出版社 : 岩波書店
「アメリカ文学の父」W・アーヴィング(1783-1859)の最高傑作。短篇小説ありエッセイありの雑記帳。上巻には、アメリカ版浦島太郎「リップ・ヴァン・ウィンクル」のほかに、おもに英国の風俗習慣を素描した、格調高い筆致の18篇を収録。上下巻あわせて日本語への翻訳史上初の全34篇を訳出。挿絵多数。(全2冊)[新訳] 《収録作品》 私自身について 船旅 ロスコウ氏をめぐって わが妻に リップ・ヴァン・ウィンクル イギリス人文筆家のアメリカ観 イギリスの田園生活 ブロークン・ハート 書物の作り方 王室の詩人 田舎の教会 老母と息子 ロンドンの日曜日 居酒屋ボアーズヘッド 文学の変遷 田舎の葬式 旅籠の厨房 幽霊花婿 ウェストミンスター寺院
不吉な彗星の年。軍務に戻ったアンドレイは父と妹に敵接近を急報するが、退避日前に老公爵は死去、マリアは領地農民の反抗に遭う。戦争の本質を探ろうとピエールはボロジノへ発つ。いまや貴族も農民もなく、全ロシアの危機が始まろうとしていた。
多くの作家や詩人が国外に亡命したり獄中死などの悲惨な最期を遂げるなか、南アフリカに踏みとどまって、白人の立場から人種差別批判の作品を発表しつづけた南アフリカのノーベル賞作家ナディン・ゴーディマ(1923-2014)。アパルトヘイト全廃が法的に決定した後の、新しい社会体制へと移行する人びとの動揺や不安の心理を描いた珠玉の短篇。
『失われた時を求めて』の冒頭部「コンブレー」を取り上げ、主人公の眠れぬ夜の時間意識、登場人物たちの思いがけない造形過程、サンザシの匂いや色彩などの相を精細に読み解く。細部から壮大な全体へと及んでゆく精妙なプルースト的生成を、長年の研究蓄積を踏まえて鮮やかに開示する。岩波文庫版『失われた時を求めて』の個人全訳に取り組む著者による最良のプルースト入門。
妻の死後、田舎に隠棲する傷心のアンドレイを甦らせたのはナターシャだった。だが若さゆえの過ちから少女は誘惑者の手に。苦境を救おうと奔走するピエールが冬空に見たのは、ナポレオンとの再対決を予感させる、巨大な一八一二年の彗星だった…。
アウステルリッツ戦で負傷し行方不明だったアンドレイが帰還した夜、妻リーザは男子を出産し死亡する。ピエールは愛のない結婚をして妻の不貞で決闘へ。ロストフ家の恋する若者たちは…様々な人生の一方でナポレオンはロシアを屈辱の講和へ導く。
「奇妙な仕事」「飼育」「セヴンティーン」「「雨の木」を聴く女たち」など、デビュー作から中期の連作を経て後期まで、全二三篇を収録。作家自選のベスト版短篇集であると同時に、全収録作品に加筆修訂がほどこされた最終定本。ノーベル賞作家・大江健三郎のエッセンス。
一八〇五年夏、ペテルブルグ。上流社会のパーティに外国帰りの奇妙な青年ピエールが現れる。モスクワでは伯爵家の少女ナターシャが名の日の祝いに平和を満喫。一方従軍するアンドレイ、ニコライらに戦火は迫りー対ナポレオン戦争を描いて世界文学史に輝く不滅の名作!新訳。
五感を越える「感覚」で世界を捉え、哀感とユーモア、エロティシズムをも湛える独特の表現が今なお新しい尾崎翠(一八九六ー一九七一)。奇跡のような作品群から代表作「第七官界彷徨」と緩やかに連なる四篇、没後発見の映画脚本草稿「琉璃玉の耳輪」を収録。
