出版社 : 光文社
下総の小藩の元藩士で、いまは大道芸で生計をたてる朝比奈結之助。結之助が一度救った田楽屋の主が斬られ、拐かされた娘は自害した。ささやかな幸せを噛み締めていた父娘の死に、結之助は怒りに燃える。直心影流の達人など強敵に史上最強の剣術といわれる「無住心剣術」の豪剣が唸る。「鬼役」で人気の坂岡真が描いた「涙のシリーズ」が新装版で登場。期待の第二弾。
思いを寄せた女性に着てほしくて華麗な振袖を縫い上げた職人、自分のためにお店のお金を横領した若者を無罪放免してもらうために奔走する花魁、親の借金のために請負師の妾になった寄席の娘と貧乏芸人の恋の行方ー私利や損得を顧みずに人間の情に生きた「人情馬鹿」たちを、江戸っ子気質と江戸の言葉が生きていた大正期の東京下町を舞台に綴った名作十二話。
東京を離れた別荘地で、自動人形の発明に没頭する偏屈な父親・南瀬隆と、その世話をする健気な年頃の娘・蔦子。横暴な父の言動に翻弄されながらも、新しい時代の生き方を模索する若い女性の姿を描いた異色作。あの半七捕物帳の執筆開始からほどなくして、読売新聞に連載されたまま、ついぞ単行本化されることがなかった幻の長編が、百年の時を経て初刊行!
薬研堀埋立地にある評判の髪結・弥八床と、米沢町で信頼される質屋の市福屋。真面目で堅実な商売以外に、共通点はないはずだった。しかし、二つの商舗を探る怪しい与太が木戸番小屋を訪れ、不可解な行動をとり始める。騒ぎの臭いを嗅ぎ、動き始める杢之助だが、今回の事件はいつもと違っていた…。各々の背負う過去が重なり合い、一触即発の危機へと発展する!
日本橋の袋物屋のおかみが、隠居した父親を案じ牡丹堂に相談にやって来た。女房に先立たれて半年、ふさぎ込んだままだという。茶話会を開いて元気づけてやりたい。ひいては、甘い物が好きな父のために菓子を作ってほしいというのだ。小萩はご隠居の望みを知ろうと、三日にあげず通うことになるのだがー。季節の菓子と人の情。切なくて温かい好評シリーズ第三弾。
池見屋から巾着絵の仕事を減らされ、律は焦りを覚えていた。そんな折、葉茶屋・青陽堂では、商品に古茶が混じったことで、得意客が離れる騒ぎが起こる。商売敵による差し金ではと若旦那の涼太は悔しさを滲ませるのだが…。職人としての誇りをかけた仕事に打ち込みながら、ゆくえ定まらぬ恋に心揺らす律。得意の似面絵が事件解決にも一役買う、人気シリーズ第四弾。
沢渡留理は亡き父親から引き継いだ会社“沢渡家具”を守ろうと必死だった。そのためには、志を異にする兄・要次と、その愛人でもある秘書の福田麻衣子を排除するしかない。留理は綿密に計画を練り、痴情のもつれを装ってふたりを殺した。偽装工作は完璧だったはずなのに、翌朝、家政婦から、家に強盗が入り、その強盗に兄が殺されたようだという連絡を受ける。いったい何が…。想定外の出来事に混乱しつつ現場に戻った留理は、子供のように捜査に没頭している長身の女刑事と出会った。その女は、花房京子と名乗ったー。
現象学者の凪田緒ノ帆は、半年前に自宅の火災で恋人を失った。まる焦げで発見されたその死体が持っていたスマホのロック画面には、下着姿の謎の女性の画像が残されていた。突然、緒ノ帆の前に現れた美青年・露木は“予現者”を自称し、「僕が予現したあなたの恋人以外の直近三件の火災事故では、いずれも被害者の男性のスマホにこの女性の画像がありました」といい、事件と女性の関係を一緒に調べようと誘う。さらに、謎の女性の画像を手がかりに、メグミという名前と、彼女を探す消防士・海老野ホムラが見つかる。三人は、露木の“予現”する火災とメグミの手がかりを追う旅をはじめたー。
