出版社 : ポプラ社
長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのはタケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの思いも満ち欠けを繰り返し、新しくてかけがえのない毎日を紡いでいくー。最後に仕掛けられた驚きの事実と読後に気づく見えない繋がりが胸を打つ心震える傑作小説。本屋大賞2年連続第2位。
家族仲がしっくりいかず、生き方に迷う主婦。16歳になる直前まで自分が在日韓国人だと知らなかった姉妹。ゲイであることに葛藤する男子高生。血の繋がった子どもを持てなかった母親。卒業式の日にプロムを開催すべく奮闘するモーレツ女子高生たちーままならない日常に、悩み惑う人たちの踏み出す一歩が、あなたの背中をそっと押してくれる。明日もがんばる元気をくれる連作短編集。
本の好きな王様がいました。王様はもう年寄りで、目がほとんど見えません。王様は二人の男を城に呼び、言いました。「わしは本が好きだ。今までたくさんの本を読んだ。たいていの本は読んだつもりだ。しかし、目が悪くなり、もう本を読むことができない。でもわしは、本が好きだ。だから、本の話を、聞きたいのだ。お前たち、世界中をまわって『めずらしい本』について知っている者を探し出し、その者から、その本についての話を聞いてきてくれ。そしてその本の話を、わしに教えてほしいのだ」旅に出た二人の男は、たくさんの本の話を持ち帰り、王様のために夜ごと語り出したー。お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹と、大人気の絵本作家ヨシタケシンスケによる、笑えて泣けて胸を打たれる、本にまつわる物語。
テレビ局に籍を置き、ドキュメンタリー番組の制作を手がける美貴。ある日、高齢者施設で不審死が相次いでいるとの週刊誌の記事が目に留まる。その後、主要メディアや官邸に犯行声明が届く。書面には「何も生み出さない高齢者は『社会悪』だ」などと書かかれていた。取材を進める美貴は、偶然の出来事から悟と名乗る青年とかかわるようになる。悟の生きてきた道程を知った美貴は、この国が抱える深い闇の存在に強い衝撃を受けるー。
全寮制男子校である霧森学院の旧寮「あすなろ館」。昨年起きた“ある事件”のせいでほとんどの生徒が新寮に移ってしまい、今はたった6人の生徒しか入居していない。あすなろ館の住人の一人・兎川雛太の部屋に、新たな入居者がやってきた。転入生の鷹宮絵愛。彼は動物にしか心を開いていない変人だが、優れた頭脳の持ち主だった。ある日、あすなろ館に向かう遊歩道の途中にある東屋で、学内で絶対的な権力を持つ生徒会長の湖城龍一郎が何者かに殺害された。現場の状況から犯行が可能なのは、あすなろ館の住人だけだったー!?
24歳、ブラック企業勤務。身も心も疲れ果てていた紀久子が深夜のファミレスで出会ったのは、外島李多と名乗る女性だった。彼女は「川原崎花店」という花屋さんを駅前で営んでいるらしく、酔っぱらった勢いで働くことに。やたらカレー作りがうまい青年や、おしゃべり好きの元教師、全体的に適当な李多。バラエティに富んだ従業員と色とりどりのお花に囲まれながら、徐々に花屋さんの仕事に慣れていく。花を求めるお客さんの事情はそれぞれ。誰かを祝う花もあれば、少し切ない花もある。いろんな想いが詰まったお花を届けているうちに、紀久子は自分の心にもう一度向き合いはじめー
天気を変えることはできない。人間も、他の生きものも、あるがままを受け入れるしかない。天気も、家族も、ゆるやかに続いていく。天気の研究に生涯をささげた藤巻博士。博士一家・四世代の歴史と、時代ごとに変化する家族の在り方を綴った連作短編小説。『ありえないほどうるさいオルゴール店』の著者、新たな代表作!