冬に向かうパリ、「私」をめぐる景色は移ろうー「花咲く乙女」とベッドで寄り添い、人妻との逢い引きの夢破れ、ゲルマント夫人の晩餐には招待される。上流社交界の実態、シャルリュス男爵の謎、予告されるスワンの死…。人間関係の機微を鋭く描く第七巻。
『ペスト』(1947年)は、「不条理に人間としてどう立ち向かうか」を描いた小説として、時代を越えて読み継がれている。特に、3.11を経験し、戦後民主主義を否定する政治的な動きがある現在の日本社会において、この作品を読む意義は大きい。不条理に反抗する力とは。人間の可能性とは。カミュの思想も紹介しながら、根源から読み解く。
唐宋伝奇の源流は六朝時代の怪異譚に求められるが、唐代になると、意識的に奇異なものを追求して曲折に富む複雑な筋立てにし、修辞も凝るようになる。こうして文学と呼ぶにふさわしい創作ジャンルが確立する。武田泰淳は、これを、ヨーロッパの近代的短篇にも劣らぬ、常に新しさを失わぬ芸術品の結晶であるといった。
『南柯の一夢』の主人公は官僚を嘲笑する自由人である。そういう男が役人になって栄達の限りをつくし、得意と失意をたっぷりと味わう。味わったところで夢からさめ、槐の根もとを掘るとどうだろう、夢みたとおりの小さな蟻の王国があったのだ。唐代伝奇の面白さは、幻想を追っているようで実は深く現実の人間の本質をついているところにある。(全二冊)
本冊の読みどころ 本冊のおもな登場人物 主要登場人物系図 第一百一回 大観園に 月夜 幽魂に感じ 散花寺に 神籤 異兆に驚く 第一百二回 寧国府 骨肉 災祲を病み 大観園 符水 妖孽を駆る 第一百三回 毒計を施して 金桂 自ら身を焚き 真禅に昧くして 雨村 空しく旧に遇う 第一百四回 酔金剛 小鰍は大浪を生じ 痴公子 余痛は前情に触る 第一百五回 錦衣軍 寧国府を査抄し 驄馬使 平安州を弾劾す 第一百六回 王熙鳳 禍を致して羞慚を抱き 賈太君 天に禱りて禍患を消す 第一百七回 余資を散じて 賈母 大義を明らかにし 世職を復して 政老 天恩に沐す 第一百八回 強いて歓笑して 蘅蕪 生辰を慶び 死して纏綿たり 瀟湘 鬼哭を聞く 第一百九回 芳魂を候ちて 五児 錯愛を承け 孽債を還して 迎女 真元に返る 第一百十回 史太君 寿終わりて 地府に帰り 王鳳姐 力詘きて 人心を失う 第一百十一回 鴛鴦の女 主に殉じて 太虚に登り 狗彘の奴 天を欺きて 伙盗を招く 第一百十二回 冤孽に活きて 妙尼 大劫に遭い 讐仇に死して 趙妾 冥曹に赴く 第一百十三回 宿冤を懺いて 鳳姐 村嫗に托し 旧憾を釈きて 情婢 痴郎に感ず 第一百十四回 王熙鳳 幻を歴て 金陵に返り 甄応嘉 恩を蒙りて 玉闕に還る 第一百十五回 偏私に惑いて 惜春 素志を矢い 同類を証して 宝玉 相知を失う 第一百十六回 通霊を得て 幻境に仙縁を悟り 慈柩を送りて 故郷に孝道を全うす 第一百十七回 超凡を阻んで 佳人 双り玉を護り 聚党を欣んで 悪子 独り家を承く 第一百十八回 微嫌を記して 舅兄 弱女を欺り 謎語に驚きて 妻妾 痴人を諫む 第一百十九回 郷魁に中りて 宝玉 塵縁を却け 皇恩に沐して 賈家 世沢を延ぶ 第一百二十回 甄士隠 太虚の情を詳説し 賈雨村 紅楼の夢を帰結す 訳者あとがき