出版社 : サンリオ
深夜2時。ラジオから流れるDJの甘い声とショパンの調べ。そう、このDJ、ジョナサン・ウッズこそが私が今必要としている人だわ。クラシック専門のラジオ局WQPBから聴取率アップを依頼されていたキャシーは、ゆっくりとうなずいた。早速彼に会って、局のイメージアップに協力してくれるよう要請しなければ…。キャシーは善は急げとばかりにオンエア中のスタジオにかけつけ、そのドアをそっと開けた。
ジョージア州アトランタ。1年前に夫をなくしたジェニーヴァは、刺繍を教えたりしながら幼い娘とともに静かに暮らしている。こうして穏やかな日々を送れるのも、亡夫の弟ローディの存在があればこそ。彼は、ジェニーヴァのことをなにくれとなく気にかけてくれるのだ。しかし、ローディの瞳に燃える炎をみとめるたびにジェニーヴァの心はかき乱されるのだった。
「ソエルディン候爵のもとに嫁ぐのだ」父、マドレスコート公爵の言葉に、レディ・ロレッタは当惑した。夫については、以前から夢に描いた理想像があった。それが、一度も会ったことのないフランス人の男性と結婚するなんて…。思い悩んだロレッタは身分を偽ってフランスへ渡り当の男性の人柄を見極めようと決意した。
タレント・エージェントのローリーは、こともあろうに、テニスコートの男子用更衣室のロッカーに身を潜めていた。マスコミ嫌いで知られる若手No.1プレーヤー、スティーブにCM出演を承知させるためだった。やがて、スティーブの声が聞こえドアの閉まる音がした。そっとロッカーの扉を開けてみると…、日に焼けて引き締まったスティーブの背中が見えた。
マサチューセッツ州ケープ・コッド。リビーは、夫の死後、海辺の小さなホテルを経営していた。ある日、雑誌の編集をしている友人の取材を受けるため、ホテルの整備をしなければならないことになった。そのための人手をどうしようか…。ため息をつくリビーの背後から、男の声がした。ふり向くと、たくましい肢体の男が仕事を求めて、立っていた。彼はこの一年、全国を放浪していたという。彼のグレーの瞳は、冬の嵐のように悲しげだった。
準男爵である父の死後、キルクレイグ家は、破産状態だった。ダビータは、義姉で女優のバイオレットを頼りに、スコットランドを出て、ロンドンに向かった。はじめて見るロンドンは、夢のようであり、その華やかさに、彼女は魅了されてしまった。ある夜、ダビータは、レストラン・ロマノで、パンジ侯爵と出会った。女泣かせの彼の噂を聞いていた彼女は、思いがけず、彼の、ハンサムで、威厳のある風格に見とれた。ところが、次第に心を許しはじめたダビータに、侯爵はいきなり、スコットランドへ帰るよう、いい放つのだった。
ハリウッド、ビバリーヒルズ。豪邸住まいの淑母に留守番役を言い渡されスザンナは浮かれ気分だ。憧れのロールスロイスで、海岸へドライブに出かけた。ところが、途中で道に迷い、あげくの果てに車が故障。困ったスザンナは、近くのビーチハウスへ助けを求めた。ドアを開けたのは、黒みがかった鋭い瞳の男。男は故障を直し、窮地を救ってくれた。しかし、スザンナは、彼の質素な服装から、失業中と思い、同情する。数日後、再びスザンナの前にビーチの男が現れた。その時まで、彼があの有名なデザイナーC・J・ヤングだとは思いもしなかった。
キャリーは腕ききの株式仲買人。離婚後、自立して、着々とキャリアを築いている。ところが、ある日、おかしな客がやってきた。将来性のない株を大事に持ったその男は、黒い髪にブルーの瞳を光らせてキャリーのアドバイスを待っている。こういう時は、納得のいく資料を見せるのが一番だ。ところが、あいにく、目の前のコンピュータは故障中。隣室のスクリーンを見て、戻ってみると、男は、コンピュータを分解し始めているではないか。キャリーは、ペースをくずされっ放しだった。
「姉さんの代わりにインタビューするなんていやよ!」ティナは、双子の姉に向かって叫んだ。インタビューの相手は、世界的なシンガーソングライター、シェーン・マクファレン。なにしろ、彼は、マスコミ嫌いで有名な大物だ。やっととりつけたインタビューを、風邪のためフイにすることはできない。とは言え、奔放な性格の姉とは正反対の私がうまく彼女になりすますことができるのだろうか。しかし、ついにティナは、姉の懇願に負けてシェーンのいるカナディアン・ロッキーに赴くのだが…。
フェリーサ・ダールがまだ13歳のとき、ダーリントン公爵は、虐待されている彼女を残酷な父親から救った。公爵は、彼女を連れ帰り、フランスの修道院へ預けた。それから5年-。70万ポンドの遺産を相続したフェリーサのもとに、財産めあての不審な男たちが、頻繁に訪れているという。公爵は、彼女をイギリスにつれ戻すために、パリに向かった。5年ぶりに会うフェリーサは、美しい女性に成長していた。しかし、子供時代に受けた心の傷は、今も癒えていない。-美しいフェリーサは男が怖いのだ。だが、どうすれば彼女の心を開くことができるのだろう?公爵は、茫然とした目で、フェリーサを見つめた。
