著者 : 黒原敏行
一九三〇年代、アメリカ中西部の広大な農地は厳しい日照りと砂嵐に見舞われた。作物は甚大な被害を受け、折からの大恐慌に疲弊していた多くの農民たちが、土地を失い貧しい流浪の民となった。オクラホマの小作農ジョード一家もまた、新天地カリフォルニアをめざし改造トラックに家財をつめこんで旅の途につくー苛烈な運命を逞しく生きぬく人びとの姿を描き米文学史上に力強く輝く、ノーベル賞作家の代表作、完全新訳版。
祖先が開拓した故郷の土地を捨て苦難と困窮の旅のすえ、約束の地カリフォルニアへとたどり着いたジョード一家。そこで迎えたのは、美しく豊かな果樹園や綿畑と、敵意にさらされながら低賃金のわずかな仕事を奪いあう過酷な日々だった…。歴史の荒波のなかで資本主義に翻弄される人びとの苦境を浮き彫りにし、時代を越えてなお世界じゅうで衰えぬ評価を受けつづける不朽の名作。ピュリッツァー賞受賞。映画化原作。
最終戦争後の世界。幼いころから苦楽をともにしたぼくと親友ゴンゾーは、一種のトラブルシューターとして活動している。ある日、戦後世界の秩序を維持している装置“ジョーグマンド・パイプ”の大火災を消し止めるよう依頼されたぼくらは、大量破壊兵器によってもたらされた混沌のなかへと乗り込んでいくが、行く手には奇怪な陰謀が待ち受けていたー。大型新人による波瀾万丈の近未来青春アクション・サスペンス登場!
世界を守る“ジョーグマンド・パイプ”の消火に出動したぼくと幼馴染で親友のゴンゾー。しかし、その任務は予想よりもはるかに深い闇を秘めていた。ゴンゾーと別れてひとりでさまよう羽目になったぼくは、故郷での人生をふりかえり、すべての黒幕に立ち向かうことになるが…。圧倒的な筆力で怒涛のごとく語られる、最終戦争後の世界における闘いと友情と恋。笑いとアクションに満ちて世界を驚嘆させた怪物的デビュー作。
「南米コロンビアから流入するコカインを撲滅せよ」。米大統領からの指令が下ったのは、「コブラ」の異名を持つ元CIA局員、ポール・デヴロー。冷戦を戦い抜き、対テロ戦争にも従事した男。大統領からの全権委任状を取り付けたコブラは、「復讐者」ことキャル・デクスターを仲間に加え、任務を遂行する。巨大麻薬組織“兄弟団”を標的とする“プロジェクト・コブラ”が幕を開けた!国際謀略小説の巨匠による超一級エンタテインメント!
コロンビアの巨大麻薬カルテル“兄弟団”を殱滅するため、コブラは作戦を実行に移す。敵組織幹部の娘を人質に裏切者リストを入手、それと同時に謀報網を駆使して国内への密輪ルートを暴き出す。対空用に爆撃機を配備、海上に武装艦を展開し、敵に姿を見せないまま鉄壁の組織を崩壊させてゆくコブラだったが、その作戦は大きな代償を強いるものだった…。圧倒的なリアリティで描かれる、軍事サスペンスの最高峰。
マークが、事故に遭った。カリン・シュルーターはこの世に残ったたった一人の肉親の急を知らせる深夜の電話に、駆り立てられるように故郷へと戻る。カーニー。ネブラスカ州の鶴の町。繁殖地へと渡る無数の鳥たちが羽を休めるプラット川を望む小さな田舎町へと。頭部に損傷を受け、生死の境を彷徨うマーク。だが、奇跡的な生還を歓び、言葉を失ったマークの長い長いリハビリにキャリアをなげうって献身したカリンを待っていたのは、自分を姉と認めぬ弟の言葉だった。「あんた俺の姉貴のつもりなのか?姉貴のつもりでいるんなら、頭がおかしいぜ」カプグラ症候群と呼ばれる、脳が作り出した出口のない迷宮に翻弄される姉弟。事故の、あからさまな不審さ。そして、病室に残されていた謎の紙片ー。幾多の織り糸を巧緻に、そして力強く編み上げた天才パワーズの驚異の代表作にして全米図書賞受賞作。
