出版社 : 小学館
夏樹は都内の書店に勤めて5年になるが、いまだにアルバイト店員のまま。17歳のときの援交体験がもとで、人間関係をうまく築けないでいる。寂しさを埋めようと年上の既婚者や出版社の営業担当と付き合うが、心の隙間は広がるばかり。そんな折、夏樹は店で中年女性の万引きを目撃し、大学教授の妻である彼女の家を訪ねる。そこで夏樹が出会ったのは崩壊家庭の中で自らを確かに保って生きようとする高校生の光治だった。期待の女性作家が描くアンチ純愛小説。
想い合い、支え合いながら、静かに日々を生きる人々のまるで祈りのような人生の数々。一途に相手を想い、明日を描く…その純粋なひたむきさが胸に迫る佳篇群。『松の花』『その木戸を通って』他15作品収載。
リーガルサスペンスの巨匠ジョン・グリシャムが、ハート・ウォーミングなホームコメディーに挑んだ異色作。感謝祭直前、今年はクリスマスを海外ですごそうとした会計士が巻き起こす大騒動。この決断は町中に大きな波紋を投げかける。各種寄付金集め、恒例のパーティー、町内一丸のクリスマスデコレーション・コンテストなどなど。数々の嫌みや妨害をはねのけ、明日は出発というクリスマスイブの朝、事件が……。
二〇〇三年春、日本の株式市場は壊滅的に売り込まれ、破綻寸前まで追いつめられていた。そこに“代行返上”による更なる売り圧力がかかる。そんなカネの匂いに蠢ぎ始めた外資系ヘッジファンド。ハゲタカのように日本市場のクラッシュもいとわず、儲け優先で狙いをさだめた。その他、代行返上に伴う年金基金関係者の途方もなく煩雑な業務から浮かび上がる企業年金管理のずさんさ。厚生労働省、企業、サラリーマン個人、それぞれの視点から多角的にあぶりだされた“企業年金の実態”。企業人必読の問題作が、ついに文庫化。
1932年にノーベル文学賞を受賞したイギリスの作家・ゴールズワージーによる名作中編小説の新訳。ロンドン郊外を舞台にした、名家フォーサイト家の85歳の老紳士と彼の甥の妻である28歳の女性との純愛物語。「愛には歳は関係ない。制限も死もない」-“もうひとつの『マディソン郡の橋』”といえる名作がよみがえります。
交際3年。求婚済み。年の差なし。ここが世界の頂点だと思っていた。こんな生活がずっと続くんだと思っていたー。精緻にしてキュート。清冽で伸びやか。いま最注目、野間文芸新人賞作家が放つ恋愛長編。
「待つ」とは未来を信じること、あるいは明日へ向かう強い意志。ひたむきに人を待つ美しさ、ひたすらに期(とき)を待つ凄まじさ…生に期する力を捉えた充実の名作群。掲載作品は、『内蔵允留守』『柘榴』『山茶花帖』『柳橋物語』『つばくろ(燕)』『追いついた夢』『ぼろと釵』『女は同じ物語』『裏の木戸はあいている』『こんち午の日』『ひとでなし』の11作品。
元弘三年二月、五流山伏・児島高徳は、隠岐島に流された後醍醐天皇を脱出させることに成功する。高徳は、立川流の文観上人から、“螢惑星”という世に風雲を巻き起こす相があるといわれ、同じ相が足利尊氏にもあると知らされる。やがて後醍醐天皇は尊氏に追われ、南朝を起こす。高徳は、後醍醐天皇への信義を貫き、度重なる誘いにも動ぜず、尊氏と戦い続けた。北畠親房、楠木正成、新田義貞らの名将が活躍した謀略・野望うずまく南北朝時代の、知られざる人物の苛烈な生涯。
虫歯で命を失うこともあった江戸時代、庶民たちに歯の大切さを説き、虫歯で悩む者たちを長崎仕込みの知識で次々と救う口中医・藤屋桂助。その幼なじみで薬草の知識を持つ志保と、江戸の歯ブラシ・房楊枝職人の鋼次は、ともに力を合わせる若き仲間同士である。しかし、桂助のまわりでは謎の事件が次々と起こり、得体の知れない大きな流れに巻き込まれていく。大奥まで巻き込んで続発する事件の真相とは…。口中医桂助事件帖シリーズ第一作。
激動の幕末から明治、日本の夜明けを切り開いた〈咸臨丸〉使節団に選ばれた二人の青年士官。時節に明と暗を分かつ二人のはざまに揺れる女心。 韮山代官江川太郎左衛門配下の俊鋭たちが、海に陸に日本の近代化をおしすすめる。そのエネルギーに翻弄されながらも、男たちの碇となる時代の女を描く。第2回小学館文庫小説賞受賞作。
即席ラーメンが発売されて、力道山が英雄で、月光仮面は茶の間に現われ、フラフープが大流行、そして空に向かって東京タワーが少しずつ背を伸ばしていた昭和三十三年。日々の暮らしはいまほど裕福ではなかったけれど、幸せはみんなのすぐ隣にあった。西岸良平原作の超ロングセラーコミック『三丁目の夕日』の世界を、『とげ』『かび』『どろ』三部作の作家、山本甲士が小説で再現。映画「ALWAYS三丁目の夕日」にもつながるノスタルジック&ハートウォーミング・ストーリー。暮れなずむ下町の夕空に、時代を超えてやさしく降り注ぐ十二篇の心なごむ流星たち。
「あるべき」姿と「ありたい」姿。その狭間で人々は迷い、悩み、思い惑う。そのことが人を変え、運命を動かす。行くべき姿を探る人々の姿に、人生の実相をみる作品群。掲載作品は、『晩秋』『金五十両』『泥棒と若殿』『おたふく』『妹の縁談』『湯治』『しじみ河岸』『釣忍』『なんの花か薫る』『あんちゃん』『深川安 楽亭』『落葉の隣り』の12作品。
魔女は言った。「あなたの幸せを邪魔しているのは、たったひとつのことよ」その答えが分かるのは7日後ー時間と空間のトリックに気づいたとき人生はどんどん楽に、楽しくなっていく。「恋、仕事、人間関係…何ひとつうまくいかない。もう疲れちゃった」あなたに贈る、夢のような本当の話。
もし、もう一度、あの時間に戻れるとしたら。そして、やり直すことができるとしたらー。大好きだった年上のある女性、産んだ直後に死んでしまった母、交通事故で亡くなった息子…。一九八六年、門司。“あること”をきっかけに、過去に戻ってしまった登場人物たちそれぞれの群像劇。映画『黄泉がえり』原作者・梶尾真治氏が、新たな試みとして取り組んだ、映画『この胸いっぱいの愛を』の原作者自らの手による異色のノベライズ作品。
私の頭の中には、消しゴムがある。かけがえのない、すべての記憶がなくなっていく。大切な思い出も、大好きなあなたの名前も、その顔も、すべて失ってしまうー。二八才のOLの私は、建築士を目指す彼と出会い、幸せな日々を過ごしていた。やがてふたりは、結婚。しかし、そんな時間は長くは続かなかった。アルツハイマー。医師から告げられた病名は、想像もつかないものだった…。映画『私の頭の中の消しゴム』の原作ドラマ・プロデューサーが、映画にインスパイアされて紡ぐ切なくも美しいショート・ストーリー・ブック。