出版社 : 作品社
デビュー作『楽園のこちら側』と永遠の名作『グレート・ギャツビー』の間に書かれた長編第二作。刹那的に生きる“失われた世代”の若者たちを絢爛たる文体で描き、栄光のさなかにありながら自らの転落を予期したかのような恐るべき傑作、本邦初訳! 摩天楼が林立し始め、繁栄を誇るニューヨーク。その華やかな文化と、上流階級の暮らし。それがフィッツジェラルド独特の絢爛たる文体で描かれる。そしてアンソニー、グロリア、リチャードらの生き方に、信じられるものを失い、刹那的に生きる「失われた世代」の心情が見て取れる。 「どうしてこの作品がこれまで訳されてこなかったのだろう?」 訳しながら、私はずっとそう思っていた。こんなに魅力的な作品なのになぜ、と。この素晴らしい作品を読む喜びが多くの日本の読者にも伝わりますように。(「訳者あとがき」より) 第一部 第一章 アンソニー・パッチ 第二章 魅惑的な美女の肖像 第三章 キスの目利き 第二部 第一章 光り輝く時間 第二章 シンポジウム 第三章 分裂の兆し 第三部 第一章 文明の問題 第二章 美学の問題 第三章 問題外! 訳者あとがき
『名探偵ホームズ全集』全作品翻案で知られる山中峯太郎による、つとに高名なポーの三作品、「隅の老人」のオルツィと「フーマンチュー」のローマーの三作品。翻案ミステリ小説、全六作を一挙大集成! 「日本シャーロック・ホームズ大賞」を受賞した『名探偵ホームズ全集』に続き、平山雄一による原典との対照の詳細な註つき。ミステリマニア必読! 『名探偵ホームズ全集』(全三巻、作品社)に引き続き、山中峯太郎が翻案した探偵小説をご紹介できるのは、喜ばしいことこの上ない。 (…)峯太郎の功績はホームズだけにとどまるものではない。『名探偵ホームズ全集』の解説にも書いたように、最初は「世界名作探偵文庫」の一部としてホームズは始まり、峯太郎はホームズ以外にも筆をとっていたことは、児童書やミステリのマニアしか知らない。さらにホームズの余勢を駆って、「ポー推理小説文庫」というシリーズも発行されたのだが、残念ながらこちらは志半ばで中絶してしまっている。 本書では、それら「ホームズ以外」の峯太郎翻案の探偵小説を集め、原典と比較をし、彼特有の手法を明らかにするとともに、今一度翻案の楽しさをご紹介したい。(平山雄一「解説」より) エドガー・アラン・ポー『モルグ街の怪声』 エドガー・アラン・ポー『黒猫』 エドガー・アラン・ポー『盗まれた秘密書』 バロネス・オルツィ『灰色の怪人』 サックス・ローマー『魔人博士』 サックス・ローマー『変装アラビア王』 平山雄一「解説」
詩から註釈へ、註釈から詩へ、註釈から註釈へ…… 幾重もの層を渡り歩きながら奇妙な物語世界へといざなう、『ロリータ』と並び称されるナボコフの英語小説の傑作! 架空の詩人による九九九行の詩、架空の編者が添えたまえがき、註釈、索引
イタリアで客死した叔父の亡骸を捜す青年、予知能力と読心能力を持つ男の生涯、先々代の当主の亡霊に死を予告された男、養女への遺言状を隠したまま落命した老貴婦人の苦悩。日本への紹介が少なく、読み応えのある中篇幽霊物語四作品を精選して集成!一八六〇年代には今日のミステリやスリラー小説の源流になったと目される作品が次々と出版され、また、怪奇小説、恐怖小説の分野で優れた作品が数多く発表されたのもこの時代であった。内容的に長い話にはしにくかった恐怖小説は中短篇が主体で、特にクリスマスの時期になると、各雑誌が競って幽霊物語を掲載し、当時の文壇の大御所であった作家も好んで幽霊譚を寄稿した。