出版社 : サンリオ
時は1838年、インディアンのセミノール族は土地を追われようとしていた。部族の窮地を救いに来た金髪の男スローンは、その中に美しい白人の娘を見つけ、驚いた。〈ワイルド・ハニー〉と呼ばれるその娘は、白い肌を持ちながらセミノール・インディアンとしてフロリダの自然の中で暮らすチャラ。美しさの中にも、インディアンとしての気高さを秘めたチャラに強く惹かれていくスローン。だが、チャラは誰かに似ている-スローンがその答えを見い出したときから、チャラの運命は、思いもかけない方向へと導かれていった。
カウボーイブーツを響かせ、マローンがやってきた。ジェーシーはマローンと組んで昼の連続ドラマのシナリオを書いている。今のところ、番組は高視聴率をあげている。ところが、彼は、いつになくうかない顔をしている。きいてみれば、プロデューサーの意向で昔ジェーシーの恋人だった俳優デレクがもう一度ドラマに戻ってくるという。私を裏切った男、あのデレクが帰ってくる!ジェーシーは動揺のあまり彼女を見つめるマローンの複雑なまなざしにも気づかなかった。
ハリウッドの敏腕ディレクター、アシュリーは、ただ一つ、苦手なものがあった。それは子ども。2年間、アシュリーは、2人の子どもを持つ派手好きなディレクターと結婚していた。しかし、その子どもとそりが合わず、以来、子どもは一番の苦手となったのだ。ところが、今日のコマーシャル撮りはよりによって2歳の男の子。きっと言うことをきかず、泣きわめくにちがいない。しかし、その赤毛の男の子はまるで天使のよう。そしてその父親は…。服装にはかまわないものの、何か心惹かれるものがある。アシュリーの胸はときめいた。
レディー・ヴェスタは、ひとり、地中海の小国、カトーナの埠頭に立っていた。カトーナの王妃にと求められたヴェスタは、父に切望され、相手の顔も知らぬまま、イギリスをあとにした。そして、ここで出迎えのミロバン男爵と会うはずだった。ところが、ヴェスタの目の前に現れたのは、ミクロス・ツァコー伯爵だった。彼は、革命が起こりそうだからヴェスタにすぐに帰国するように勧める。しかし、ヴェスタの決意は固く、何としても夫となる大公殿下に会うという。ヴェスタの頑固さに、さすがの伯爵も折れ、2人は大公殿下の住む宮殿をめざして歩き出した。
スーザンは、ファッション雑誌「ヴォーグ」の編集者として、将来を嘱望されていた。そのスーザンが恋に落ちた。相手は世界的に名の知れた若きピアニスト、リチャード・アントニーニ。まるで少女のように、リチャードとの生活を夢みるスーザン。しかし、妻となったスーザンは、音楽一家アントニーニ家のあまりの異質さに愕然とする。そして、一家に君臨する母マリアは、まったくスーザンをうけいれようとはしなかった。
リチャードは、30歳を過ぎていまだに自立できない-。偉大な母マリアの操り人形だった。障害を持つ自分の娘を愛することもできず、他の女との過ちをくりかえすリチャード。スーザンが恋に落ちたころの、思いやりとウィットに富んだ貴公子の姿は、もうどこにもなかった。リチャードとの暮しに疲れ、ずたずたになったスーザンは、ふと、もうひとつの愛に賭けてみようかと考える。穏やかで、誠実な愛に-。
シャーリー、26歳、先天性心臓弁膜症-。カルテには、こうあった。病院の白いベッド、激しい発作、死すらもシャーリーには友だちだった。ナイーブな感性と知性で、どんな苦しみにも、ユーモアの魔法をかけてしまう。有能な青年弁護士ブライアンは、そんな人柄に、たちまち魅せられた。愛する人とのデート、抱擁、セックス、結婚。女としての愛のひとつずつに、光をあててゆくシャーリーに、ブライアンは強く優しく応えるのだった。映画「ラブ・ストーリイ」以来の愛のドラマとして、ニューヨークでもベストセラーになった話題作。
ライターとして駆け出しのジェシーにかつての無声映画の大スター、メルセデスの伝記を書くというチャンスが巡ってきた。そかし、メルセデスが出した条件は、ハリウッドきってのセクシーシンボルであるカム・ホールダーの家のバラ園に灰をまいてくる-という奇妙なものだった。そのために彼の邸宅に忍び込んだジェシー。ところが番犬にほえたてられアボカドの木にのぼって難を逃れる始末。と、犬を呼ぶ声がした。あれが、カム・ホールダー…。ジェシーは黒髪の男をじっと見つめたままその男らしさに声も出なかった。
カリフォルニアの山岳地帯-。動物保護施設の創設者ケンドールは、体の弱った動物をできるだけ自然に近い所で育て野性に帰す仕事をしていた。ある日、アメリカンライオン、クーガが険しい山の中にまよいこんでしまった。人の手で育てられたクーガは野生では生きられない。捕獲し、保護しなければならない。しかし、それには日頃動物を傷つけるとし敵対している名うてのハンター、チャズ・ドルトンに頼むしかない。ケンドールは勇気を振り絞って山小屋の戸をたたいた。
