子孫」八瀬童子の流れをくむ岩介ら“天皇の隠密”とともに、帝は権力に屈せず、自由を求めて、幕府の強大な権力と闘う決意をする…。著者の絶筆となった、構想宏大な伝奇ロマン大作。
徳川家康、秀忠の朝廷に対する姿勢は禁裏のもつ無形の力を衰弱させ、やがて無にしてしまうことだった。「禁中並公家諸法度」の制定や「紫衣事件」などの朝廷蔑視にあって、帝は幕府に反抗し、女帝に譲位し、自らは院政を敷くことにする…。波瀾万丈の生を歩まれる後水尾天皇を描く、未完の伝奇ロマン。
朱色の槍を振りまわし、敵陣に一人斬り込む! 豪胆ないくさ人(びと)にして、当代一流の風流人。戦国の世を自由奔放に駆けぬけた前田慶次の一代記。第2回柴田錬三郎賞受賞作。(解説・縄田一男)
武士道とは死ぬことと見つけたり-常住坐臥、死人となって生きる佐賀鍋島「葉隠」武士。死人ゆえに自由、死人ゆえに果敢、死人ゆえに晴れやかな主人公たちの、藩内外の、更には幕府相手の型破りの活躍。
武士道とは死ぬことと見つけたり-常住坐臥、死人となって生きる佐賀鍋島「葉隠」武士。斎藤杢之助、中野求馬、牛島万右衛門らの、死人ゆえに強烈、死人ゆえに爽やかな生きざま。藩の存亡をめぐって、老中・松平伊豆守信綱との対決が迫る…。
回峯修験道の新行満行を目前にした修行僧・昇運を襲った、信長の叡山焼討ち。阿闍梨への道を閉ざされた昇運の呪言が、焦土のなかに響いた…。彗星の如く時代小説界を駆けた隆慶一郎が描く壮烈な戦国絵巻。
鎌倉街道東慶寺は、「駆込寺」として知られる。寺の前のせんべい屋に居候する。“麿”は、公卿の身を捨て、住持の玉淵尼を守る忍びの棟梁である。せんべい屋の八兵衛・おかつ夫婦もまた忍びである。この三人で、駆込寺に逃れる女を救い、悪をくじくのを、人呼んで、“陰始末”-。今日も、若い女が東慶寺の石段を逃れてくる。「駆込寺」東慶寺に逃れる女たちを救う白皙の剣士“麿”とは-3人の忍者が事件に立ち向かう快作。
伝奇小説の傑作。青年大名・忠輝と秀頼の秘事。凛々しく成長した忠輝を狙う将軍秀忠と柳生宗矩、さらに藤堂高虎らの一隊。伊達政宗・大久保長安らの防衛と自由を求める人々の死を恐れぬ熱い献身。
徳川家康の第六子である松平上総介忠輝は生まれたとき色あくまで黒く、まなじり逆さに裂けていた。長じた忠輝は「騎射人にすぐれ、両腕にうろこがあり、水泳神に通じ、剣術絶倫、化現の人なり」といわれ、二十五歳で配流され、九十二歳まで生きた。まさに異能の人である。この人物がなぜ流され、秀忠・家光・家綱・綱吉の四代の将軍のもとで、なぜ許されることがなかったか、今日でも謎である。
宮本武蔵に育てられた青年剣士・松永誠一郎は、師の遺言に従い江戸・吉原に赴く。だが、その地に着くや否や、八方からの夥しい殺気が彼を取り囲んだ。吉原には裏柳生の忍びの群れが跳梁していたのだ。彼らの狙う「神君御免状」とは何か。武蔵はなぜ彼を、この色里へ送ったのか。-吉原成立の秘話、徳川家康武者説をも織り込んで縦横無尽に展開する、大型剣豪作家初の長編小説。