たくさんのユニークな人々が暮らし、日々大小さまざまな事件が起きる花咲小路商店街。新米カメラマンの樹里が働く“久坂寫眞館”は、大正から続く商店街いちばんの古株。社長の重は若くして跡を継いだ四代目だが、お客の写真は撮らないのだという。それもそのはず、重が撮影する写真には幽霊みたいなものが写り込んでしまうそうなのだ。二人であれこれ調べているうちにふと思いつき、重が「動画」で撮影した瞬間、思いもよらないことが起きてー
不遇の人生を送ってきた男が、偶然盗みに入った場所は「あずかりや」だったー(「金魚」)。上等そうなスーツに身を包んだ紳士が預けたものは、なぜか焼きそばパンでー(「太郎パン」)。ママは、可愛がっていた愛犬を「ある事情」からあずかりやへ預けることにー(「ルイの涙」)。激しく雨の降る夜、女性は10万円という大金で「ある物」を預けたのだがー(「シンデレラ」)。
隠された幻の家訓、ある一族の謎めいた掟、読まれるはずのなかった遺言…さまざまな形で残された“ラスト・メッセージ”。11人の実力派女性作家が綴る、驚きと感動のアンソロジー!
「あなたの人生が変わります 万年筆よろず相談」そんな看板を掛ける「メディコ・ペンナ」は、神戸の街の一角にある万年筆のお店である。もしゃもしゃした白髪交じりの頭をした店主は、年齢不詳でぶっきらぼうだが、万年筆の補修を任せたら随一。万年筆の状態から持ち主の悩みや苦しみまで読み解き、静かに答えを導いてくれるのだとか。就職活動がうまくいかず、「メディコ・ペンナ」でアルバイトをすることになった大学生の砂羽は、それぞれの悩みを抱えるお客と触れ合う中で、自分自身の人生の迷いにも向き合いはじめー。万年筆に詰まった“人の想い”、が心に沁みる、疲れた背中を押してくれる物語。
夫を亡くし、小学生の息子・冬明を一人で育てるシングルマザーの愛。父親の死後、義母の愛と弟の冬明を見守りながらも、家族という関係に違和感を持つ大学生の楓。「世界の一部を盗む」想像上の怪物・ジャバウォックを怖れ、学校に行きたがらない冬明に二人は寄り添おうとするが、「紫色の絵具がなくなったんだ。ジャバウォックが盗っちゃったんだよ」と冬明が告げた日から、現実が変容していく。
写真館を営んでいた父の影響で、カメラマンを目指すようになった匠海。父の死後、母との関係性が悪くなった匠海は,逃げるように東京の大学に入学し、写真を学び始める。しかし、待っていたのは、学費と生活費を稼ぐだけで精一杯の毎日。「これを乗り越えれば夢に近づける」と自分を奮い立たせていたが、ある出来事をきっかけに、休学を決める。実家にも帰れず、衝動的に向かった先は長野県・辰野町ーかつて父が蛍の写真を撮影した場所だった。なんの計画もなく訪れた匠海を出迎えてくれたのは、父が愛した美しい景色。そして、それぞれの事情により辰野で暮らす人々との出会いが、彼の心を変えていくー。自分の居場所を見つける物語。
児童養護施設「星の子の家」で暮らす花は、18歳の夏を迎えたが、将来への夢や希望を何ひとつ持てていない。ある日、「星の子の家」にまた一人、事情を抱えた女の子・晴海がやってくる。ボロボロになったぬいぐるみを必死に抱きかかえている晴海の姿に、花はかつての自分を重ねていた…。みずみずしい連作短編集。
人ならざるものを見てしまう高校生の美和は、雪の中道に迷い、見知らぬ街に迷い込む。その一角で、割られた窓ガラス越しに、じっとこちらを見ている男がいた。男は死体だった。一方刑事の浩明は、死体発見の報を受け、現場に駆け付ける。被害者の斗南は、数日間体の自由を奪われ、食事も与えられないという残虐な方法で殺されていた。浩明は同僚の絵美とともに斗南の過去を探るのだが、予想外の事実が浮かび上がりー。