カニュエラは病弱な母とふたり、ロンドンの片田舎で人目を避け、暮らしていた。外交官の父は国家機密漏洩の疑惑をかけられ職を追われ、失意のうちに自殺してしまった。カニュエラは父の冤罪をはらすことを望みながら、生活を支えるため、秘書の職に就いた。ところが彼女を雇ったのは、偶然にも、父を罠にかけたラモン・デ・ロペスだった。深い恨みを胸に秘め、素姓を隠して働くカニュエラにロペスはアルゼンチンでの仕事を命じた。思い出と屈辱の、あのブエノスアイレスで…。
ブルックは、研究機関WIWEの研究員。海外出張中の研究員、ミードの家の2階に住んでいる。ある夜、階下から響く奇妙な音楽で目をさました。家主のミードが、出張から戻ったようだ。ミードは民俗学の研究者で、世界各地をまわっていて、ブルックは、まだ会ったことがない。意を決してミードの部屋へ赴いたブルック。目の前に、現れたのは、ギリシャ神のようにたくましい体に、褐色の肌の魅力的な男だった。
ビリーは慣れない馬の扱いにとまどっていた。ストレスと運動不足の解消にポロスクールに入学したのだがポロゲームどころか、まだ馬に乗れないのだ。向こうではインストラクターが笑いをこらえている。きっと私のことを不器用な女だと思っているのだろう。と、見かねたひとりのインストラクターが近づいてきた。「大丈夫ですか」手を貸そうとした彼の青い瞳に見つめられた瞬間ビリーは落馬し、彼の厚い胸に抱きかかえられていた。
19世紀。イングランド南東部では「魔女伝説」が広まっていた。ある日、アルドリッジ侯爵は、エセツクス州にある城に向かった。途中、スティープル村を通りかかると、村人たちが瀕死の女を囲み、虐待を加えている。女は魔女なので水責めにするところだという。見れば、端正な顔だちの若く、美しい娘だった。侯爵は、村人たちを非難し、そのまま彼女を城に、連れていった。侯爵の手厚い看護に彼女は次第に回復していくが、アイディラという名前以外、いっさいの記憶を失っていた。焦燥感にとらわれ、沈みがちな彼女を見かねた侯爵は、アイディラの謎を解こうと乗り出すのだが…。
貴族的な端正な顔だち、とびきり美しいサファイア色の瞳。ナターシャは、目の前の客の顔を見て驚いた。なんと、少し前、ブラウスの返品に行き、その時の対応が不満でブラウスを投げつけてきた男ではないか。彼はナターシャを捜していたという。いったいなぜ?何の用があるというのだろう。しかし、勤務中では思うように訊ねることができない。結局、ナターシャは強引に閉店後に会う約束をさせられてしまうのだった。
交通事故で、足が不自由になったレスリーにとって心の支えは同じ出版社に勤めるジョエルの存在だった。絶えずレスリーを力づけてくれるジョエルは彼女にとって初恋の人であり、今もあこがれている人だ。しかし、この不自由な体では彼の足手まといになってしまう。そんな彼女に、医者は再手術を勧める。むずかしい手術に躊躇するレスリーをジョエルはやさしく励ますのだが…。
両親をトルコ大地震で亡くしたアスターラは父の親友であり、大富豪でもあるロードリック卿のもとに身を寄せた。この上なく美しく成人したある日、アスターラはヨーハン・ファン・アーヘンの描いた『パリスの審判』という絵を買った。その絵を見て、ロードリック卿は名案を思いつく。アスターラに3人の甥から夫を選ばせ彼の莫大な財産を譲ろうというのだ。しかし、ヘラやアテナがパリスに誘いかけたように、2人の甥は心をそそるようなえさを持ち出し彼女をつろうとするのだが、3番目の甥は黄金のリンゴをほしがろうともしないのだ…。
ケンタッキー州レキシントン。サラブレッド牧場に足を踏み入れたレアンナは、故郷に戻ったような開放感を味わっていた。と、柵の向こうに車が止まり男が降りてきた。あのひとは…あのひとは私が探し求めていたひと。そう、5年前のパーティの一夜、熱い抱擁とくちづけで私を酔わせたひと。男の名はトラヴィス・マーティン。この牧場の主だという。なつかしさに微笑みかけるレアンナにマーティンの瞳は一瞬輝いたが次の瞬間、マーティンの態度は冷たく-。
ケイトはニックとの共著でミステリーを書くことになった。そんな折、ケイトは亡くなった叔父からヴィクトリア調の屋敷を相続することになった。しかし相続のためには、シカゴ郊外のその屋敷に6カ月間住まなければならなかった。仕事を失いたくないケイトはニックと一緒に住むことを企てる。だが仕事のためとはいえ、知り合って間もない男と暮らすのは危険すぎる。しかも、ニックはあまりにセクシーすぎるのだった。