著者 : 黒原敏行
山中で交通手段を無くした青年クインは、〈塔〉と呼ばれる新興宗教の施設に助けを求めた。そこで彼は一人の修道女に頼まれ、オゴーマンという人物を捜すことになる。だが彼は五年前、謎の死を遂げていた。平凡で善良な男に何が起きたのか。なぜ外界と隔絶した修道女が彼を捜すのか。私立探偵小説と心理ミステリをかつてない手法で繋ぎ、著者の最高傑作と称される名品が新訳で復活。解説=我孫子武丸
大物ギャングだった亡父の跡を継がず、時計職人として暮らすジョー。しかし謎の機械を修理したことをきっかけに、その平穏な生活は叩きつぶされる。疾風怒濤の傑作エンタテイメント・ミステリ!
一九三〇年代、アメリカ中西部の広大な農地は厳しい日照りと砂嵐に見舞われた。作物は甚大な被害を受け、折からの大恐慌に疲弊していた多くの農民たちが、土地を失い貧しい流浪の民となった。オクラホマの小作農ジョード一家もまた、新天地カリフォルニアをめざし改造トラックに家財をつめこんで旅の途につくー苛烈な運命を逞しく生きぬく人びとの姿を描き米文学史上に力強く輝く、ノーベル賞作家の代表作、完全新訳版。
祖先が開拓した故郷の土地を捨て苦難と困窮の旅のすえ、約束の地カリフォルニアへとたどり着いたジョード一家。そこで迎えたのは、美しく豊かな果樹園や綿畑と、敵意にさらされながら低賃金のわずかな仕事を奪いあう過酷な日々だった…。歴史の荒波のなかで資本主義に翻弄される人びとの苦境を浮き彫りにし、時代を越えてなお世界じゅうで衰えぬ評価を受けつづける不朽の名作。ピュリッツァー賞受賞。映画化原作。
最終戦争後の世界。幼いころから苦楽をともにしたぼくと親友ゴンゾーは、一種のトラブルシューターとして活動している。ある日、戦後世界の秩序を維持している装置“ジョーグマンド・パイプ”の大火災を消し止めるよう依頼されたぼくらは、大量破壊兵器によってもたらされた混沌のなかへと乗り込んでいくが、行く手には奇怪な陰謀が待ち受けていたー。大型新人による波瀾万丈の近未来青春アクション・サスペンス登場!
世界を守る“ジョーグマンド・パイプ”の消火に出動したぼくと幼馴染で親友のゴンゾー。しかし、その任務は予想よりもはるかに深い闇を秘めていた。ゴンゾーと別れてひとりでさまよう羽目になったぼくは、故郷での人生をふりかえり、すべての黒幕に立ち向かうことになるが…。圧倒的な筆力で怒涛のごとく語られる、最終戦争後の世界における闘いと友情と恋。笑いとアクションに満ちて世界を驚嘆させた怪物的デビュー作。
「コブラ」の異名を持つ元CIA局員ポール・デヴロー。冷戦や対テロ戦争に従事した男に、米大統領からコカイン産業撲滅指令が下る。コロンビアの麻薬組織を目標に「プロジェクト・コブラ」が幕を開ける!
新たなテロと認定されたコカイン汚染。米大統領指令を受け、巨大麻薬組織殲滅の「プロジェクト・コブラ」が始動。「コブラ」ことポール・デヴローは諜報網を張り巡らせ、鉄壁の組織を崩壊させてゆくが!?
マークが、事故に遭った。カリン・シュルーターはこの世に残ったたった一人の肉親の急を知らせる深夜の電話に、駆り立てられるように故郷へと戻る。カーニー。ネブラスカ州の鶴の町。繁殖地へと渡る無数の鳥たちが羽を休めるプラット川を望む小さな田舎町へと。頭部に損傷を受け、生死の境を彷徨うマーク。だが、奇跡的な生還を歓び、言葉を失ったマークの長い長いリハビリにキャリアをなげうって献身したカリンを待っていたのは、自分を姉と認めぬ弟の言葉だった。「あんた俺の姉貴のつもりなのか?姉貴のつもりでいるんなら、頭がおかしいぜ」カプグラ症候群と呼ばれる、脳が作り出した出口のない迷宮に翻弄される姉弟。事故の、あからさまな不審さ。そして、病室に残されていた謎の紙片ー。幾多の織り糸を巧緻に、そして力強く編み上げた天才パワーズの驚異の代表作にして全米図書賞受賞作。
一九五〇年代初頭、東京で服役中のニコライ・ヘルのもとにCIA局員が訪れた。ヘルは釈放と引き換えに要人を暗殺すべく北京に赴くが、行く手には死の危機が! 人気・実力No1作家の大注目作!
