著者 : 黒原敏行
スタントン陣営はスキャンダル潰し専門の“ゴミ掃除人”を投入して、不倫疑惑問題を解決した。だが、喜びもつかの間、今度はスタントンの子供を妊娠したという女性が現われる。さらに、思いもよらぬ強力な対立候補が登場した。しかも支持率が低下する中、ついに有能なスタッフの辞任まで起きてしまう。窮地に陥ったスタントンは、反撃に転じることができるのか?大統領選の真実の姿を生き生きと描き出す政治小説の傑作。
第二次大戦中、毛沢東とチャーチルの間で、香港租借期限の百年延長を記した密約書が調印されようとしていた。がだ書類をのせた飛行機が墜落、密約書は行方不明に。時は流れ1993年、密約書の存在を知ったマフィアは、利益を守るために香港返還を阻止せんと書類を探し始める。その企てを阻むため英情報機関の長ファーガスンは元テロリストのショーン・ディロンとともに、密約書が眠るというスコットランドの城にのりこんだ。
1985年、熾烈を極める北アイルランド紛争のさなか、王党派の闘士マイケル・ライアンは、軍資金獲得のため、大胆不敵な計画を立案した。アイルランド海をはさんで対岸のイングランド湖水地方で、五千万ポンドの金塊を運ぶ輸送車を襲撃し、海峡を越えて北アイルランドへ持ち帰ろうというのだ。マイケルは、姪のキャサリンとともに、腕の立つ船員キーオーを仲間に引き入れ、着々と計画を進める。だが、キーオーは、じつは対立するIRAのスパイだったのだ。さらに、海峡を越えるために雇った船員たちも金塊の横取りを狙い、味方のはずの王党派も横槍を入れようとする。四面楚歌の状況で、しかしマイケルの作戦は、見事成功したかに見えた…。そして10年後、行方不明になっていた金塊が、ふとしたきっかけで表舞台に再浮上した。現在では一億ポンドの価値を持つ金塊をめぐって、10年ぶりに帰国したマイケル、王党派、IRA、さらにはアメリカのマフィアまでが争奪戦に乗り出してくる。事態を憂慮した英国は、グループ・フォアのファーガスン准将に、金塊回収を命じた。だが、指令を受けたトラブル解決要員ショーン・ディロンには、誰も予想もしていなかった秘密があったのだ!冒険小説の王者ヒギンズが描く、裏切りと謀略の応酬。息つく間もない騙し合いのすえ、最後に笑うのは誰か。
常ならぬ悪夢にさいなまれた夜、ローズマリーは身ごもった。その時から、彼女の平穏な日々は奇怪な様相を呈しはじめる-巨匠が悪魔崇拝をテーマに、都会に住む現代人の孤独と狂気を描いたモダンホラーの金字塔。
アラブ人テロリスト、IRAのメンバー、KGB部員、CIAのエージェントと、次々に無差別な暗殺を重ねる謎のテロ・グループ「1月30日」-政治的信条ばかりかテロの目的もいっさい不明であり、唯一わかっているのは、暗殺の凶器に同一のベレッタを使用していることのみ。対応に苦慮した英国首相は、ファーガスン准将率いる英国特別情報機関「グループ・フォア」に指令を下した。同じころ、ファーガスンの右腕である元国際テロリストのショーン・ディロンは、アイルランドのプロテスタント系過激派組織を壊滅すべく、ベルファストに潜入していた。だが、罠を承知で乗りこんだ敵地で、思いもかけぬ反撃を受けてしまう。それを救ったのが、突然オートバイに乗って現われた謎のライダーだった。しかも驚くべきことに、そのライダーは「1月30日」のメンバーであることが判明する。いったい、彼らは何の目的でディロンを救ったのか?やがて、「1月30日」の次なる標的がアメリカ合衆国上院議員であるとの情報が入り、ディロンたちはホワイトハウスへと赴くが…。
けちな浮気調査で糊口をしのいでいる私立探偵ジャック・フリッポのもとに保険金詐欺の調査の仕事が舞い込んだ。テキサスの田舎町で不審な溺死を遂げた男に、五十万ドルもの生命保険がかけられていたというのだ。受取人は、いかがわしい酒場の経営者エクルズだった。左前になった店を立て直すために、喉から手が出るほど保険金が欲しい様子。プンプン臭う事件を追うジャックに、曲者や俗物たちがからんで、てんやわんやの騒ぎに…。
ホームレスのジョーイは、財布を盗んだ男が心臓発作で急死したばかりに謀殺罪に問われた。刑事弁護士のディーンは彼の弁護を引き受けるが、まもなくジョーイの供述書の署名が偽造されていたという驚愕の事実が浮かんだ。いったいなにが、警察の内部で起きているのか?調査を続行するディーンは、知らぬうち巨大な陰謀に飲みこまれていった。
