出版社 : 岩波書店
舞台は17世紀初め、世情いまだ穏やかならぬルイ13世治下のフランスである。勇気と才覚を武器に出世の道を切りひらこうと、パリにやってきた青年ダルタニャンが到着早々出会ったのは、3人の近衛銃士ー沈着冷静な武人アトス、人の好い豪傑ポルトス、そして詩人はだで聖職者志望のアラミスだった。友情に固く結ばれた4人の活躍が始まる。
文豪デュマ(1802-70)はその旺盛な筆力をもって、生涯のうちに小説だけでも257巻に及ぶ作品を書いたが、なかでも『三銃士』は世界中の人々にもっとも愛された小説である。個性豊かな4人の銃士と彼らを結ぶうらやましいまでの友情、危機にのぞんで男らしく颯爽と行動するそのさわやかさ。この若々しい男性的ロマンに読者はつきせぬ魅力を見出すだろう。
城の牢に幽閉されたファブリスをめぐってパルム宮廷の政争はさらに激しく展開する。才気と美に輝く叔母サンセヴェリナの情熱、モスカ伯爵の精妙な政治学、政敵コンチ将軍の娘クレリアの可憐な恋。個性的な多くの副人物を配し、19世紀前半、動乱期イタリアの小公国パルムを描いて「広範な社会的真実」を見事に浮かび上がらせた傑作。
優雅で美しく無垢な青年ファブリス。ナポレオン崇拝のあまりワァテルローの戦いに飛び出してゆく彼の衝動的行動から物語は始まり、波瀾万丈の展開をみせる。恋、政争、冒険、生と死。『赤と黒』と並ぶこのスタンダール(1783-1842)の代表作は、一生のあらゆる段階で読み返されるに値し、そのたびに味わいを増すとまで讃えられる。
一家の、かつての明るい健康な気風は徐々に頽廃的なものに変ってゆく。トーマスにとってとりわけ息子の繊細な心と弱々しい肉体は気がかりであった。少年はわが家の系図を見つけ、その末尾にある己れの名の下に線を引く、他愛ない悪戯心からだったのだが。
父の死後、トーマスは新社主として商会を引き継いだ。離婚する妹、身をもち崩す弟らを抱えながらトーマスは父祖の築いた一家の名声と体面を保ち、事業にも腕を揮ってやがて市の参事会員に選ばれた。一家の血は彼によって次代に伝えられてゆくかのようであった。