ジャンル : ノンフィクション
時は幕末。倒幕だ佐幕だ攘夷だ開国だ、と意識の高い周囲の連中のなかで逼塞していた浪人・松浦佐太郎は、とある縁で助けた男に「勤皇の志士」という言葉を吹き込まれ、覚醒する。だが、高杉晋作、坂本龍馬ら名だたる英雄から思いを託され維新を最後まで見届けようとした佐太郎は、革命の渦中で大きな矛盾に気づいてゆく…。
あることをきっかけに人がちがったようにふるまう姉妹の話「怪獣」、自分の写し絵を取り戻してくれと泣く娘の話「恨の蠑螺」、盂蘭盆の夜に海に出てはいけないと言われる婚約者の話「海亀」、そして美しい狐にとりつかれる若い歌舞役者の話「岩井紫妻の恋」など、動物や道具を媒介に、異界と交わるものたちを描いた好評妖異譚の第七集。綺堂が自ら編んだ短篇シリーズ最終巻より全十二篇と、単行本未収の附録一篇を収める。 〈解題〉千葉俊二 カバー・口絵 山本タカトによる書き下ろし
北の小さな田舎町。中学校の生徒会長・一村が遺体で見つかった。警察の捜査が難航する中、同級生の徹也は友人の古館の様子がおかしいことに気づく。やがて異常な事件が続発。徹也と仲間たちは隠された真実を探す。喪失と絶望、疑心と対立、目眩と希望ー。激しい雨に襲われた十五歳の夏。少年少女はただ一度の季節を走り抜ける。
尾張国守護代の重臣で、富と力を蓄え織田弾正忠家の名を高めた織田信秀の番頭格・柴田権六勝家は、困惑していた。信秀の後継者である信長が、型破りな男だからだ。このままでは、先代がせっかく大きくした“家”を守ることはできないー。織田家の軍団長たちの連帯と反目を描き、働く男たち共感必至の戦国絵巻、ここに開幕!
徹底した取材と綿密な調査に基づいた重厚な歴史小説で知られる著者。その文学的出発点を示す初期作品群から、死体の側から生の姿を問う表題作、初の芥川賞候補作「鉄橋」など一九五二年から六〇年に発表された七編を収める。巻末にエッセイ「遠い道程」を収録。(全二巻)
『戦艦武蔵』以前の吉村文学の中核をなす自選短篇集。芥川賞候補で死を見据えた表題作、集団自殺へと傾斜する少年たちを描く太宰治賞受賞作「星への旅」ほか。一九六一年から六六年の七編を収める。(全二巻) 〈解説〉荒川洋治
町方の手の届かぬところで暴れる外道を剛剣で葬る浪人奉行ーその正体は麹町の片隅で干物とめし、酒しか出さぬ店の主、八雲兼四郎であることに常連客は誰一人気付いていない。折しも目黒界隈の商家が立て続けに襲われる凶事が発生。しかも押し込み前には決まって、娘や嫁が行方知れずになっているという。泣き寝入りも同然の惨状を耳にした兼四郎は賊成敗へと乗り込んでいく。大反響シリーズ、堂々の第五弾!
『果しなき流れの果に』『復活の日』『日本沈没』-。日本SF史に輝く傑作の数々を遺した小松左京の原点は、戦中戦後の動乱期を過ごした旧制中学・高校時代にあった。また京大人文研とのつながりから、大阪万博にブレーンとして関わった顛末とは。幻の自伝的青春小説と手記によって、そのエネルギッシュな日々が甦る。若き日の漫画家デビューなど、新事実も踏まえた文庫オリジナル編集版。
高校生の岡崎直樹を殺人者へと仕立て上げた川上邦明の遺体が発見された。刑事企画課特別捜査官の東堂定春は、ミハンシステムにおける過去2件のテストケースで関わった人物が事故死、失踪している点に注目する。彼らに共通しているのは、法で裁けなかった犯罪者だということだ。妻と娘を殺された井沢範人をはじめ、犯罪被害者となった過去をもつミハンメンバーの関与が疑われる。捜査が進むなか、川上殺しの重要参考人として連行されたのは井沢だった。犯人は井沢なのか、それとも別の人物か。そして桜木泉の“死”の真相は…?数々の謎が解明されていき、いよいよ物語は衝撃のクライマックスを迎える!