1939年、砂漠で碑文の発掘を続けていたドイツ人考古学者ムラーは、ついにシバの神殿の発見に成功した。第二次世界大戦の勃発を目前にひかえ、折りしもスエズ運河の破壊をたくらんでいたヒトラーは、神殿を破壊工作の拠点とするべく、ムラーをベルリンへ召喚する。一方そのころ、アデン湾に臨む港町ダーレインをねじろにするアメリカ人船長ギャヴィンのもとを、イギリス人の女ルースが訪ねてくる。神殿をさがしもとめて行方不明になった夫を捜すため、協力してくれないかというのだ。かくして砂漠へ向かった彼らの行く手では、世界を揺るがすナチス・ドイツの陰謀が着々と進行していた。
天性の政治家、南部小州の民主党知事ジャック・スタントンと聡明で野心的なその妻スーザンは、長年共和党に占められてきた大統領の座をねらって、予備選出馬を決意する。が、出馬そうそうつぎつぎと襲いくるメディアの猛攻撃-録音テープ付きのセックス・スキャンダル、妊娠騒動、ヴェトナム反戦逮捕歴、徴兵忌避-にさらされる。おかげでスタントンの名は全国的に知られるようになるが、支持率は低下の一方。しかも、有力な対立候補の健闘、より強力な新対立候補の出現と、スタントン陣営は息つぐひまもない。あいつぐ危機に沈没寸前のスタントン陣営は、ついに強力な秘密兵器、スキャンダル潰し専門の“ゴミ掃除人”まで投入するが…。
1944年、重慶。毛沢東とチャーチルの間にかわされる重大な密約書を携えた陸軍少佐キャンベルを乗せ、ダコタは飛び立った。共産軍への英軍の協力の見返りとして、1997年までの香港の租借期限を百年延長する、というのだ。ところが、ダコタは撃墜されて炎上、密約書は行方不明となった。時は流れ、香港返還を目前にして、マフィアが「重慶密約」の存在を知った。香港に多額の資本を投下している組織にとって、返還が延びるのは願ってもないことだ。くだんの密約書は、キャンベルの故郷スコットランドの一族の城に埋もれているらしい。マフィアはドンの姪の息子で実業家のモーガンを、捜索のため城に送りこんだ。一方、その動きをつかんだ英情報機関グループ・フォアの長ファーガスンは、自らスコットランドへ赴く。そして、モーガンの義理の娘アスタに元IRAテロリストのショーン・ディロンを接近させた。やがて、二人の間には危険な火花が散りはじめる…。誇り高きハイランドの地に繰り広げられる、会心の冒険サスペンス。
弁護士から浮気調査を請け負って日銭を稼いでいるジャック・フリッポは、かつてはやり手の検事補として誰からも一目置かれる存在だった。ところが、女との火遊びがもとで検事局を馘になってからというもの、彼の人生は転落の一途。妻には逃げられ、家も財産も失い、いまは安アパートでわびしい独り暮らし。そんな彼のもとに、経営コンサルタント会社社長のバディ・ジョージの妻から、夫の不貞の動かぬ証拠をつかんでほしいという依頼が舞い込んだ。なんなく情事の模様を盗聴したまではよかったが、敵も録音テープを取り戻そうと必死の様子。おまけに依頼人の女がとんだ食わせ者だった。バディの妻というのは真っ赤な嘘で、どうやら彼から大金を巻き上げようという魂胆らしいのだが…。虚飾の街ダラスを舞台に、大金をめぐって繰り広げられる丁々発止の騙し合い。英国推理作家協会賞の最優秀処女長篇賞に輝いた注目のクライム・ノヴェル。
私立探偵のジョン・タナーは、大学の同窓会で二十五年ぶりに再会した親友のセス・ハートマンから一通の手紙を渡された。それは〈南部の誇り〉同盟と名乗る白人極右集団が、セスに宛てた死刑宣告状だった。現在チャールストンで弁護士をしているセスは、大学時代に公民権運動に参加したことを除けば、脅迫を受ける心当たりはまったくないという。なぜ彼らはセスを標的にするのか。背後関係を探りはじめたタナーは、セスの依頼人たちも同様の脅迫を受けていることを知る。やがて、狂信的な極右集団は、十字架を燃やすなどその脅迫手段をますますエスカレートさせてきた。