リー・ブラムウェルは、高利貸デマルコから追われていた。以前から、デマルコをよく知っていたリーは、FBIからデマルコに対する不利な証言をしてほしいと協力を依頼されていた。しかし、デマルコは、その証言を阻止するためには、手段を選ばない男なのだ。ある日、逃亡生活を続けるリーのもとに、ひとりの男が現われた。野性的な瞳と、ひげが印象的な男。彼も、デマルコの手下、それとも…。
もう理想の男性が現れないからボーイフレンドの求めに応じてしまおうかしら。秘書のマギーは、インターコムが入ったままとも知らず、同僚と話していた。すると、社長室から、マギーを呼ぶ声がする。あわててかけつけると、社長のジェームズが目を輝かせている。「きみの言っていることは全部聞いたよ。それなら、ぼくが恋の手ほどきをしてあげよう」社長が恋人の代わりなんて、ジェームズの言葉に、マギーは声も出なかった。
コネチカットの田舎町ファーミントン。ロックンローラーのマロリーは、皆の期待するセクシーシンボルの役に嫌気がさし、静養のため、この町に引きこもったのだった。ある日、スーパーで買い物をしているとき、ふとしたことから、医者デビッドと知り合いになった。そして、彼に、自分のいる世界にはない誠実さを感じ、マロリーは、強くひかれていった。しかし、デビッドが知っているのは素顔のマロリー。マロリーは、彼に真実を打ち明けることができなかった。ところが、デビッドは、レコード屋で、マロリーのレコードを見かけてしまった。マロリーの正体を知り、デビッドは…。
フォード家は、エリザベス女王の治世に建てられた、広大な屋敷で、代々、暮らしていた。しかし、ジェレミーとマリオタの父親である。フォードカム卿は、称号と領地を継承した時、共に巨額の負債も抱えこみ、貧しさにあえいでいた。ある日、ジェレミーは、貧困に焦燥感を募らせ、妹のマリオタに、窮状の打開策を持ちかけた。それは、なんと、強盗をはたらくということだった。マリオタは、呆れ果て、とり合おうとしなかった。が、ジェレミーは一向にあきらめず、ついに、マリオタは、計画に加担することになった-。ワーセスター街道で、2人が息をひそめていると、向こうから、パッケンハム伯爵の馬車が来た。
メイン州、ブラックウェル島。苦い過去から逃げるように、この島に来て3年、ケイトは酒場を経営していた。しかし、そろそろこの島から出て、社会に帰らなければならない。ケイトは酒場の表に「売店舗」の張紙を出すと、うなずいた。これでいいわ。その時、今日1番の客が来た。堅物の保安官マットではないか。なにかにつけて、文句を言ってきたマットがいったい何の用だろう-。とまどうケイトを背に、マットは、ただひとり、酒を飲むばかりだった。
ジョアンナは、美しいオクラホマシティの町並に目を奪われていた。わたしは、前夫ジェロッドに会おうとしている。彼の先妻の子どもとの折り合いが悪く、別れてから7年-。画家として、社会的には成功をおさめていたが、心のなかでは、ジェロッドのイメージは大きくなるばかりだった。今でもあなたを愛していると告げたい。すべてはそれからだ。ジョアンナは、決意も新たにジェロッドの部屋へと続くドアを押した。
ユーナは、フィレンツェの女子修道院学校を卒業し、父のいるパリに向かった。在学中は、母の遺産で生計を立てていた。が、お金も底をつき、父に手紙を書くと、モンマルトルへ呼ばれたのだった。ところが、父のアトリエに着くと、ユーナを待っていたのは、ひとりの画商だった。彼はユーナに、父ソローの死を告げた。途方に暮れるユーナ…。みかねた画商は、ユーナを、ウオルスタントン公爵に引き合わせた。女性遍歴の多い公爵は、ユーナのういういしさが信じられず、疑惑のまなざしで見つめるばかりだった。
吹雪のボストン。イメージ・コンサルタントのジルは、ようやくタクシーに乗れ、ほっとしていた。だが、渋滞の中、ジルと運転手のルークは、何げない言葉のやりとりから、険悪になっていた。やっと目的地に着き、代金を払おうとすると財布がない。困るジルにルークは、同窓会に出席する僕のためにイメージチェンジをしてくれないかと、提案した。もしだめなら、無銭乗車で警察に突き出すという。どうしよう…。ジルは仕方なく提案に従い、再会を約束するのだった。
2年前に夫を亡くしたソフィーは、幼い双子を抱え、ここモンタナで暮していた。ようやく双子が寝てくれた…。ほっとして外を見ると、見慣れぬ車が隣の屋敷に止まり、男が降り立った。あの家は、この前女主人が亡くなったところだ。見慣れない男が、いったい何の用なのだろう。男は、はじめて訪れる家に勝手がわからず助けを求めるように、こちらに近づいてくる。今、ベルを鳴らさないで!赤ちゃんが起きてしまうわ。ソフィーはあわててドアを開けた。と、そこに立っていたのは、グリーンの瞳に、肩までの長髪、引き締まった体の持ち主だった。