出版社 : 光文社
大学生の天崎悟は、家出した妹の帰りを待っている。ある日、家に見知らぬ老婆がやってきた。何を聞いても判然としなかった。その後、妹が見つかる。虫に喰い殺され、血が黄色くなった異様な遺体となっていた。宗教法人の施設で見つかった遺体と同じだ。この虫はなんなのだ?どうやって感染したのか。治療法は?第19回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
わたしはタレント猫のリリアン。一発OKカットだって簡単にできるわよ。それでも幾つかNGを出してるのは、編集のときに、そういう映像が意外とうまくはまるって知ってるからなの。人間が思ってるよりも、いろいろと考えてるものなのよ。(「女優のプライド」)。人生の山あり谷ありを、動物たちが優しく、時に厳しく見つめた八つの物語。
妻を失った警視庁元SPの小津良介に、元経済産業大臣の平泉凛太郎から突然の依頼が。政界での再起を期した大勝負を前に、息子の交友関係を調べてほしいという。先代から仕える辣腕の“執事”、平泉の元秘書である大崎靖からの情報提供を受けながら調査に乗り出した小津だったが…。衝撃のラスト!カズオ・イシグロ『日の名残り』へのオマージュを込めた傑作。
やり手の元商社マン・安積啓二郎は、兄に代わり、経営が傾き始めた実家のガラス工場の社長になった。当初は工場を売り払うつもりだった啓二郎だが、ガラス工芸作家の透子との出会いから、次第にガラスの魅力に目覚めてゆく。難問山積の工場再建に向け、彼が放つ起死回生の一手とは?ものづくりの現場に再起をかけ、悪戦苦闘する男の姿を描く長編企業小説。
本城麻里奈は格闘技の女子チャンピオン。その素顔は、女子高校生だ。格闘技好きの藤怜士は、応援している彼女がクラスメイトであることに気付く。そして、週に一度、試合の話をする関係になった。ある時、次の相手が、同門の九条亜美に決まったと喜んでいると、彼女から思いもよらないメールが届く…。最強の女子高校生格闘家・麻里奈登場!
日本ミステリー文学大賞新人賞が誕生してから二〇年。幅広く活躍を続ける受賞作家から、大石直紀、岡田秀文、新井政彦、望月諒子、嶺里俊介の五名が「街」をテーマに競作。普段、ぼんやりと見えている風景、行き交う人たちの何気ない行動…その中に数々の謎が潜んでいる。五つの味わい深い短編を収録した、珠玉のアンソロジー第一弾!
三年前、同心の塚越が殺された。塚越は大店を強請って大金をせしめていたが、その事実は封印された。十手持ちの辰三が姿を消して四年。茶問屋の後家が、芝で辰三に二十両を奪われたという。十手を受け継いでいる文治には、同心の栗山を殺した疑いが向けられる。栗山は、塚越の死には裏があると嗅ぎ回っていたのだ。辰三の行方、そしてすべての真相とは!?
裏長屋のお糸が、震えながら木戸番小屋に持ち込んだ血のついた古着。すわ殺しの手証ではと杢之助が古着の出処を探れば、困る者を救い助けると小伝馬町で評判の一家「稲妻屋」にたどり着く。稲妻屋が殺しにかかわる裏の稼業に手を染めていると見た杢之助。一方その動きを察知した一家の主・吉兵衛は米沢町に目を光らせ始め、一触即発、二人の静かな対決が始まる!
