出版社 : リヨン社
エリート銀行マンの父とは違う生き方をめざしてカネ正食品に就職したものの、社会の風は厳しい。ひとくせもふたくせもある上司や、要領のいい同僚に囲まれ、まるで見知らぬ世界に迷いこんだかのように右往左往する主人公の西条浩介。そんな出来の悪い息子を、父として、先輩サラリーマンとして蔭ながら心配しつつも、企業戦士として、派閥によるサラリーマンの悲哀を味わう浩一郎。テレビCMをうてる自社製品の開発を夢見る加藤松郎社長のもと、新米サラリーマンの汗と涙と笑いの日々が始まった。
ズラータはサラエボ生まれの11歳の少女。少女は日記をつけており、日記のなかで自分の日常生活を自分のことばでつづっている。ところが旧ユーゴスラビアで内戦が勃発し、少女の日記にも戦争のことが記されるようになる。恐怖、怒り、嘆き…ズラータの平和な世界は崩壊する。爆撃や狙撃によって多くの死傷者が出、水も電気も食糧もなくなる。ズラータは無理やりうばわれてしまった自分の少女時代に涙を流すが、それでも日記を書きつづけ、戦禍の目撃者でありつづける。彼女がたびたび思いをはせるあのアンネ・フランクのように。
「俺と来るか」小さく、そう尋ねられて、悠一の瞳が揺れる。男の巧みな愛戯に溺れて、躯が心を裏切ったのか。それとも…。男の名は竜二。悠一の恋人である直人が少年院に入っている間、彼の面倒を見るようにと組が遣わした切れ者だった。やがて七年の歳月が流れ、衝撃的な事件が悠一の身に起きる-。
「僕を助けて…、僕はずっとお養父さんに抱かれてるんだ…。」少年の花のような唇から思いがけない言葉がほとばしった-。唐津の窯元で出会い、一瞬のうちに激しい恋に落ちた二人-。若き陶工、浩介と香道家元の息子、彩人。二人の一途な愛はやがて、嵐をはらんだ逃避行という道を選ばせた…。
盛田聖子の誘惑や罠に翻弄されながらも、酒井史朗と妙子はようやく、真実の愛に生きる覚悟を決めた。しかし、聖子の史朗に対する情念の炎は消えない。炎は嵐となって、酒井家の人々をつぎつぎと不幸に陥れていく。史朗の幸せだけを願い、沈黙を守りつづけてきた妙子だったが、史朗を破滅させようとする邪悪の前に、自らを投げ出して闘う決心をした。愛と憎しみの狭間で妙子の命を賭けた復讐劇が始まる…。
著名な精神医学者・酒井俊太郎教授の家で「兄と妹」として育てられてきた、史朗と養女の妙子。二人が互いの深い愛に気づいたのは、史朗が研修医として通う医科大の看護学科に妙子の入学が決まった頃だった。しかし、それは誰にも悟られてはならない禁断の愛。そんな二人の前に、大物代議士の娘・盛田聖子が現われ、強大な父の権力を背に、史朗に恋の炎を燃やす。そして、妙子を慕いつづける、史朗の親友・信吾。火のように熱いそれぞれの想いのなかで、やがて、おぞましい秘密の暴かれる日が…。
禁忌の愛に取り憑かれた兄と弟の地獄絵…。誰をもその人外の官能の虜にする謎の少年の正体…。血まみれ芝居の一座で繰り広げられる愛憎の惨劇…。薄紫色に閉ざされた異次元の扉の向こうに足を踏み入れてしまった僕ら-。背徳の召喚歌に惹かれて魔術師の庭園に迷いこんだ、美しき生贄たちの六編の物語。
ある朝、ふと目にとまった〈俳優、死亡〉の記事-。俳優エリック・タールは、幼い僕を捨てて去っていった父だった…。死の謎を追ってさすらう少年アランが出会う、かつて父を愛した、そして父が愛した男たち。父の航跡をたどるうち、少年はいつしか悲しい愛のかけらを手にしていた…。
17歳の美少女ローラと恋におちた“ぼく”は、自分がエイズに感染していることを打ち明けないまま、彼女を抱く。しかし、その一方で、男たちのたくましい肉体を求めて、夜の街をさまよいつづけた…。あまりにも衝撃的な日々を送る“ぼく”がやがて見出す、愛すること、生きることの意味とは?エイズ・キャリアでバイセクシュアルだった著者が斬新なタッチで描く自伝的小説。
まるで永遠に続く休暇のように、高校をドロップアウトした虹彦は、自らの魂の置き処を求めて彷徨う。「ニューヨークへ行こう」-行方知れずの父を捜す旅を決意した虹彦、その時、彼を見つめる残酷で淫靡で、しかも典雅な眼差しに出会った。その男の名は遊。魔性の瞳に虹彦はたちまち魅せられ…。
見事な肉体とセクシーな笑顔、ちょっと淫らなとこもあるけれど滅法強い型破り刑事、風巻…。少年っぽい甘い美貌がおよそ職業とミスマッチな、通称K町署のお荷物刑事、冬木…。エキゾチックな街、横浜を舞台に繰り広げられる男たちのちょっぴり哀しい辛口アクション・ラブストーリー。