出版社 : 岩波書店
語 源 抜 粋 第一章 まぼろし 第二章 カーペット・バッグ 第三章 潮吹き亭 第四章 掛けぶとん 第五章 朝 食 第六章 通 り 第七章 教会堂 第八章 説教壇 第九章 説 教 第一〇章 こころの友 第一一章 ナイトガウン 第一二章 おいたち 第一三章 手押し車 第一四章 ナンターケット 第一五章 チャウダー 第一六章 船 第一七章 ラマダーン 第一八章 クイークェグのしるし 第一九章 預言者 第二〇章 出港準備 第二一章 上 船 第二二章 メリー・クリスマス 第二三章 風下の岸 第二四章 弁 護 第二五章 追 記 第二六章 騎士と従者(その一) 第二七章 騎士と従者(その二) 第二八章 エイハブ 第二九章 エイハブ登場、つづいてスタッブ 第三〇章 パイプ 第三一章 夢 魔(クイーン・マブ) 第三二章 鯨 学 第三三章 銛打ち頭(スペックシンダー) 第三四章 船長室の食卓 第三五章 檣頭(マスト・ヘッド) 第三六章 後甲板 第三七章 落 日 第三八章 たそがれ 第三九章 夜直はじめ 第四〇章 深夜の前甲板 第四一章 モービィ・ディック 訳 注
祖父と母との不義の子として生まれた宿命に苦悩する人主公時任謙作は、単身、尾道に向い、千光寺の中腹の家を借り、一人住いを始める。しかし、瀬戸内海の穏やかな風光も、彼の心に平安をもたらさない。長年月を費してなった志賀直哉唯一の長篇。
京都での結婚、妻の過失、子どもの死などを経て、舞台は日本海を見おろす大山にー作者が人生と仕事の上で求めてきたものすべてが投入され、描き尽くされた、近代日本文学に圧倒的な影響を及ぼした代表作。
故郷への旅の途中で次々と現れる亡霊たち。彼らが呟くのは、半世紀前、朝鮮半島で起きた凄惨な戦争の生々しい姿である。それは南北米中の軍同士の戦いであっただけでなく、村人同士、隣人同士の血で血を洗う殺し合いでもあったーピョンヤン、ニューヨーク、ベルリンで実在の人物に取材し、ソウルの獄中で構想した、衝撃の小説作品。
北陸敦賀の旅の夜、道連れの高野の旅僧が語りだしたのは、飛騨深山中で僧が経験した怪異陰惨な物語だった。自由奔放な幻想の中に唯美ロマンの極致をみごとに描きだした鏡花の最高傑作『高野聖』に、怪談的詩境を織りこんだ名品『眉かくしの霊』をそえておくる。
第 一 章 第 二 章 第 三 章 第 四 章 第 五 章 第 六 章 第 七 章 第 八 章 第 九 章 第 十 章 第十一章 第十二章 第十三章 第十四章 第十五章 第十六章 第十七章 第十八章 第十九章 第二十章 解 説
30歳のモーパッサンが彗星のように文壇に躍り出た記念すべき短篇小説。普仏戦争を背景に、ブルジョワや貴族や修道女や革命家といった連中と1人の娼婦とを対置し、人間のもつ醜いエゴイズムを痛烈に暴いた。人間社会の縮図を見事に描き切ったこの作品は、師フローベールからも絶賛され、その後の作家活動を決定づけた。新訳。
『失われた時を求めて』の冒頭部「コンブレー」を取り上げ、主人公の不眠の夜と作品内部の時間、登場人物たちの形成に至る思いがけないプロセス、相貌を変えてゆく田舎町イリエ、また名高いサンザシの匂いや色彩などのアスペクト精細に読み解く。細部から壮大な全体へと及んでゆく精妙なプルースト的生成を、近年の研究の蓄積を踏まえて鮮やかに開示する。いまプルーストを読む醍醐味をこの一冊に伝える。
アイルランド、そしてダブリンに生涯こだわり続けたジョイス(一八八二ー一九四一)。「細心卑小な文体」を用いて、閉塞的なダブリンの市民階層の麻痺的な生態を描いた十五篇。『ユリシーズ』等につながる、ジョイス文学の展開の端緒をなす初期短篇集。
繊細な感覚で日常の美を謳った大正詩壇の鬼才、室生犀星(1889-1962)の自伝的三部作。古都金沢で数奇な星の下に寺の子として育った主人公は、詩への思いやみがたく上京する。詩人志望の青年の鬱屈した日々を彩る少女との交流をみずみずしく描いた表題作の他、『幼年時代』『性に眼覚める頃』を収録。
旧制第一高等学校に入学した川端康成(1899-1972)は、1918(大正7)年秋、初めて伊豆に旅をして、天城峠を越えて下田に向かう旅芸人の一行と道連れになった。ほのかな旅情と青春の哀歓を描いた青春文学の傑作「伊豆の踊子」のほか、祖父の死を記録した「十六歳の日記」など、若き川端の感受性がきらめく青春の叙情六篇。