出版社 : 平凡社
ユーラシア大陸の広範な地域に存在するテュルク系諸民族が語り伝えた英雄叙事詩の本邦初訳。ギリシアの『オデュッセイア』に似た、勇士アルパムスが活躍する各民族のテクスト群を結集。
まだ女性どうしの愛が「口にだせなかった」十九世紀末から二十世紀前半。切なさ、絶望、驚き、そして喜びー女性あるいは男女両方のパートナーを持った女性作家たちが描く、深くて複雑な女どうしの物語十七編。小説を読む幸せが詰まった珠玉のアンソロジー。
めくるめく神秘と幻想に満ちたアイルランドの妖精世界へ。ノーベル賞詩人イェイツ(1865-1939)による世紀末の連作「赤毛のハンラハン物語」を初邦訳。同時代の詩集『葦間の風』から物語に響き合う精選18篇を新訳。
一月は固い大地にシャベルをへし折り、四月はやわらかい土中の芽吹きに心躍らせ、八月は旅先から隣人に水やりを依頼、十二月にはカタログを眺めながら三月を待ち望むー。腰を曲げ、足のやり場に困りながら、植物に人生を学び、日々奮闘する園芸家の喜怒哀楽を愛とユーモアたっぷりに綴る園芸エッセイの金字塔。
敗戦の年に生を享けたヒナ子は、複雑な家庭事情のなかで祖父母のもと、焼け跡に逞しく、土筆のように育ってゆく。炎々と天を焦がす製鉄の町・北九州八幡で繰り広げられる少女の物語。自伝的小説。
高橋新吉、辻潤、秋山清…大正の世にかりそめに咲いた前衛芸術の徒花。韓国文学史上唯一のダダイストの交友の軌跡から、その鮮烈な青春のきらめきをエピソード豊かに描く。刹那的な彼ら“三国同盟”の友情。日/韓式ダダ群像。
フローベール「愛書狂」、デュマ「稀覯本余話」、ノディエ「ビブリオマニア」、アスリノー「愛書家地獄」、ラング「愛書家煉獄」、古本黄金時代、世人の想像を絶する愛書家たちの倒錯的生態を描いた究極の書痴小説五篇。その狂乱の歴史と実態を綴った評論「フランスの愛書家たち」を併録。
魏の始祖曹操、竹林七賢の阮籍から書聖王羲之、画聖顧〓(がい)之まで、全1120条のエピソードで、640人余りの登場人物が語り出す。魏晋の時代の精神史を見事に伝える、多様なる機智の宝庫。
古代の浮彫に描かれた美女グラディーヴァ、彼女にとり憑かれた考古学者の妄想、夢うつつの青年は女の幻影を追ってポンペイの町をひたすら彷徨する。この小説に強く触発されたフロイトは、「W・イェンゼン『グラディーヴァ』における妄想と夢」を執筆、だが精神分析家による初の記念碑的な文学論は、対象との境界すら曖昧な危険で魅惑的なものだった。
「ないもの、あります」の看板を掲げ、麗しくも奇妙な品々を世に送り届けてきた、架空のお店にして本づくり工房=クラフト・エヴィング商會。アート、デザイン、文学が融合した商會初の棚卸し展覧会。
抗日運動、内戦、中華人民共和国誕生、文革、改革・開放、姦通、駆け落ち、死姦、身売りー激動の現代中国史を背景に繰り広げられる、八歳まで母乳しか受けつけずに育った混血男児・上官金童とその母、そして八人の姉たちの数奇・摩訶不思議な運命模様。
わたしの本のどれか一冊だけでわたしの文学の風格をお分かりになりたかったら、『豊乳肥臀』をお読みいただきたいー構想十年、執筆九十日。母の死後、一気呵成に書き上げられた、ノーベル文学賞作家渾身の大傑作。これぞ中国!これぞ文学!
乱世が生んだ機智縦横の中国的レトリックの精華。後漢末から東晋末(2世紀末〜5世紀初)、「清談」が流行し、竹林の七賢が現れる。エピソードの集積による魏晋の貴族・名士たちの逸話集。(全5巻)
アカ狩りがはびこりレイシズムとセクシズムの壮絶な暴力が横行する街。核戦争の恐怖に覆われた末世澆季、ハルマゲドンを預言する黒人カルト教祖の荘重な声が響き渡る…異常なまでの外見偏重とその裏返しの内面の歪み、肥大化した自我のケダモノと化した青年の破滅と現実への帰還を描く「カフカ的パルプ・フィクション」。ディック二十五歳の処女作。あまりの過激さゆえ長く筐底深く沈めることを余儀なくされ、死後四半世紀を経てようやく日の目をみた問題作。待望の日本語版。