妻として母として、セント・ジュードにある家で50年の歳月を過ごしてきたイーニッド・ランバートにとって、山積する不満はなかなか解消されない。介護や医療費のことが不安だし、長男の嫁との関係は悪化するばかりだ。夫のアルフレッドはすでに鉄道会社を退職している元技術者で、パーキンソン病を患って痴呆症が出始めている。子供たちは子供たちで、わが家を巣立ってから何年も戻ってこないまま。しかも、それぞれの生活は行きづまっていた。長男のゲイリーは地方銀行の部長で経済的には恵まれているが、妻子との関係が不調で鬱々とした日々を送っている。反抗的な次男のチップは大学で先鋭的な文学理論を講じていたが、女子学生と関係を持って辞職に追いやられ、破産寸前の状態。末っ子で一人娘のデニースは新進気鋭のシェフとして活躍しながらも、結婚や恋愛の面で波乱の連続だ。あらゆる期待を打ち砕かれていくイーニッドに残された望みは、家族の絆を取り戻すために、家族そろってわが家でクリスマスを祝うこと。かくして、家族の絆の修正(コレクションズ)は、最後のクリスマスの日に託されたが-。家族という私的な領域と、現代アメリカが直面している社会的領域とを、さまざまな手法を用いて巧みにリンクさせ、辛辣に、滑稽に、現代人にまつわる悲喜劇を紡ぎだす。全米図書賞に輝くベストセラー小説にして、21世紀初頭のアメリカ文学最大の話題作。
「やめないと、おまえは死ぬ」アメリカのみならず、世界中の女性を魅了し続けるベストセラー作家シャンデリア・ウェルズのもとに届いた脅迫状。断わりきれぬ事情から、タナーはやむなくシャンデリアの身辺警護と事件の調査を引き受ける。次々に噴き出す疑惑の数々-別れた夫、トップの座を奪われた元女王、ふられた大富豪、盗作を叫ぶ作家の卵…だが、犯人の特定はもとより、何をやめろと言うのかすら判然としない。五里霧中のまま、ついに悲劇はタナーの目前で起きてしまった。慙愧の念を胸に、誇りと面子を賭けた、探偵の挑戦が始まる。
ナチスの殺戮を逃れた七歳の少年ヤーコプは、ギリシャ人地質学者アトスに救われ、二人はアトスの故郷の島へ逃げた。家族を虐殺されて心に深い傷を負った少年を、アトスは深い慈愛で守り、貧しいながら豊かな学問を授ける。戦後、二人はトロントは旅立ち、穏やかな日々が続く。過去の悪夢から逃れられぬヤーコプは、アトスが授けてくれた学問に救いを見出すようになる。そして、アトスのほか唯一の理解者となる妻にも巡り合った。そしていま、ヤーコプがついに得た人生の喜びは、多の者によって新たな意味を持とうとしていた…。世界25ヵ国で翻訳され、オレンジ小説賞ほか10賞を受賞した、珠玉の大作。生きることの意味を探し彷徨する魂を、流麗な文体で紡ぐ、世界的ベストセラー。
IRA、CIAなど相手を問わず無差別に暗殺を繰り返す謎のテロ組織“一月三十日”。彼らの政治的信条ばかりか、テロの目的もいっさい不明であった。やがて、北アイルランド和平の鍵を握る要人警護の命が英国特別情報機関に下り、元国際テロリストのショーン・ディロンがその任務に就いた。一方、情報をつかんだ“一月三十日”は、ディロンの裏をかき凶弾を放つべく、密かに暗殺者を差し向けるが…痛快冒険サスペンス。
タナーの飲み友達のトムが、謎の自殺を遂げた。その直前、彼はタナーの留守番電話に“血の痕跡をたどっている”と伝言を残していた。救急隊員として誇りを持っていたトムが、なぜ自殺を?あの伝言で彼はタナーに何を伝えようとしたのか?数々の疑問を抱いて調査に乗り出したタナーの前にやがて血液製剤に絡む企業の陰謀が浮かびあがるー親友の死の真相を探るため、知性派探偵タナーが大企業の悪に独り立ち向かう。
第二次大戦前夜、スエズ運河爆破を目論むヒトラーの元に、シバの神殿が発見されたとの報がもたらされた。同じころ、失踪した夫を捜しているイギリス人女性の依頼を受け、アメリカ人考古学者ギャヴィンもまた、ローマ時代の古文書を手掛かりに幻の神殿を目指していた。だが、彼の行く手を阻むのは、砂漠の苛酷な自然環境だけではなかった…ナチスの恐るべき陰謀逆巻く南アラビアの熱砂に展開する、灼熱の冒険スリラー。