アメリカ側の裏切りによって、ニコライは深手を負うが、ソ連寄りの毛沢東の政策に反対する中国国防部長らの一派に命を救われる。国防部長の副官、余大佐にニコライは巧みに取引をもちかける。ヴェトナムでは激しい独立闘争でフランスの支配が揺らいでおり、アメリカがフランスの後釜に座ろうと画策していた。国防部長らはその企みを密かに封じ、アメリカと協力関係を築きたいと考えていた。そのためには、独立闘争を展開するヴェトミンにロケット・ランチャーを売って闘争に勝利させ、アメリカにヴェトナム介入を断念させる必要があった。こうした状況を踏まえ、ニコライは自分がロケット・ランチャーをヴェトミンに売る役目を果たそうと申し出たのだ。報酬として彼は、新たな身分と身分証明書を求めた。要求が受け入れられたニコライはロケット・ランチャーとともに、中国の雲南省からヴェトナムに向けて出発する。自分を裏切ったアメリカ側に復讐することを誓って。だが、行く手には、大自然の猛威とソランジュとの再会、そして激烈きわまりない闘いが待ち受けていた。
空には暗雲がたれこめ、気温は下がりつづける。目前には、植物も死に絶え、降り積もる灰に覆われて廃墟と化した世界。そのなかを父と子は、南への道をたどる。掠奪や殺人をためらわない人間たちの手から逃れ、わずかに残った食物を探し、お互いのみを生きるよすがとしてー。世界は本当に終わってしまったのか?現代文学の巨匠が、荒れ果てた大陸を漂流する父子の旅路を描きあげた渾身の長篇。ピュリッツァー賞受賞作。
イギリスの田舎町。病弱なマシューは、優しく利発な姉に守られ、幸せな少年時代を過ごした。秘密の隠れ処、化石探し、暗号の日記、子供に干渉しない両親、高い知能を隠す姉、死。そして今、二人は昏い密室で語り合う……。過去と現在が交錯する中で明かされる〈真実〉とは。12歳でW・H・スミス文学賞を受賞、22歳で本作を上梓した早熟の天才による、幻惑と郷愁の魔術的小説。 訳者あとがき=黒原敏行/解説=川出正樹
妻として母として、セント・ジュードにある家で50年の歳月を過ごしてきたイーニッド・ランバートにとって、山積する不満はなかなか解消されない。介護や医療費のことが不安だし、長男の嫁との関係は悪化するばかりだ。夫のアルフレッドはすでに鉄道会社を退職している元技術者で、パーキンソン病を患って痴呆症が出始めている。子供たちは子供たちで、わが家を巣立ってから何年も戻ってこないまま。しかも、それぞれの生活は行きづまっていた。長男のゲイリーは地方銀行の部長で経済的には恵まれているが、妻子との関係が不調で鬱々とした日々を送っている。反抗的な次男のチップは大学で先鋭的な文学理論を講じていたが、女子学生と関係を持って辞職に追いやられ、破産寸前の状態。末っ子で一人娘のデニースは新進気鋭のシェフとして活躍しながらも、結婚や恋愛の面で波乱の連続だ。あらゆる期待を打ち砕かれていくイーニッドに残された望みは、家族の絆を取り戻すために、家族そろってわが家でクリスマスを祝うこと。かくして、家族の絆の修正(コレクションズ)は、最後のクリスマスの日に託されたが-。家族という私的な領域と、現代アメリカが直面している社会的領域とを、さまざまな手法を用いて巧みにリンクさせ、辛辣に、滑稽に、現代人にまつわる悲喜劇を紡ぎだす。全米図書賞に輝くベストセラー小説にして、21世紀初頭のアメリカ文学最大の話題作。
「やめないと、おまえは死ぬ」アメリカのみならず、世界中の女性を魅了し続けるベストセラー作家シャンデリア・ウェルズのもとに届いた脅迫状。断わりきれぬ事情から、タナーはやむなくシャンデリアの身辺警護と事件の調査を引き受ける。次々に噴き出す疑惑の数々-別れた夫、トップの座を奪われた元女王、ふられた大富豪、盗作を叫ぶ作家の卵…だが、犯人の特定はもとより、何をやめろと言うのかすら判然としない。五里霧中のまま、ついに悲劇はタナーの目前で起きてしまった。慙愧の念を胸に、誇りと面子を賭けた、探偵の挑戦が始まる。
ナチスの殺戮を逃れた七歳の少年ヤーコプは、ギリシャ人地質学者アトスに救われ、二人はアトスの故郷の島へ逃げた。家族を虐殺されて心に深い傷を負った少年を、アトスは深い慈愛で守り、貧しいながら豊かな学問を授ける。戦後、二人はトロントは旅立ち、穏やかな日々が続く。過去の悪夢から逃れられぬヤーコプは、アトスが授けてくれた学問に救いを見出すようになる。そして、アトスのほか唯一の理解者となる妻にも巡り合った。そしていま、ヤーコプがついに得た人生の喜びは、多の者によって新たな意味を持とうとしていた…。世界25ヵ国で翻訳され、オレンジ小説賞ほか10賞を受賞した、珠玉の大作。生きることの意味を探し彷徨する魂を、流麗な文体で紡ぐ、世界的ベストセラー。
IRA、CIAなど相手を問わず無差別に暗殺を繰り返す謎のテロ組織“一月三十日”。彼らの政治的信条ばかりか、テロの目的もいっさい不明であった。やがて、北アイルランド和平の鍵を握る要人警護の命が英国特別情報機関に下り、元国際テロリストのショーン・ディロンがその任務に就いた。一方、情報をつかんだ“一月三十日”は、ディロンの裏をかき凶弾を放つべく、密かに暗殺者を差し向けるが…痛快冒険サスペンス。
タナーの飲み友達のトムが、謎の自殺を遂げた。その直前、彼はタナーの留守番電話に“血の痕跡をたどっている”と伝言を残していた。救急隊員として誇りを持っていたトムが、なぜ自殺を?あの伝言で彼はタナーに何を伝えようとしたのか?数々の疑問を抱いて調査に乗り出したタナーの前にやがて血液製剤に絡む企業の陰謀が浮かびあがるー親友の死の真相を探るため、知性派探偵タナーが大企業の悪に独り立ち向かう。
第二次大戦前夜、スエズ運河爆破を目論むヒトラーの元に、シバの神殿が発見されたとの報がもたらされた。同じころ、失踪した夫を捜しているイギリス人女性の依頼を受け、アメリカ人考古学者ギャヴィンもまた、ローマ時代の古文書を手掛かりに幻の神殿を目指していた。だが、彼の行く手を阻むのは、砂漠の苛酷な自然環境だけではなかった…ナチスの恐るべき陰謀逆巻く南アラビアの熱砂に展開する、灼熱の冒険スリラー。