出版社 : 岩波書店
うんたまぎるー参上。重力のくびきを脱し、夢と現実、善と悪の境を自由にまたぐ沖縄伝承の義賊。ときは幕末、沖にペリーの黒船が寄せ、宣教師ペッテルハイムの聖書と天文学が琉球古来のコスモロジーをゆるがす。世界史の実験場、驚天動地の舞台だ。さあ、活劇が始まるぞ。床屋のテルリン、娼妓のチルー、はては豚からノミの目まで、カメラ・アイを移動する語りのSFX。
裕福な家庭に育ったアンネットは、父の死後、異母妹シルヴィを知り、親しくなる。一方、破産を宣言され、恋人ロジェとも別れる。そして、彼との間に生れたマルクの母としてのたたかいの日が始まる。一次大戦前後のパリに生きる一人の女性を描く大河小説。
最愛の息子にも母の熱烈な愛は理解されない。第一次世界大戦が始まり、アンネットは男子中学の教師として地方へ。母の愛情と権威への屈服を拒むマルクは、不安、恐怖、汚辱の巷パリに残る。一方、シルヴィは娘を不慮の事故で、夫を戦争で失う。
愛しながら傷つけあっていた母と子は、遠くはなれてかえって互いの真の姿を発見する。戦争は終わり、マルクは勉学に革命運動に全力をあげてつきすすみ、アンネットは戦後の頽廃と混乱の中で生活の資を得るために奔走する。
アンネットは一新聞社の社長秘書となり資本主義下の政治・経済社会の虚偽を知るが、マルクは母親の仕事に反感を持ち一時遠ざかる。亡命ロシア人の娘アーシャと結婚したマルクは、ふとした妻の過ちから別居したものの、再び強く結ばれ、反ファシズム活動へ。
家族とともに旅立ったマルクは、イタリアで暴漢に襲われた老人を救おうとして殺される。アンネットは息子と同じ道を進む決心をして悲しみの底から立ち上がる。…現代の女性の生き方にも大きな示唆を与えるロマン・ロラン(1866-1944)不朽の名作。
零落した貴族の館にあってひたすら孤独と無為の日々をおくる青年ジャン。過去の世界を夢見て生きつづけようとする彼は、やがて深い血のつながりと宿命につき動かされ、自分と同名の先祖が150年前にはたせなかった恋を受け継ごうとする…。荷風が心酔した黄昏の詩人レニエ(1864-1936)の傑作小説。
学問・芸術が絢らんたる花々を咲かせた「精神の世界都市」ウィーン。文学界にはシュニッツラーやホフマンスタールなど、いずれも一筋縄では行かぬ文人たちが輩出し才を競いあった。その多彩な世界を一望し、特異な精神風土を浮び上がらせる待望のアンソロジー。
ある夜、青年ハインリヒの夢にあらわれた青い花。その花弁の中に愛らしい少女の顔をかいま見た時から、彼はやみがたい憧れにとらえられて旅に出る。それは彼が詩人としての自己にめざめてゆく内面の旅でもあった。無限なるものへの憧憬を〈青い花〉に託して描いたドイツ・ロマン派の詩人ノヴァーリス(1772-1802)の小説。
第一次大戦下、フランスの前線部隊に起った反乱をめぐる兵士・市民の物語である。12人のふしぎな兵士を従えた一伍長の受難をキリストの受難に二重写しにしつつ、「生きる苦悩と救い」という人類永遠のテーマを、戦争という人間悪の集約ともいうべき場で執拗に追及したフォークナー破格の思想小説。
第二次世界大戦の衝撃を一つの決定的な契機として、作者は無意味な大量殺人としての「戦争」を現代の世界状況および構造そのものを深く象徴するものとして捉え、そのメカニズムを徹底的にあばき、その根源の地点から人間存在の意味と可能性を未来に向かって把捉しなおそうとする雄勁な文学的企てをここに結実させた。
アメリカ南部ジョージア州のタバコ地帯を舞台に、社会の発展に取り残され荒廃したプア・ホワイトとよばれる農民達の貪欲・無知・背徳の生活を描き、コールドウェルの名を一躍世界的にした傑作。
ロボットという言葉はこの戯曲で生まれて世界中に広まった。舞台は人造人間の製造販売を一手にまかなっている工場。人間の労働を肩代わりしていたロボットたちが団結して反乱を起こし、人類抹殺を開始する。機械文明の発達がはたして人間に幸福をもたらすか否かを問うたチャペックの予言的作品。
解放戦線の密命を受けてダナンの家に戻り、転向者の汚名に傷つきながら闇取引に携わるベトナム青年ファム・ミン。ミンの大学の先輩であり、有能な商人であり、そして実は解放戦線のダナン責任者グエン・タット。ベトナム脱出を夢みて、軍内で地歩を固め、ついに桂皮の大利権獲得のための大作戦の賭に打ってでる、ミンの兄ファム・クエン少佐。そしてクエンと野望を分ちあう孤独な韓国女性ミミー…。米国の物資と武器をめぐって欲望渦巻く闇市場で、民族の魂はいかに生きうるか。民族統一と民主化の闘い燃えさかる韓国のベストセラー小説。
この作品においてドストエーフスキイは人間の魂を徹底的に悪と反逆と破壊の角度から検討し解剖しつくした。聖書のルカ伝に出てくる、悪霊にとりつかれて湖に飛びこみ溺死したという豚の群れさながらに、無政府主義や無神論に走り秘密結社を組織した青年たちは、革命を企てながらみずからを滅ぼしてゆく…