出版社 : ハーパーコリンズ・ジャパン
「君はそうとう変わった小娘だ。自覚はあるのかい?」伯爵に見つめられ、オリビアは逃げ出したい衝動を懸命にこらえた。物憂げな黒い瞳と漆黒の髪。危険な魅力にあふれた強烈な存在感。彼がシンフル・シンクレアー罪深きシンクレア伯爵と呼ばれるのは、名字の語呂合わせと黒い噂のせいだけではないらしい。オリビアは勇気をかき集め、ある私的な調査に行きづまったこと、その調査で先代伯爵の汚名を晴らせる可能性があることを説明した。一笑に付されながらも必死に協力を仰ぐオリビアだったが、ふいに伯爵は身をかがめ、彼女の柔らかな唇に指をすべらせた。「帰ってくれ。夜の楽しみを台無しにした償いをさせたくなる前に」
貧しくも女手一つで懸命に幼い娘を育てるエリー。ある雪の夜、家の前に見知らぬ男性が倒れていた。記憶喪失の彼を看病するうち、いつしかエリーは彼を愛するように。しかしそれも彼の素性が明らかになるまでのこと。まさか、彼の正体が伯爵とはつゆ知らず…。(『雪のプロローグ』)。もとはレディでありながら家庭教師に身をやつすセーラの前に、思いもよらない人物が現れたー公爵の弟にして“サファイア王”と呼ばれるほど富を築いた大富豪レヴィールだ。かつては愛し合ったのに、セーラを捨て去った男との6年ぶりの再会。彼女の心は複雑に揺れた。だが今、一介の使用人と上流階級の来客という身分の壁に阻まれ、セーラは彼と自由に話すことさえままならないのだった。(『サファイアの魔法』)。男爵の娘ベスは生涯独身を通すと決めている。自分勝手な人間の多い貴族社会にはもううんざりだから。そこで、父が決めた意に染まぬ婚約者をかわすため、幼なじみの貴族ジャックに求婚者のふりをしてほしいと頼み、偽りの婚約劇を繰り広げることに。実のところ、ジャックはベスを本当の妻にするつもりでいるとは思いもせずに。(『クリスマスは伯爵と』)。リージェンシー・ロマンスの名手たちが贈る、愛の奇跡がきらめくクリスマス短篇集!
まさかセバスチャンが、重要な取引先の社長だったなんて…。デザイナーの卵のジェシカはセビリアにある会社を訪れ、服作りに最高の素材と出合うが、社長が誰かを知って愕然とした。豪壮な館に住むスペイン伯爵のセバスチャンとは、従妹の恋の不始末を巡って激しい言葉の応酬を繰り広げたばかりだった。彼は、話をするため伯爵邸を訪れたジェシカを従妹だと思い込み、金目当ての性悪女と、一方的に罵ったのだ。商談の席でも侮辱を続ける相手の頬を、ジェシカが思わず平手で打つと、セバスチャンは気高い顔に軽蔑と怒りの色を浮かべ、言い放った。「我が一族に手をあげた者は、必ず報いを受けるぞ!」
仕事を失ったうえ恋人にも裏切られ、キティの心はぼろぼろだった。そんななか、友人と立ち上げた引っ越し会社に思わぬ依頼がー依頼人は由緒正しき准男爵家の新当主セバスチャン・デルフォント。ロンドンの高級住宅街にある屋敷へ移り住むのだという。黒髪に精悍な顔だち、たくましくて長身の彼を一目見た瞬間、キティは心を奪われてしまった!そして丁寧な仕事ぶりが認められたのか、爵位の継承を広く知らせるための仕事もすることになる。6週間の契約でセバスチャンが催すパーティを手伝ううち、いつしかキティは彼の“恋人”として寄り添える日を夢見るように…。
数カ月の休暇のあと、看護師のルーシーは仕事に復帰した。その初日、彼女は信じられない話を耳にする。コナーが小児科長として病院に戻ってきたというのだ。なによりも仕事を優先し、恋人だったルーシーを捨てていった彼。医師としてさらに出世するためアメリカへ渡ったはずなのに、なぜ今になって戻ってきたのかしら…?その答えは、ルーシーが恐れていたとおりだった。コナーは、別れたあとで彼女が密かに産んだ娘に会いに来たのだ!そして、娘の正式な父親になるためならなんでもすると言い放つ。ルーシーは不実な彼を信じられず、なんとしても娘を守ると心に誓った。
インテリアデザインの仕事をしていたサマンサは、ホテル王ニックと知り合い、熱い一夜を共にして息子を授かった。だが、彼は妻や子供はいらないと公言し、独身貴族の生活を謳歌中。サマンサは自らの妊娠をニックに告白することなどできず、遠い異国へ移住し、子供を密かに産み育てようと決めたのだった。5年後、サマンサはラスベガスの豪華なオフィスでニックと再会した。やむを得ない事情で帰国して仕事の再開をネットで告知したところ、ニックがさっそく連絡をくれ、緊急の仕事を依頼してきたのだ。生活の糧を得られて安堵しながらも、彼女は大きな不安に苛まれた。息子の父親が誰かをニックに知られたら、いったいどうするの?
