小説むすび | 出版社 : 作品社

出版社 : 作品社

密告者密告者

「あの時代、私たちは誰もが恐ろしい力を持っていたーー」 名士である実父による著書への激越な批判、その父の病と交通事故での死、愛人の告発、昔馴染みの女性の証言、そして彼が密告した家族の生き残りとの時を越えた対話……。父親の隠された真の姿への探求の果てに、第二次大戦下の歴史の闇が浮かび上がる。 マリオ・バルガス=リョサが激賞するコロンビアの気鋭による、あまりにも壮大な大長篇小説! 私、どうしてもガブリエルの顔を見る気になれなかったの。ガブリエルのことを軽蔑していたの。だって、そんなことができる人だなんて考えたこともなかったから。ただいっぽうでは、ガブリエルがああしたことをやったのは当然だ、とも思っていた。当時はおそらく、どんな人でも、ガブリエルがやったことを知ったとしても別に驚かなかったと思う。ガブリエルを軽蔑する気持ちと肯定する気持ち、その両方が私の中で綯い交ぜになって、自分でももうどうしていいかわからなくなっていたの。恐ろしくてたまらなかった。なにがどう恐ろしかったのかと言われるとわからないのだけれど。(…)けっきょくのところ、密告する人なんてどこにでもいるということなのよね。戦争中であろうがなかろうが、人はいつだって、自分の置かれた状況次第では、平気で誰かを密告してしまうものなのよ。(本書より)

心は燃える心は燃える

幼き日々を懐かしみ、愛する妹との絆の回復を望む判事の女と、 その思いを拒絶して、乱脈な生活の果てに恋人に裏切られる妹。 先人の足跡を追い、ペトラの町の遺跡へ辿り着く冒険家の男と、 名も知らぬ西欧の女性に憧れて、夢想の母と重ね合わせる少年。 ノーベル文学賞作家による珠玉の一冊! ペルヴァンシュはまたもかたくなになっていた。クレマンスが表しているものすべてを、社会的地位だの、責任だの、権威だのを憎んでいた。ある瞬間、こんなあばら家を出て、あんなひどい人たちから遠く離れたところに行けるようにあなたを助けてあげられるわ、お金を貸してあげられるわと、ぎこちなく口にした。ペルヴァンシュは猛然と反発した。(「心は燃える」より) きっと、アリがひとこと頼みさえしたら、サマウェインは自分の宝物を見せただろう。手紙の束を、何枚もの黄ばんだ写真を、そしてなによりも、女性の腕に抱かれた赤ん坊がうっすらと写っている写真を。海の向こうからやってきた金髪の女性、父を連れて行ったその女性を、サマウェインは母と呼んでいる。(「宝物殿」より) 心は燃える 冒険を探す 孤独という名のホテル 三つの冒険 カリマ 南の風 宝物殿 各篇解題 訳者あとがき

夢と幽霊の書夢と幽霊の書

ルイス・キャロル、コナン・ドイルらが所属した心霊現象研究協会の会長による幽霊譚の古典、ロンドン留学中の夏目漱石が愛読し短篇小説の着想を得た名著、120年の時を越えて、待望の本邦初訳! はじめに 第一章 夢 犬のファンティ/マーク・トゥエインの話/食堂に入りこんだ豚/モクセイソウ/なくした小切手/アヒルの卵/なくした鍵/古い証券/十分の一税の滞納金/ふたりのクルマ/アッシリアの神官/よろい戸の節目 第二章 夢と幻視 メアリー・スチュアートの宝石/死の床/パーシバル首相暗殺の夢/ガラガラヘビ/赤いランプ/口ひげの下の傷/サンゴ模様のクラバット/サテンの上靴/死んだ店主 第三章 水晶玉による幻視 ある外交官の話/ランプの下にいた人/ベルをつけた牛/ルイ一四世の臨終 第四章 幻覚 二頭立ての馬車/食事会から帰ってきた幽霊/赤い傷跡/幽霊と肖像画/抑えこむ手/修道士の聞いた声/エレベーター前に立つ男 第五章 生き霊 エカテリーナ二世の生き霊/幽体離脱/タビストック通りで/ウィンヤード氏の幽霊/ブルーアム卿の物語/死にゆく母親の話/花嫁の幻影 第六章 死者の幽霊 デヴォン州スプレイトンの幽霊、一六八二年/ジョージ・ヴィリヤーズ卿の幽霊/ある王党員の記述/ウィンダムの手紙/リトルトン卿のもとに現れた幽霊 第七章 目的を持って現れた幽霊 デイヴィーズ軍曹の殺害/デイヴィーズ軍曹殺害事件について/庭師の幽霊/モーズの犬/ピーターの幽霊 第八章 幽霊 タイコンデロガ/ティローン伯爵の幽霊/午前一時半のできごと/常夜灯を消す幽霊 第九章 幽霊と幽霊屋敷 きしむ階段/食料品屋の咳/ガイドの父親の話/夢でノックしたドア/ピンク色の服の娘/幽霊部屋の犬/黒い服の婦人/踊る悪魔 第一〇章 近世の幽霊屋敷 ウェスリー家の幽霊/セント・ヴィンセント卿の身内の幽霊譚 第一一章 さらなる幽霊屋敷 霊に憑かれたチャン夫人/アマーストの大いなる謎/ドナルド・バンとボカン/ヒャルタスタッドの悪魔/ガルプスダルの幽霊 第一二章 大昔の幽霊 グラームの物語/〈ファウルフォーズ〉またはロングフォーマカスの蹄鉄工 第一三章 アイスランドの幽霊 フローザーの怪異 第一四章 さまざまなおばけ 出現する手/冷たい手/黒い犬と親指のない手/指を嚙む幽霊 原註/訳註/訳者あとがき 一二〇年の時を経てあらわれた幻の本 吉田篤弘

ほどけるほどける

双子の姉を交通事故で喪った、十六歳の少女。自らの半身というべき存在をなくした彼女は、家族や友人らの助けを得て、悲しみのなかでアイデンティティを立て直し、新たな歩みを始める。全米が注目するハイチ系気鋭女性作家による、愛と抒情に満ちた物語。 「わたしは、本書の日本語版をみなさまに読んでいただけることをとても光栄に思っています。(…)この本が世に出てから一年あまりのあいだに、わたしは何百人もの読者に会いました。十二歳から九十二歳までの年齢層の人びとです。彼らはそれぞれに、この物語にどんなに心を打たれたかをわたしに伝えてくれました。(…)主人公はまだ少女といえる年齢で、その若さは物語のひとつの大事な側面ではありますが、彼女をめぐる物語の全体は、老若男女の別なく誰にも共感できるものと信じます。読者の方々はまた、この本が愛のーーロマンチックな愛と家族の間の愛の両方のーー不思議とともに、生と死について語っていることを喜んでくれています。それに、ボワイエ家の人びととマイアミのハイチ人コミュニティの人びととのつながりや、ボワイエ家の人びとの目に映る生まれ故郷のハイチの姿も楽しんでくれています」--「日本の読者への手紙」より

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