比較的長い物語の場合、優れた作品でありながら、選集に収録するには長すぎるし、かといって、それ一作を単行本として刊行するには短かすぎる、ということで、あまり日の目を見ずにきたという作品もかなりある。本書では、そうした長めの怪異譚の中から、読み応えのある力作で、かつ、日本の読者にはあまり馴染みがない作品を四篇選び、これまでにない趣のアンソロジーの編纂を試みた。--三馬志伸「解題」より ウィルキー・コリンズ「狂気のマンクトン」(1855)ジョージ・エリオット「剝がれたベール」(1859)メアリ・エリザベス・ブラッドン「クライトン・アビー」(1871)マーガレット・オリファント「老貴婦人」(1884)訳註訳者解題
「群像」編集長を務めたのち作家に転身、泉鏡花賞を受賞、芥川賞の候補となり、2015年に逝去した辻章の著作集全6巻、第4巻刊行!「季刊・綜合文芸誌 ふぉとん」掲載全作品所収。
“最初の出版人”の全貌を描く、ビブリオフィリア必読の長篇小説! グーテンベルクによる活版印刷発明後のルネサンス期、イタリック体を創出し、持ち運び可能な小型の書籍を開発し、初めて書籍にノンブルを付与した改革者。さらに自ら選定したギリシャ文学の古典を刊行して印刷文化を牽引した出版人、アルド・マヌツィオの生涯。 序章 何年ものち イチゴかごの娘/静かなる読み手/世の中を読む 第一部 第一章 漂流者 またとない時に/ホロスコープ 第二章 機械 塔の商標/ラ・ストゥーファ/懊悩 第三章 狂人たちの祝宴 巣窟の中の女神/天使と悪魔/居酒屋にて/愛の七夜 第四章 三美神 契約/家畜市 第二部 第五章 結婚式の晩 ベール/乾杯/屋根裏部屋の熱気 第六章 トッレザーニの回想 扉の神ヤヌス/宣伝ビラ/ラ・グランデ・コンパニア 第七章 夢における愛の戦い 魔法の言葉/手軽に読める喜び/私に触れるな 第八章 ゆっくり急げ 韻文と火/正気を失った人質/矢とコバンザメ/説教 第三部 第九章 ヴェネツィアを離れて 逃避/書物の死 第十章 エピクロスの運命の下に ノヴィでの隠遁/妻の出現/荒れ果てた菜園 第十一章 エラスムスの嘆き キリスト教世界初の大文筆家/卑しき贅沢/焚書がもたらした安堵感 第十二章 奥書(フィナーレ) その時が来た/ラファエレ・レジオ司教の弔辞 訳者あとがき
『ストーナー』で世界的ブームを巻き起こした著者が描く、19世紀後半の米国西部の大自然。バッファロー狩りに挑む四人は、峻厳な冬山に帰路を閉ざされる。男たちを待つのは生か、死か。
アルファグアラ賞受賞作! 〈城〉と呼ばれる自宅の近くで誘拐された大富豪ドン・ディエゴ。身代金を奪うために奔走する犯人グループのリーダー、エル・モノ。彼はかつて、“外の世界”から隔離されたドン・ディエゴの可憐な一人娘イソルダに想いを寄せていた。そして若き日のドン・ディエゴと、やがてその妻となるディータとのベルリンでの恋。いくつもの時間軸の物語を巧みに輻輳させ、プリズムのように描き出す、コロンビアの名手による傑作長篇小説! 「俺は堕落する前に、あんたみたくイソルダを抱き締めて、俺のイソルダ、と呼んでみたかった。俺が欲しかったのはあんたの金じゃないんだよ、ドクトール。あんたの娘を欲しかったんだ。城の近所に住む金持ちのぼんぼんが日がな一日、城の周りをうろついているのと同じように、俺もイソルダの行動を遠くから窺っていたんだ」(中略) 今度こそ、エル・モノは腹から笑った。俺にしたって同じだよ。あの娘を思い出すと、ときどき自分でも知らないうちになんでもないのに笑っているんだ。悪ふざけかなにかを思い出したんじゃないか、って訊かれるけど、あんたと同じだよ、ドクトール、あの娘のせいだ。俺たちのイソルダを思うと、笑いがこぼれてしまうんだ。あんたは、俺たちのって言うと怒るけどな。(本書より)