“かわせみの清兵衛”なる盗賊を追い、悪の巣窟と呼ばれる高津町に潜入した定町廻り同心の近藤信吾。ところが一月前からとんと姿を見せない。彼の消息を気に病む馴染みのお蔦や八朔たちが件の町に赴き、信吾を見つけ出した。ところが声をかけてもまるで他人のよう。咎人を騙すための芝居か、あるいは本当に“物忘れ”に…!?大法螺で事件を解決!痛快な時代シリーズ第六弾。
南町奉行所臨時廻り同心の山本市兵衛は、南町奉行・筒井伊賀守政憲の内与力・坂崎忠右衛門から江戸を騒がす輩について「密命」を受ける。商家のあるじを毒殺した下手人、金で人殺しを請け負う暗殺集団など、江戸の治安を乱す「悪」に、冴えた推理と名刀「石斬丸」で立ち向かう。めっぽう腕が立つが、困っている者には底抜けに優しい爺侍!期待の新シリーズ第一弾。
いまは船頭となった南町奉行所の元定町廻り同心、沢村伝次郎。女房千草の店の常連で気心の知れた畳職人の為七が何者かに殺された。悲痛な思いで町方の探索を手伝っていたところ、ある日、二人の侍に突然襲われる。下手人探しの一方、敵討ちの助を頼まれて悩んだ末、お人好しの伝次郎が下した決断は、はたして…。江戸の風情と人の情が心に響くシリーズ第十九弾。
安曇野警察署の刑事・道原伝吉は松本署に転勤になった。着任早々、道原はシマコこと河原崎志摩子刑事とともに、児童養護施設に保護された4歳の少年に会いに行く。少年は母親、妹と松本駅にやってきて、母親が二人の元を離れた間に、一人で近くにあったトラックの荷台で遊んでいたところ、トラックが動き出してしまったのだという。運転手が気づいて駅に戻ったときには、母も妹もいなくなっていた。二人はいったい、どこへー?
癌で余命半年と宣告されたヤミ金業者のマキ子も、その「田所リース」で働く落ちぶれた取り立て屋の乾も、陸上部のエース阿久津先輩に憧れる高校生の結も、生まれてから車椅子の生活しか知らない身体不自由な博も、彼らの世界は、きっとどこかでつながっているー。底辺で生きる人間たちの業と、人生の不思議な縁を描く、書下ろし長編ミステリー。
新宿歌舞伎町でセキュリティをするコウは、生きるためなら手段を選ばないしたたかな女。元情夫のシンプの指示で、風俗店“天使と薔薇”から逃亡した淫乱で狡猾な美少女ユコを連れ戻しに成城の豪邸へと向かう。そこには敵対する角筈の殺し屋たちが待っていた。窮地を躱したコウはユコを連れ、幼いころに暮らした海辺の団地に潜伏する。束の間の平穏、団地の住民たちとの交流、闇の世界から抜け出し、別人に生まれ変わった危ない女とやっかいな女の奇妙な共同生活。幼いころから虐待され、悲惨な人生を歩んできた二人に、安息の日々は続くのかー。第21回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
定年間近の刑事・片倉康孝は、休暇を利用して小出と会津若松を結ぶ秘境のローカル線“只見線”に乗りに来た。この旅は、20年前に練馬で起きた放火殺人事件の現場から消えた謎の女“鮎子”の足跡を探す旅でもある。現地で話を聞くと、練馬の事件のさらに40年前、羽賀鮎子という女性が火事で亡くなっていたことが分かった。二つの火事、二人の鮎子につながりはあるのか!?片倉は後輩刑事の柳井淳らと共に、ふたたびこの事件を追うことにしたー。過去に携わった迷宮入り事件の真相は!?謎が謎を呼ぶ傑作警察小説!
元亀元年(1570年)、朝倉家家臣の小林吉隆は、織田家との合戦中、富田長繁に命を救われる。世の道理を重視する吉隆だが、忠に薄く戦好きな長繁とは、不思議と馬が合った。しかし、崩壊へと向かう朝倉家に見切りをつけた長繁は、織田方へと寝返ってしまい…。歴史からかき消えた狂気の武将、富田長繁。新鋭による戦国秘史!
パリの社交界で金持ちの貴族を相手に奔放な日々を送る美貌の高級娼婦マルグリット。彼女はある日、青年アルマンと出会う。初めて真実の愛に目覚めた彼女は、これまでの享楽的な生活を捨て、パリ近郊の別荘で二人は暮らし始めるのだが、そこへ訪ねてきたのはアルマンの父だった…。
世は元禄。公儀の手先「影廻衆」として密命を果たす旗本高鳥家の三男坊・三郎太は、ある夜、商人が犬に襲われているところに居合わせた。三郎太は柳生新陰流の豪剣で商人を救うが、背後に何者かの策謀があることに気づく。不仲の犬小屋奉行・斗真とともに、謀略を仕掛ける黒幕を追う!赤穂浪士も登場する贅沢な一冊。注目の著者、光文社文庫デビュー作品。