出版社 : 岩波書店
ペロー(1628-1703)の『童話集』は、民間伝承に材を得た物語集のうちでも最も古いものといってよい。よく知られた「眠れる森の美女」「赤ずきんちゃん」「青ひげ」「長靴をはいた猫」「サンドリヨン(シンデレラ)」を始め、韻文で書かれた「ろばの皮」など全作品を収め、口承文芸研究の視点から注・解説を付した。
主人公は小心で引っこみ思案の典型的小役人。家柄も才能もないが、栄達を望む野心だけは人一倍強い。そんな内心の相克がこうじたあまり、ついにもう1人の自分という幻覚が現れた!精神の平衡を失い発狂してゆく主人公の姿を通して、管理社会の重圧におしひしがれる都市人間の心理の内奥をえぐった巨匠(1821-81)の第2作。
魯迅が中国社会の救い難い病根と感じたもの、それは儒教を媒介とする封建社会であった。狂人の異常心理を通してその力を描く「狂人日記」。阿Qはその病根を作りまたその中で殺される人間である。こうしたやりきれない暗さの自覚から中国の新しい歩みは始まった。
舞 姫 うたかたの記 文 づ か ひ そめちがへ ふ た 夜 FRIEDRICH WILHELM HACKLAENDER 解 説 (稲 垣 達 郎)
子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない。だが、おとなの目で原作を読むとき、そこにはおのずと別の世界が現出する。他をえぐり自らをえぐるスウィフト(1667-1745)の筆鋒はほとんど諷刺の枠をつき破り、ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない。
革命の展開は急速である。王家はチュイルリー宮へ押し込められ、スパイがマリーの身辺にまでうろつく。こうなってみて初めてさとるのだった。自分が王妃として、マリア・テレサの娘として「後世という持続的な不屈なまなざし」の前に立たされたのだと。また圧倒的な力に押しつぶされぬためには、どうしても偉大でなければならぬのだと。