出版社 : 小学館
甲子園優勝から二〇年目の夏ー松平孝太郎率いる弱小高校野球部ではふたごの新入生が活躍している。その姿に懐かしいあの兄弟が重なる。上杉達也と和也。孝太郎がふたりの投球を受けた青春の日、浅倉南もそこにいたー。あだち充原作の『タッチ』が初めて小説に。数々の名シーンはもちろんのこと、コミックには描かれていない隠れたエピソードも盛りだくさん。『タッチ』ファン必読、二〇〇五年秋公開の映画「タッチ」の感動もさらに広がる究極のサイドストーリー。あの不朽の名作が青春グラフィティ・ノヴェルとなってあらたに甦る。
医学ジャーナリストが描く迫真のミステリー ウィルス研究医・仲沢葉月は、ある晩、外科医の夫・啓介と前妻との間の子が誘拐されたという連絡を受ける。しかし夫は別の女からの呼び出しに出かけていったまま音信不通、幼子は無残な姿で発見された。痛み戸惑う気持ちで夫の行方を捜すうち、彼女は続発する幼児誘拐殺人事件の意外な共通点と、医学界を揺るがす危険な策謀に辿りつくーー。医学ジャーナリストが描く、迫真の医療サスペンス! 第1回小学館文庫小説賞受賞作。
探偵を名乗るものは皆、ある一定の調査力を持っている……わけではない。現在、日本では探偵社・興信所・調査会社を取り締まる法律や規制がないため、なろうと思えば誰でも探偵になれるから、ぱちもん業者が巷にわんさと溢れているのだ。ちなみに「ぱちもん」とは、偽物の意。本書は、そんな探偵たちの怪しい実態と、依頼人たちとのすったもんだを小気味よく、ときに優しい視点で描いた、シニカルな笑い満載のどつぼ系連作短編集。
憧れの少女エレナとデートしたい…。でも、デートの相手に選ばれるには少女の父親のハートを射止める贈り物をしなくてはいけない、という村のしきたりがありました。貧しい漁師の息子・マルチェロは、ある朝、彼女の父親に贈るとっておきの物を思いつきます。でも、それを手に入れるには、ある“取り引き”が必要だったのです。夢にまで見た彼女と交わす、初めての会話。初めてのデートのときめき。ひたむきな恋心だけを武器に恋の成就を目指して走る16歳の少年。イタリアの海辺の小さな村を舞台に繰り広げられるとってもピュアな初恋物語。
戦後1年、混乱をきわめる下関近郊の海岸に血まみれになった一人の男が密かに上陸する。朝鮮の新聞を騒がせた伝説の動物・海狼(シー・ウルフ)の正体だった。男の名は高橋健司、ふるさとで待つ母に会うため、ソ連軍が押し寄せた「満州」から逃げ延びてきたのだ。だが、男は重要な「機密」を握っていたため、ソ連軍だけでなく米国からも追われていたのだ!日本を舞台に、「海狼」をめぐり三つどもえで争う、米軍、ソ連諜報部、日本警察。高橋は、しだいに追いつめられ、やがて故郷・熱海の近くの真鶴岬へ向かう。そこで待っていたものは…。米ソ冷戦に巻き込まれた、日本憲兵の逃亡と悲恋のドラマ。
全力学園高校野球部主将・不屈闘志(ふくつ・とうし)が強豪・日の出商相手に演じた112対0からの大逆転劇を小説世界で完全に再現。受験生必須、現代史に欠かせない伝説の偉人の熱血物語。熱血野球映画「逆境ナイン」ノベライズ。
異常気象、凶作、飢餓、疫病の蔓延と、厄災ばかりがうち続いた江戸天明期、後世まで語り継がれる一人の力士が彗星のごとく現れた。巨人のような体躯と野獣のような闘志で豪快に相手を投げ倒していくこの男に、抑圧され続けてきた民衆は未来への希望の光を見た。実在の伝説的相撲取り「雷電」の一生を、緻密な時代考証を踏まえドラマチックに描いて、飯嶋和一の名を世に知らしめた大傑作歴史巨編の文庫化!