ソフィア・コッポラ カンヌ映画祭監督賞受賞作 原作小説 ニコール・キッドマン主演 映画『The Beguild/ビガイルド 欲望のめざめ』2018年2月全国ロードショー
ウールフは、ぼくの友だちだったーー オランダ領東インド。農園の支配人を務める植民者の息子である主人公「ぼく」と、現地人の少年「ウールフ」の友情と別離、そして戦争の影を丹念に描き出し、ベストセラーとなったオランダの文豪による名作、本邦初訳! ウールフ、黒い湖 著者あとがき ウールフと創造の自由 訳者あとがき ヘラ・S・ハーセ、その生涯と作品
『死者の書』は、こう読め!生誕130周年、いま、甦る折口信夫。歌人・小説家=釈迢空と民俗学者・国文学者=折口信夫。二つの才能が見事に融合・醗酵した稀有の小説『死者の書』。作家の青年期、作品成立の時代背景、作者の精神に踏み込むことで謎多き名作の秘鑰に迫る。
潴水地の底に消えた谷中村。その地で育ったチヨとユウ、部落の総代から土地買収員となった男の妻トシ、田中正造の妻・勝子。そして正造の死後もひとり旧谷中村への援助を続けた婦人解放運動の先駆者・福田英子。足尾銅山鉱毒事件にかかわり、人生を変えられた女たちを描く、書き下ろし長篇小説。 第一章 チヨ 第二章 ユウ 第三章 トシ 第四章 勝子 参考文献 あとがき
「群像」編集長を務めたのち作家に転身、泉鏡花賞を受賞、芥川賞の候補となり、2015年に逝去した辻章の著作集全6巻、刊行開始!第一作品集『逆羽』、第二作品集『この世のこと』、芥川賞候補作「青山」所収。
日本探偵小説史上に燦然と輝く大作の「新青年」連載版を初めて単行本化!「新青年の顔」として知られた松野一夫による初出時の挿絵もすべて収録!2000項目に及ぶ語註により、衒学趣味【ルビ:ペダントリー】に彩られた全貌を精緻に読み解く!世田谷文学館所蔵の虫太郎自身の手稿と雑誌掲載時の異同も綿密に調査!“黒死館”の高楼の全容解明に挑む、ミステリマニア驚愕の一冊! 本書は『黒死館殺人事件』の初出誌「新青年」を底本とし、世田谷区立世田谷文学館所蔵の小栗虫太郎自身の手稿と照合した上で校訂、註釈を加えたものである。『黒死館殺人事件』は本書発行以前より、多くの出版社から若干の異同を含みつつ刊行されてきたが、基本的には新潮社版を、唯一の著者本人の校訂を経た底本としてきたと言ってよい。そしてこれまでも、有為の先人によって、本文の検討作業が行われてきたが、著者の早逝や戦後の混乱もあって、手稿の存在が明らかにされない状態での、不十分な作業となってきたことはやむを得なかった。 筆者は一九七〇年以降「黒死館語彙」の蒐集調査を続けてきたが、故・松山俊太郎氏の慫慂を請け、一九七六年、教養文庫版『黒死館殺人事件』の校訂に協力させて頂いた。その編集方針は、初めて「新青年」版との本文校訂を行った上で、正確を期すということであった。しかしながら、その際も多くの問題点を著者の誤謬、捏造として処理せざるを得なかった。筆者は教養文庫版刊行以降も、黒死館の諸相について調査を続けてきたが、そうした疑問点を残したまま現在に至った。幸いにもその後、手稿旧蔵者が判明し、世田谷文学館が入手したため公開閲覧が可能となり、今回の企画が成立した。山口雄也「解題」より