なんてすてきな先生!ハンサムで、有能で、落ちついていて…。ルイーザが秘書兼受付係をする診療所の新しい顔で、たちまち患者やスタッフの注目の的となったギフォード医師。けれどルイーザだけは、皆に同調して浮かれたりはしなかった。気まずい出会い方をして以来、先生はわたしを嫌っているみたい。視線は冷たいし、無表情で何を考えているかわからない。ところがギフォード付きとなったルイーザは、彼の自宅へ同行してまで仕事をすることになり、しだいに思慕の念を抱くようになる。しかし彼には、婚約者がいた。美しいけれど意地悪な婚約者が。あの女性は先生にふさわしくないーでも、誰だったらふさわしいの?
25歳の誕生日を迎えたモリーは、深いため息をついた。リアムに恋して、いったい何年たったのかしら。地味で野暮ったい図書館司書の私は、会社社長の彼にとってはただの友達。女性として見てはくれない。ましてや彼は、ガールフレンドに不自由しない色男なのだ。なのに、あきらめようと思っても、恋心は募る一方。悩んだあげく、モリーはついに大きな決断をした。リアム好みの華やかな女性に変身して、彼を振り向かせるわ!そして手始めに、リアムに告げた。「私はある男性を愛しているの」すると彼は、モリーの想い人“ミスターX”に嫉妬し始め…。
アナベルはロンドンの病院で働く救急救命士。日夜患者の救助にあたりながら、女手一つで7歳の息子を育てている。同僚や友人に恵まれ、今でこそ暮らしは落ち着いたが、8年前は違った。当時、恋人のハリーとともに救命士を目指していた。先に彼の就職が決まり、勤務地のドバイへ一緒に旅立つことにしたのに、彼は空港で突然アナベルに別れを告げ、一人で行ってしまったのだ。その後、妊娠に気づいた彼女が連絡をしても、返事さえよこさなかった。音信不通のまま時が過ぎ、半年前に息子が大けがで死線を彷徨ったとき、最後に一度だけ留守電にメッセージを残した。「帰ってきて」と。そして今、アナベルは乗客救助に向かった空港で、ハリーと再会するー。
太陽のような笑顔と艶やかな黒髪をした、楽しく魅力的なフランコ。18歳のジョアンは留学先のイタリアで出会った瞬間、恋に落ちた。フランコが妹のようにしか見てくれなくても幸せだったージョアンとよく似た年上のいとこ、ローズマリーが訪ねてくるまでは。いとこの優雅で繊細な大人の女性の魅力に惹かれたフランコは、ジョアンの目の前で、ローズマリーと結婚してしまったのだ。あれから8年。久しぶりに再会したフランコは病で妻を失い、あの頃とはまるで別人のように暗く沈んでいた。いまだ彼への愛を秘めたジョアンは、張り裂けそうな心で思った。いとこの身代わりでもいい。それで彼を癒やせるのなら…。
