出版社 : 小学館
「どうせなら金を賭けないか?誰が長生きするか」。聡(サトシ)、弘(ヒロシ)、明男(アキオ)、正輝(マサテル)、博夫(ヒロオ)、規子(ノリコ)の6人は、小学校時代からの幼なじみの76歳。全員ヒマな上、比較的元気なので、時折同窓会を開くが、どこの誰がボケただの、病気で死んだだの、暗い話題ばかり。そんなある日、6人の中でも最も明るくマッチョな明男が、こんなラテンな提案をして…。高度高齢化社会をやさしい希望で照らす、渾身のヒューマン・エンタテインメント。
老舗の跡取りの達造は、継父との折い合いが悪く、心はすさむばかり。そんな達造の気持が安らぐのは、下働きの奉公に入ってきたおたえとの一時だった。満天の星を見上げながら二人は幼い心を通わせていたーやがて身を持ち崩した達造は家を出て、いまや目明し友蔵の下っ引きとして捕り物に日々を送っている。江戸の町を跳梁する凶暴な盗賊を追ううちに、その魔手は、仲間の命を奪い、ついには実家にも及んできた。そしておたえは…。前作『しずり雪』に続き、庶民の哀感とひたむきさを描いて感動をよぶ本格的時代小説。
五百万両の借金をかかえる破綻寸前の薩摩藩の財政建て直しを島津重豪から命ぜられた調所笑左衛門広郷。唐物取引、砂糖黍栽培等、非合法、非人道的な事を行うも、主君の命を遂行すべく私利私欲を捨て改革に邁進する。若き日の西郷隆盛、大久保利通等を推挙して新しい時代の礎を築いたが、重豪亡き後、後継ぎをめぐる騒動に巻き込まれ、汚名を一身に背負い、自ら命を絶つ。この男・調所笑左衛門の存在なくして、薩摩藩が明治維新の中心になる事はなかったのである。
メガバンク東名富国銀行頭取の藤山はかつて部長時代、女子行員の裕子と関係を持ち妊娠させる。その後処理にあたったのが左遷直前の部下、西前だった。以来藤山と西前は二人三脚で出世街道を突き進む。裕子の産んだ子を密かに自らの娘として育てる西前。そして、時代はやがて政・官をも巻き込んだ一大金融狂乱期を迎えるー。元都銀幹部の著者だからこそ書けた、バブル前夜から銀行大合併時代までの金融界の内幕と、水面下で蠢く野心や男女の愛憎を巡る凄絶な人間模様を描いた長篇小説。
雀ゴロの英さんは、一本気なイカサマ師。だけど最近はどこの麻雀クラブも油断しなくなって、商売あがったり。そこへ謎の美女が現れて「麻雀を教えて」とせがむ。下心をこらえて彼女と組んだ英さんは、大勝負に臨むが…。表題作「天和をつくれ」ほか、文庫初収録の短篇計八作。いずれも、ギャンブルが題材ながら、描かれているのは、勝負に生きる“人間”たちの哀楽にみちた人間模様。昭和の匂いを満喫できる一冊。
アフガニスタンに潜入したCIAスパイがアルカイダの密命を帯びてアメリカに密入国。9.11を上回る作戦とは何か?標的はどこ?そして、いつ?-ダブルスパイの嫌疑をかけられながら、ただ独りおのれの職務をまっとうしようとする男の孤独と矜恃を描く現代スパイ小説の傑作。2007年アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長編賞受賞作。
「エッフェル塔の先端にスカートのお尻を引っかけて宙ぶらりんになったままトランペットを吹いている花嫁さん」など全身不思議な洋ものタトゥーだらけの由果のまわりには、一筋縄ではいかない同じ会社の仲間たちが集まっていた。恋人の博覧強記男・健次、下北沢路上美形弾き語り青年・京一、彼を好きな謎のお金持ち令嬢・千石さん、ハードボイルドで映画おたくな浩一郎と共にみんなでどれだけバカで笑える話ができるかに命をかけて日々を過ごしていた。しかし、タトゥー・フェチの野茂美津夫部長の策略が引き金になって、事態は思わぬ展開を迎えることにー。