2004年映画公開されて人気を博した『下妻物語』の完結編である。ダメ親父のバッタもの商売が原因で尼崎を追われ、茨城県の下妻に引っ越してきたロリータ少女・竜ヶ崎桃子は、絶滅寸前のヤンキー少女・白百合イチゴと出会い、親友となった。桃子の大好きなブランド、BABY THE STARS SHINE BRIGHT でイチゴがモデルをやりだしてから、ふたりは連れだって代官山へ行くようになっていたが、ある日いつものように高速バスに乗ると、殺人事件が起こる。殺されたのは歌舞伎町のヤクザの幹部。イチゴに容疑がかけられ、桃子探偵は真犯人捜しを始めるが……。アガサ・クリスティの名作からトリックを借用。ミステリーのスパイスをほんの少しふりかけた、友情と仁義と笑いの最新作。映画化は未定。
上州勢多の大親分、大前田栄五郎の客分。文でも金子でも証文でも、一宿一飯恩義の人から、これをこの地の何様に、と頼まれたればひとっ飛び。届けてくれる遊侠道の裏飛脚。まるで韋駄天が仏舎利をお運びになるようだ、とあれが噂の新田の半六。元をただせば侍育ち。些細な事で人を斬り、そいつがケチのつき始め。渡世の義理で東奔西走。刺客を討ち賊徒を殺し、果ては尊皇攘夷の志士までも、相手にまわして刃を振るう。水増しした河の瀬を渡って行くよな危うい暮し。ついた渾名が「瀬越しの半六」。
経理係の横領で二〇〇〇万円もの負債を抱えたペーターは、ある日奇妙な事件に巻き込まれる。見知らぬ女から強引に、ある会社社長に届け物を頼まれるのだが、その中身は足の親指。女から執拗な嫌がらせを受けていた社長に借金返済を約束されて、ペーターは探偵役を引き受ける。だが、いつのまにか女が仕掛けた巧妙な罠にはまっていた…。緊迫の追跡劇を描きながら、亡き父親の温かみが忘れられず、母親から疎外された痛みを抱える主人公の内奥をも克明に書き込んでいく。『喪失』で話題を呼んだ北欧ミステリー界の女王ー鮮烈なデビュー作、ついに登場。
青山の高級エステ『ヴィーナスの手』。敏腕オーナーの京子にヘッドハントされた麻美は辣腕エステティシャンとして頭角を現し始める。この店にはかつて加藤サリというカリスマエステティシャンがいた。そのサリは六年前、何者かに自宅で殺害されたという。生まれ持った「手」の適性と高い技術、人間性も含めて〈サリの再来〉と賞される麻美。だが麻美は密かにサリを超えたいと願うようになる。京子の夫で健康食品会社社長の安芸津弘庸や、その愛人でキャバクラ嬢のアリシア、ヴィーナスの手の客で日常に満たされぬ思いを抱くOL・舞、麻美の同僚・結花と真子、そして弘庸と前妻との子で謎めいた美青年・柊也などの人物たちが複雑に関わりあいながら、物語は展開する。
そこに写っていたのは「想い」と題されたシャボン玉。1枚の写真をきっかけに、少女は少年への思いを募らせていく。偶然の再会から、少女は手紙を書きおくるが、少年からの返事が来ることはなかった。第六回小学館文庫小説賞受賞作品。
1980年代、我が国はかつてない「金融狂乱の時代」へと突入する。政治家・官僚・実業家、そして農家までもが「金銭の奴隷」となりはてた未曽有の四半世紀。バブル前夜から巨大銀行再編劇まで、水面下で繰り広げられた色・カネ・権力を巡る凄絶な人間模様を精緻に描いた著者渾身の長編小説。
メガバンクの頭取・藤山には誰にも言えない秘密があった。かつて部長時代に関係した女子行員・裕子。そして後始末にあたったのが左遷寸前の部下・西前だった。以来、ふたりは「鉄の主従関係」で激烈な権力闘争を勝ち抜いていくのだがー輝かしいはずの「あのころの未来」がこんな混迷だったとはー。
老舗の紙問屋の跡取りとして生まれながら、継父との不和から家出。目明しの下っ引きとなった達造。実家とは、子守奉公のおたえとの交流だけが細いつながりだ。仲間の下っ引きが殺されたことから事件は拡大。闇に潜む悪を追う達造だが、魔の手は、達造の実家にも及ぶ…。江戸の底辺で生きる市井の人々の哀歓や情緒を、情感あふれる文体で描いた、清新で心あたたまる人情時代小説。
巨大ワニの化石が発見されて一躍全国区となった南海市。市民相談室主査・倉永晴之のイライラは募るばかり。上司は不祥事で逮捕されるわ、妻は交通事故を起こすわ、小さな肩に降りかかるトラブルはとどまるところを知らない。そんな折、市長に酒席で絡まれ、晴之は暴行騒動にまきこまれる。ああ、今日も悲しき地方公務員。
スーパースターのような存在だった兄は、ある事故に巻き込まれ、自殺した。誰もが振り向く超美形の妹は、兄の死後、内に籠もった。母も過食と飲酒に溺れた。僕も実家を離れ東京の大学に入った。あとは、見つけてきたときに尻尾に桜の花びらをつけていたことから「サクラ」となづけられた年老いた犬が一匹だけーー。そんな一家の灯火が消えてしまいそうな、ある年の暮れのこと。僕は、何かに衝き動かされるように、年末年始を一緒に過ごしたいとせがむ恋人を置き去りにして、実家に帰った。「年末、家に帰ります。おとうさん」。僕の手には、スーパーのチラシの裏の余白に微弱な筆圧で書かれた家出した父からの手紙が握られていたーー。