著者 : 青野聡
いま、アジアから、始める。人が元気に生きるということ、力強く生きるということ。世界と出会う、他の人と交わる、孤独から脱するということ。軽薄な人生論ではなく、硬直した観念論ではなく、豊かに味わう小説として、誕生。映像作家・究太郎の突然の死から、残された妻、元の妻、息子、仕事仲間たちの新しい人生が動きだす。
旅の途中で出会いを重ねた人に言わせれば、僕は変わったらしい旅の途中で彼女を思い出した人に言わせれば、彼女は悪女らしいけれど僕には、「自然」が見てきた。彼と私、二つの遍歴を重ねる野心的長編。
国際結婚に破れたキャリアウーマン日下八重が、妻ある男との恋愛で別れ話がもつれているとき、彼女の前に全身で愛を訴える年下の青年が現われた-。求めあいつつ、どこかズレてしまう二人の愛の行方は。新しい物語構成で展開する恋愛小説。
友だちの恋人が謎の失踪を遂げた。だが、あまりにも唐突な悲劇の輪郭はぼやけていて、誰もがほんとうに起きたことのような気がしない-。当事者たちの証言を集める〈私〉に向けて、記憶の集積はやがて真相を語り始めた。女の秘められた過去とは?曖昧な悲劇は確かな『出来事』になるのか?野心的手法と緻密な構成による傑作長編小説。
母は羊が二歳のときに死んだ。そして、小学校二年生になった羊の前に“新しいおかあさん”が出現する。作者みずからの生い立たちを素材に、血の繋がりのない母と子を、〈ほんとうの母と子〉に昇華させた芥川賞作家の感動の処女作。
顔も知らない育ての母、自分の出生の傷が彼女の命を奪ったかもしれないという思い、育ての母の熱い抱擁の記憶とその複雑な感情。人生の半ばにて、停滞と惑いの年齢に、日々の生活の彼方から、聞こえてくる呟きにも似た静かな言葉、未明の記憶と実生活の現実。必読の最新小説。
正体不明の「司令者」から奇妙な仕事を引き受けた男の探索行とその間の恋愛劇を通し、徒労感に苛まれる日常を生きる人間の孤独と空虚からの脱出の希望と絶望を描き、現代文学の新たな地平を拓く、本格長篇。
一年あまり離れていたあとぼくは、ベルギー人女性マルレーヌとアントワープで再会し、結婚した。やがてマルレーヌは身ごもるが、しだいに気持ちが不安定になり乱れ始めた。-愛と真のコミュニケーションを求めながら、自由への意識と結婚観の相違から傷つき破綻する青春の彷徨を描く青野聡の野心的長篇小説。