おそらく半径500メートル、いや1キロを見渡してみても「一番かっこいい」と思われること間違いなしの超美形男子高校生・永峰達也は、ある日、通学途中に清楚な美少女を見かける。「か、かわいい…」しかし、そこは、120%妄想男の達也。「告白」→「メアドの交換」→「初デート」→「それから…」の脳内シミュレーションのみが日々バージョン・アップされ、声をかけるまでに1年半経過。さらに、そこから手を繋ぐこともできない状態が1年も続いた(ああ、もう、じれったい!)。ところが、ひょんなことから、ふたりは「ともに物語を書く」という共通の趣味があることに気付くー。読書好きの少年少女・元少年少女必読の一冊。
世界的コングロマリット「ワーナー・パーク」の日本法人に経理本部長としてヘッドハンティングされた池田岑行。メーンバンクの変更、経理部門の再編、公私混同著しい上司との対決…停滞していた社内に次々と改革を施す。だが、池田を待ち受けていたのは、ライバルたちの卑劣な罠だったー。相次ぐCEOの解任、一瞬の隙も許さぬ人事抗争。非情の「外資」をその卓越した財務戦略で生き抜いた唯一無二の日本人。著者渾身の国際経済小説。
製薬会社の買収、東証上場ー次々と降りかかる難題に直面しながらも、池田は日本ワーナー・パークをグループ内屈指の地位に引き上げていく。しかし、米国本部は新CEOの失策を機に、史上最大級のTOBを仕掛けられるという未曾有の危機に直面していた。巨大外資の存亡を賭けた闘いがいま、始まる。画期的な高脂血症治療薬の独占を狙い世界最大の製薬会社が敵対的買収を仕掛けてきた。メディアを巻き込んだ法廷闘争の幕が上がる。外資による相次ぐTOBにのたうつ日本の現在を予見した会心の経済巨編。
福岡・飯塚の炭坑町。私の小学生時代、町で知らないものはいないひとりの悪童がいた。その少年、信さんは、内向的で漫画を読むことが唯一の楽しみだった私を、ある日、いじめから助けてくれた。直後、その場を偶然通りかかった私の母は、誰もが恐れる信さんに微笑みかけた。その日から、信さんと私はいつも一緒だった。昆虫の群れる樹木の在りかから、鉄人28号の似顔絵まで、信さんは様々なことを教えてくれる遊びの天才でもあった。しかし、そんな日々も長くは続かなかったー。人生という名の野っ原を全力で駈けた少年が、いた。心に青く沁みる、名もなき魂の物語。
婚約破棄、リストラ…不幸のどん底に落ちた氏家譲は、ロック・スターになったという旧友・阿久津武蔵に再会し、彼の愛人の相手をするよう命じられる。さらに、武蔵が経営する怪しげな会社「ハピネス計画」で働くことになった譲は、ある謎めいた女性に遭遇して-。
20歳にして人生最悪のときを迎えた俺。残された時間は、バンド仲間と姿をくらました最愛の恋人を見つける。東京から沖縄、そして日本の最南端へ。疾走感たっぷりに繰り広げられるロードノベル。
仮想空間に紡ぎ出されたリアルな愛と孤独の感覚が大都会に棲む若者たちの心を震わせる。上海で、北京で、南京で、ネット世代が熱狂して、泣いたこれが現代中国インターネット文学の最高傑作。
北海道、東北、山陰と舞台を変えて、“望郷の殺人者”を追う十津川警部班の捜査行に終わりはない。表題作をはじめ「十津川民謡を唄う」「北の空 悲しみの唄」「北への殺人ルート」の四編、珠玉の旅情ミステリーの傑作を一挙収録。西村京太郎ワールドを心ゆくまで堪能する待望の一冊、文庫化なる。