「ひぐま」こと樋口まりあは、人見知りの性格が災いし、就活をことごとく失敗した二十三歳。ある日、祖母の紹介で「コメヘン」という食品商社の面接を受ける。大学で学んだ応用化学を生かせる、と意気込むまりあだったが、採用はよもやの社長秘書。そして、初出勤の日に目にしたのはなぜか、山盛りのキャベツだった。
五十三歳の真行寺弘道は、「巡査長」という肩書きが警視庁捜査一課で異例なだけでなく、きっちり公休を取り自宅のオーディオでロックを聴くのが楽しみという、刑事としてはかなりの変わり種。捜査の「お約束」である所轄刑事との相勤を避けて単独行動するなど、型破りな行動・言動で知られている。 そしてこのベテラン刑事、ヒラなのに、やけにデカい事件に当たる。 元警察官僚の尾関一郎衆院議員変死事件に続くヤマは、インド人変死事件。荒川沿いを流していた真行寺は、捜査員たちに出くわす。河川敷で死体が発見されたという。やがてこの死体はインド人男性のものであることが判明。死体の耳の周囲に残る火傷に着目し、事件性を感じた真行寺は、インドを専門とする若き研究者・時任の協力を得て真相に迫るがーー。 シリーズ第一巻『巡査長 真行寺弘道』が、読売新聞、しんぶん赤旗、産経新聞、「小説推理」など各紙誌で絶賛された、圧倒的なスケールの痛快エンターテインメント第二弾!
危機を迎える。残ったのは「プール好き」のアニオタ&水中歩行要員のみ。部の存続のため部員集めに奔走する龍一は、市民プールで水中を滑降するように泳ぐ“人魚”を見つけた。それは同じクラスの謎めいた美少女・雪村襟香で?『快晴フライング』改題 あの「マカン・マラン」の原点がここに! 人気キャラ・シャールさん初登場作品です。
美味しくてやめられない、これぞグルメ小説の元祖ー。大食漢の文学士・大原と、料理に凄腕を発揮するお登和のロマンスを軸に、和洋中、四季折々、膨大な数の各種料理を蘊蓄たっぷりに紹介。前代未聞のその手法で絶大な人気を博した本書は、実用性を貴び家庭料理の近代化を説く先見的な食の啓蒙書でもあった。嫁入り道具としても重宝された明治期最大級のベストセラーを、読みやすい現代語抄訳で初めて文庫化。
事件は起こる前に潰せーそんな指針のもと、危険な組織や犯罪者を闇処理する警視庁特殊企画課に所属する山神翔二。そんな彼が今回手がけるミッションは、覚せい剤を派手にさばく半グレ集団「怒羅愚」と芸能界の癒着を白日の下に晒すこと。さっそくシャブ中たちが出入りする六本木のキャバクラに潜入するも、アフターしたキャバ嬢が目の前でさらわれ、山神自身も重傷を負ってしまう。さらには第二、第三の罠が仕掛けられ、絶体絶命の窮地に。起死回生の一手として、山神は「熱狂工作」を発動する。
ある朝目覚めた小説家の俺は、「昨日」の記憶がないことに気づく。どうやら俺は一日ごとに記憶がリセットされ、新しいことを覚えられないという症状を抱えているらしい。可愛い女の子と出会っても、小説を書き進めても、そのすべてを明日には忘れてしまう。絶望的な状況のなか、「負けるものか。諦めるものか。絶対に書くんだ」というメッセージとともに5万字を越える書きかけの小説が、パソコンの中には残されておりーー。第六回ネット小説大賞を受賞した「あきらめない」物語、待望の書籍化!
大晦日に開かれるクラシック・コンサートの手伝いをすることとなった杉原爽香。準備が着々と進む中、思いがけず誘拐事件の渦中に巻き込まれてしまった。犯罪の片棒を担ぐ者や、愛息を奪われた夫妻。悲劇の当事者たちはさらなる泥沼にはまっていき…。爽香は相次ぐ事件の連鎖を断ち切ることができるか!?読者と共に登場人物が年齢を重ねる大人気シリーズ第31弾!
ドクターヘリの墜落事故によってPTSDを発症した灰谷はカウンセリングを受けはじめる。そんな灰谷を見守る同期フェローの名取と横峯は、過去に起きた事故現場で藍沢、白石、緋山、冴島、藤川から受けたさまざまな指導を思い出し、命の重さについて改めて考えていた。灰谷は新たな一歩を踏み出すことができるのか…?『THE THIRD SEASON』から『劇場版コード・ブルー』につながる感動秘話がここに!医療現場での経験を通して少しずつ成長するフェローたちを描いた短編5話『もう一つの日常』も収録。