18歳のエルサはある夜、幼い頃から兄のように慕ってきた、サンティの家のベッドに潜り込んで彼を待った。黒い瞳のハンサムな彼への恋心を抑えきれずに。だが冷たく拒絶され、傷心を抱えて進学先のウィーンへ。5年後、ウィーンで働き始めた彼女の前にサンティが現れる。190センチ近い長身。エルサの腿ほどもある二の腕。今や巨万の富をもつ富豪となった彼は、ある犯罪集団から彼女を守りに来たという。よりによって、なぜサンティが?「僕についてこい。二人になるまで質問はなしだ」
「結婚式だけでなく、きみをめちゃくちゃにしに来たんだ」見知らぬ男性がリムジンの後部座席で邪悪な笑みを浮かべた。この世のものとは思えないほど美しい男性の正体は、いま祭壇の前でプリヤを待つ花婿の異母弟、エロースだった。エロースは父親の遺産を総取りしようともくろむ異母兄に対抗し、相続の条件である結婚を壊しに来たのだという。一方、愛する父が遺した会社と従業員を守るために泣く泣く契約結婚をしようとしていたプリヤは、エーゲ海の別荘へと連れ去られてもなお、心のどこかで安堵していた。罪深いほど魅惑的なエロースに、愛なき結婚を迫られるまでは。
貧しい家に生まれ、身持ちの悪い母と姉を見て育ったアイリーン。彼女はただ一つ、自分に誓っていることがあったー愛する人とめぐり逢い結婚するまで、純潔を守り通すこと。だが親友の結婚式で彼を見たとき、一瞬その決意が揺らいだ。プレイボーイとして知られ、異国の王族の血を引くシャリフが、あまりに美しく、あまりにセクシーで、あまりに尊大だったから。彼は無垢なアイリーンを誘惑し、強引にベッドへ運ぼうとするが、生まれて初めて女性に拒絶されて驚き、困惑して立ち去った。翌朝現れたシャリフは態度を一変させ、予想外の提案をする。挙式間近の妹の世話係になってくれたら高額の報酬を支払う、と。
ロクサーヌは生まれてすぐに母親を亡くし、父親と乳母から厳格なしつけを受けて育った。ある日、ロクサーヌは親友のバースデーパーティで、スペインの血を引く大富豪フアン・アルマンド・ラミレスと出会う。漆黒の髪と鋭い瞳を持つ彼は、鷲を思わせる威圧感を漂わせている。射抜くような視線を向けられ、ロクサーヌはおののきながらも、経験のない胸のときめきを感じ、気づけば彼とダンスを踊っていた。これが運命の出会い?だが、うぶな彼女は想像もしていなかった。まさかフアンが意図的に彼女の名誉を傷つけ、彼の妻にならざるを得ない状況を作り出すとは!