天性の政治家、南部小州の民主党知事ジャック・スタントンは、聡明な妻スーザンと抱いた夢を実現すべく、大統領選挙の予備選に出馬した。彼は有力候補として快進撃を始める。が、やがてヴェトナム反戦逮捕疑惑、徴兵忌避疑惑、さらに不倫疑惑と、次々とスキャンダルの嵐に襲われる…予備選を戦い抜く知事夫妻と選挙スタッフを、若きインテリ黒人の選挙参謀の眼を通して描く話題作。映画化名『パーフェクト・カップル』。
スタントン陣営はスキャンダル潰し専門の“ゴミ掃除人”を投入して、不倫疑惑問題を解決した。だが、喜びもつかの間、今度はスタントンの子供を妊娠したという女性が現われる。さらに、思いもよらぬ強力な対立候補が登場した。しかも支持率が低下する中、ついに有能なスタッフの辞任まで起きてしまう。窮地に陥ったスタントンは、反撃に転じることができるのか?大統領選の真実の姿を生き生きと描き出す政治小説の傑作。
第二次大戦中、毛沢東とチャーチルの間で、香港租借期限の百年延長を記した密約書が調印されようとしていた。がだ書類をのせた飛行機が墜落、密約書は行方不明に。時は流れ1993年、密約書の存在を知ったマフィアは、利益を守るために香港返還を阻止せんと書類を探し始める。その企てを阻むため英情報機関の長ファーガスンは元テロリストのショーン・ディロンとともに、密約書が眠るというスコットランドの城にのりこんだ。
1985年、熾烈を極める北アイルランド紛争のさなか、王党派の闘士マイケル・ライアンは、軍資金獲得のため、大胆不敵な計画を立案した。アイルランド海をはさんで対岸のイングランド湖水地方で、五千万ポンドの金塊を運ぶ輸送車を襲撃し、海峡を越えて北アイルランドへ持ち帰ろうというのだ。マイケルは、姪のキャサリンとともに、腕の立つ船員キーオーを仲間に引き入れ、着々と計画を進める。だが、キーオーは、じつは対立するIRAのスパイだったのだ。さらに、海峡を越えるために雇った船員たちも金塊の横取りを狙い、味方のはずの王党派も横槍を入れようとする。四面楚歌の状況で、しかしマイケルの作戦は、見事成功したかに見えた…。そして10年後、行方不明になっていた金塊が、ふとしたきっかけで表舞台に再浮上した。現在では一億ポンドの価値を持つ金塊をめぐって、10年ぶりに帰国したマイケル、王党派、IRA、さらにはアメリカのマフィアまでが争奪戦に乗り出してくる。事態を憂慮した英国は、グループ・フォアのファーガスン准将に、金塊回収を命じた。だが、指令を受けたトラブル解決要員ショーン・ディロンには、誰も予想もしていなかった秘密があったのだ!冒険小説の王者ヒギンズが描く、裏切りと謀略の応酬。息つく間もない騙し合いのすえ、最後に笑うのは誰か。
常ならぬ悪夢にさいなまれた夜、ローズマリーは身ごもった。その時から、彼女の平穏な日々は奇怪な様相を呈しはじめる-巨匠が悪魔崇拝をテーマに、都会に住む現代人の孤独と狂気を描いたモダンホラーの金字塔。
アラブ人テロリスト、IRAのメンバー、KGB部員、CIAのエージェントと、次々に無差別な暗殺を重ねる謎のテロ・グループ「1月30日」-政治的信条ばかりかテロの目的もいっさい不明であり、唯一わかっているのは、暗殺の凶器に同一のベレッタを使用していることのみ。対応に苦慮した英国首相は、ファーガスン准将率いる英国特別情報機関「グループ・フォア」に指令を下した。同じころ、ファーガスンの右腕である元国際テロリストのショーン・ディロンは、アイルランドのプロテスタント系過激派組織を壊滅すべく、ベルファストに潜入していた。だが、罠を承知で乗りこんだ敵地で、思いもかけぬ反撃を受けてしまう。それを救ったのが、突然オートバイに乗って現われた謎のライダーだった。しかも驚くべきことに、そのライダーは「1月30日」のメンバーであることが判明する。いったい、彼らは何の目的でディロンを救ったのか?やがて、「1月30日」の次なる標的がアメリカ合衆国上院議員であるとの情報が入り、ディロンたちはホワイトハウスへと赴くが…。