凡庸な少年時代から、モーリスは自分の願望を知ってはいた。ケンブリッジ大学の学舎で知的なクライヴと懇意になり、戯れに体が触れあううち、彼の愛は燃え上がる。クライヴもまた愛の言葉を口にするが…欲望のままに生きることが許されない時代に生きる青年の苦悩と選択を描く。
古い大きな家にひっそりと住む兄妹をある日何者かが襲い、二人の生活が侵食されていく「奪われた家」。盛り場のキャバレーで、死んだ恋人の幻を追う「天国の扉」。ボルヘスと並びアルゼンチン幻想文学を代表する作家コルタサルの「真の処女作」である『動物寓話集』。表題作を含む全8篇を収録。
百年続いた写真館の館主、祖母・西浦富士子の遺品を整理するために、桂木繭は江ノ島を訪れた。かつてプロの写真家を目指していたが、ある出来事がきっかけで、今はカメラを持つことができない繭。懐かしい写真館を訪れ、祖母と親しかった人々と出会うことで、封印していた過去が少しずつ露わになっていく。そしてー。写真の謎解きと、人間の過ちと再生を描く物語。
浪人時代の交通事故や不本意な進学など屈託を抱える大学生・雪嶋直久。唯一の心の支えは仏像だった。ある日、アルバイト募集を見かけて踏み込んだ仏像修復の世界。修復師の門真と過ごす日々の中、その作業の困難さと大好きな仏像のより深い魅力を知る。そして積み重なる出会いは、雪嶋の凝った心を解きほぐしていき…。仏像に魅了された人々の再生と成長の物語。
「帝国テレビジョン」で働く女たちの日々は、世間の認識とは裏腹に、華やかさから程遠い。倒れるまで奮闘する宣伝部・松国、仕事以外はまるでダメなプロデューサー・脇坂、倦怠に沈む脚本家・大島、刺青持ちのマネージャー・片倉、憧れの人と出会う日を夢見るテレビ誌記者・山浦。ままならないことばかり。それでも私たちはこの仕事が好きだ。五人の切実さが胸に迫る連作短編集。
署の交通安全イベントの最中に、突然現れた痩せこけた少女。保護されて間もなく亡くなった彼女は、ほぼすべての歯を折られていたー。警務課所属のクロハは、県内で続発する未成年者変死事件との関連を探り始める。被害者たちの体や衣服に残された子供の指紋が意味するものは?犯人の底知れぬ悪意に孤高の女性警官が立ち向かう、「クロハ」シリーズ長編第三弾!
片思いの同級生に誘われるまま教職過程を履修した加賀谷貴志。同学年の友人たちが就職活動に奔走する中、小学校に教育実習に行くことになった。イケメン指導教諭・鞍馬優作に付いて、四週間の実習が始まったのだが、児童の親の離婚問題や誘拐騒動など、トラブルが次々と発生。持ち前の正義感と情熱でぶつかっていく加賀谷だが、ことごとく跳ね返されてー。
神奈川県警公安捜査員・伊藤朱璃は、爆弾テロリスト・トウキョウボマーをついに追い詰める。しかし、そこには痛烈な惨劇が待っていた!さらなる事件を巻き起こすため、国際的な犯罪集団が、最強の工作員を日本国内に送り込んだ。対する警察庁は、超法規的措置S計画で対抗する。血には血を、銃弾には銃弾を…。報復の応酬劇に、朱璃は果敢に立ち向かう!
下町高校は、伝統ある進学校だ。大学進学に向け、クラブ活動も自粛して勉強一辺倒。そんな高校生活に疑問を抱いた二年生三人が、野球の巧い生徒を集めて対外試合をしようと画策。三年生のエースを口説き落とし、チームを結成した彼らは、社会人野球チームとの練習で、その実力ぶりを発揮する。受験のため、青春を犠牲にしてしまうことに反旗を翻した奮戦記。