牧師の5人娘の長女フィリーは、美人揃いの妹たちに比べて平凡な容姿の田舎娘だ。ある日、都会から来たハンサムな医師ジェームズに道を教えたとき、彼の碧眼に胸のときめきを覚えた。けれど助手席にはファッション誌から出てきたような完璧なまでに美しい連れの女性がいて、その手には、大きなダイヤの指輪が輝いていた…。(『ドクターにキスを』)。育ての親である祖母に疎まれ、家を追い出されたナイリー。路頭に迷う彼女を救ってくれた恩師が急逝して悲しみに暮れるが、生前の恩師の計らいで広大な地所を相続することに。いざその町へ行ってみると、圧倒的な魅力を放つブラントと出会い、運命を感じたーよもや彼が地所を奪い取ろうとする大企業の後継者とは知りもせず。(『運命のプロポーズ』)。小学校教師のニコルは、突然目の前に現れた凛々しい男性を見て、心を震わせたージャン・ジャック!初恋の人。5年前、彼を愛する私に別れの言葉さえ告げずに、彼はこの町を去った。そして今、大企業CEOとなって帰ってきたのだ。しかし、やっと再会できたというのに、彼の瞳は陰り、昔のような優しさがなくなっていて…。(『ガラスの丘のプリンセス』)
エイミーが社長ジェイクの個人秘書になって2年、女性を大勢泣かせてきた彼の犠牲者にならぬよう慎重にふるまってきた。そんなわけで、エイミーは不実な恋人に捨てられてどん底にあっても、ボスの前では弱った姿を見せるわけにいかなかった。なのに、秘書が失恋したと知ったジェイクはすかさず、甘く優しい誘いをかけてきた。警戒を怠らないエイミーだったが、元恋人が不意に現れ、あてつけのためジェイクとの親密さを見せつけた。そしてとうとう、長年避けてきた事態を迎えてしまうー甘美な一夜を。でも、職場で気まずくなりたくない。この関係は続けられない。そうボスに告げたエイミーはやがて、彼の子を妊娠したことに気づく…。
深く傷ついた初恋のせいで男性を信じられなくなったモデルのヘザー。24歳になった今も、彼女が恋愛未経験であることは誰も知らない。その証拠に、ヘザーには、美貌を武器に次々と恋人を作っては容赦なく捨てる女だという評判がいつもつきまとっていた。そんな彼女に、またも言い寄る男がひとりー女性との噂が絶えない、危険な魅力をたたえた会社重役のレイス。「僕はきみが欲しい。きみも僕を求めるようにさせてみせる」高らかに宣言する彼に恐れをなしたヘザーは、ロンドンを出てスコットランドにある知人の別荘へ逃れた。翌朝目覚めると、驚愕の光景が待っていた。なぜ…レイスがここに!
乗馬中にぶつかった男性が顔を上げた瞬間、メリッサは息をのんだ。シルバーグレーの瞳。傲慢そうな顎。間違いない。ローレンスだわ。この20カ月、かたときも頭を離れなかった男性ーファーストネームしか知らなかった娘の父親が、目の前にいる。「メリッサじゃないか!その子はいったいー」「ローレンス…」腕のなかの娘を強く抱きしめ、一歩後ずさる。都会に憧れる世間知らずの男爵令嬢が、使用人の姿で訪れたロンドンで素性の知れない男と恋におち、身ごもった。家名に泥を塗ったと激怒する両親の反対を押し切って、メリッサは娘を産み育ててきたー。「とても美しい子だね。君の夫は幸せ者だ」「夫はいないわ」その言葉に“ウィンチカム伯爵”は顔色を変えた。
かつて憧れだった10歳年上のドラムが、伯爵となって帰ってくる。レベッカはその知らせに動揺した。今や彼は誰より憎らしい相手。7年前、出征を明日に控えたドラムが別れを告げに来たとき、無断で彼の愛馬を駆ったレベッカはひどく叱られ、お仕置きされた。そして彼の提案によって、牢獄のような寄宿学校へやられたのだった。いよいよ再会の瞬間、昔とは違う熱いまなざしを向けられて戸惑うが、あの時の仕打ちを忘れられず、レベッカはよそよそしくふるまった。ところが後日、親代わりの祖父が旅で不在にすることになり、ドラムの後見のもと、伯爵邸での同居を余儀なくされる!レベッカは震えた。大嫌いな彼にまた惹かれてしまうのが怖くて…。
獣医師のフランチェスカは愛犬とともに現れたヴィンチェンツォ王子をひと目見るなり、激しい恋に落ちた。しかし王子には婚約者がいたうえ、フランチェスカには秘密があった。実は私はあなたの婚約者のいとこだと、どうしたら言えるだろう?事情があって違う姓を使っているから、気づかなくても当然だけれど。それでも愛する男性に嘘はつけず、彼女は正直に告白した。ヴィンチェンツオはその勇気に感動し、婚約は先日破棄されたので問題はないと言って、それからも二人は会いつづけた。魅力的な彼と過ごせて、フランチェスカは天にものぼる心地だった。まさか、王子の元婚約者が妊娠したと言ってくるとは夢にも思わず…。