カリブ海に浮かぶヴァージン諸島。もっとも危険な暗礁といわれるサンダー・ポイントでダイビングをしていたベイカーは、沈没して珊瑚に覆われたUボートを発見した艦内から持ち出した艦長の日記を読んで、ベイカーは驚愕した。なんと、そのUボートはナチの最高幹部の一人マルティン・ボルマンを南米へ脱出させる途中だったというのだ。しかも、当時の英米のナチ支援者の名簿と、ウィンザー公がナチに協力を約した秘密文書が積まれているらしい。これらの書類が明るみに出るようなことがあれば、英国にとっては一大スキャンダルとなる。ベイカーの知らせで、ファーガスン准将ひきいる英国情報機関グループ・フォアが書類の回収に乗り出した。ところが、ベイカーが交通事故で死亡したためUボートの沈没場所がわからなくなった上に、書類のありかを探ろうとする別のグループが存在することが判明した。そこで、ファーガスンは思い切った策に出た。元IRAのテロリストで熟練のダイバーでもあるショーン・ディロンを、回収作戦の実行者としてヴァージン諸島に送り込んだのである。Uボートに眠る秘密をカリブの青い海に探る、会心の冒険サスペンス。
CIAを引退し、身辺警護コンサルタントをしているナーマンは、ホロコーストを生きのびたユダヤ人で、ナチ・ハンターとしてその名を轟かせていた。ある日、彼のもとにドイツ連邦情報局のフォアシャーゲが訪ねてきた。殺し屋がナーマンを狙っているから気をつけろというのだ。殺しを命じたのは、なんと現ドイツ首相ヴァルトナーだという。
私立探偵ジョン・タナーにとって、救急車の運転手をしているトム・クランドールは大切な友人だった。おなじバーに通い、たまに話を交わす程度の仲だったとはいえ、その彼が歓楽街で死体で発見されたというニュースはショックだった。しかも、自殺の可能性があるという。たしかにトムは悩みを抱えていた。企業買収でのしあがった大富豪が、金にものをいわせて彼の最愛の妻を奪おうとしていたのだ。だが、タナーにはどうしても、トムが自殺するような男だとは思えなかった。そもそも、なぜトムは歓楽街にいたのか。そして、彼が死ぬ直前にタナーの留守番電話に残した、「おれはいま血の痕跡をたどっている」というメッセージの意味とは。死にいたるまでのトムの足跡をたどりはじめたタナーの前に、頑ななまでの正義感ゆえに周囲の者の人生を狂わせていた友の姿が浮かびあがってきた。深い人間洞察に裏打ちされた正統派ハードボイルド。
「サダム・フセインの力を世界に示せ」イラクのフセイン大統領の命を受けた大富豪アルーンは、湾岸戦争のさなか、パリで一人の男に接触した。男の名はショーン・ディロン。元IRAのメンバーで、変装を得意とする名うての国際テロリストである。多額の報酬と引き換えにディロンは仕事を受諾、標的を訪仏中のサッチャーに定めるが、密告により暗殺は失敗した。密告者の情報から、暗殺を図った犯人がIRA関係者であることを知ったフランス情報部DGSEのエルニュ大佐と、イギリス国防情報部のファーガスン准将は、元IRAの闘士マーティン・ブロスナンに協力を要請する。ブロスナンは犯人がディロンだと断言するが、自ら行動することは拒否した。ディロンとの間には浅からぬ因縁があったが、今は硝煙の世界と訣別していたからだ。だが、やがて痛ましい事件が起き、彼は銃をとりディロンの行方を追い始める。一方、ディロンは新たな計画を進めていた。標的は英国首相官邸。戦時閣議が開かれているその官邸を迫撃砲で攻撃し、メージャー首相と閣僚を抹殺しようというのだ。だが、彼の背後には、ブロスナンの追跡の手が確実に迫っていた…。『テロリストに薔薇を』で鮮烈な印象を残したマーティン・ブロスナンが再び登場、冷酷なテロリストと宿命の対決を繰りひろげる。湾岸戦争中に実際に起きた英国首相官邸砲撃事件を題材に描く、白熱の冒険アクション。
最初の結婚に失敗し、二度目に幸せな家庭を築いたものの、最愛の妻と一人娘をある悲惨な事故でいっぺんに失くしたマットが、帰りたくない過去のおぞましい事件の謎に迫っていく。ボストンに登場した異色の私立探偵マット・ジェイコブ・シリーズ第2弾。
身に覚えのない罪で刑務所入りした主人公が復讐を誓い、出所後に自分を罠にかけた人物をつきとめようとする-。弱小出版社の社長の机のうえに忽然とあらわれた原稿は、ベストセラー間違いなしの傑作だった。だが、原稿には肝心の結末が欠けており、著者の正体も不明だった。私立探偵ジョン・タナーは出版社の社長から、著者をさがしだして残りの原稿を手に入れてくれと依頼された。原稿に目をとおしてみると、たしかに圧倒的な迫力があった。もしかすると、これは著者の実体験をつづったノンフィクションではないのか。そう考えたタナーは、原稿の記述を手がかりに調査をはじめた。過去に実際起きた事件を描いたものならば、主人公をはめた犯人は、いったい誰なのか?出版界を舞台に、知性派探偵ジョン・タナーが現実と虚構のはざまから真実を探りだす異色ハードボイルド。