出版社 : 彩流社
「台所の塩?汗?涙?それとも海水の塩?わたしが今までどんな種類の塩を舌で味わってきたか、わかりますか?」1920-30年代のパリ。ガートルードスタイン家の料理人となったベトナム男性ビンの見たものは。
贋作と本物とが交錯するパロディとしての騎士道物語! サラゴサからバルセロナへと偽者が本物のドン・キホーテの旅程を変えてしまう破天荒な旅。 「貧乏郷士アロンソ・キハーノすなわちドン・キホーテは、心根の極めて優しい温厚な性質の人物であって、彼を憎む者は誰もいない。言葉の端々にその人柄が窺え、作品の全体からそれがにじみ出している。狂った騎士の冒険を読み終えて、ドン・キホーテにほのかなりとも親しみと労(いたわ)りを感じていただければ幸いである。」(「『ドン・キホーテ』の背景とセルバンテス」)
謎。複雑。郷愁。怪異。そして、ふしぎな感動。日本のナボコフ、天才・川那辺薔による初の小説集。娘を失った父の悲しみ。大学をめぐる奇怪な出来事。近代批判に満ちた衝撃の問題作。表題作日本初アンチ(?)スカイツリー小説「空の木」ほか3篇所収。
みんなの愛情を一身に受けて育っていた末っ子の主人公キコに妹が出来た。すると以前のようにはかまってもらえなくなった。おりしもキコが釘を飲み込んだと勘違いしたママの早とちりから大騒動がもちあがる。キコの一日を時間に添って追いながら……。スペイン・モロッコ戦争を背景に、子どもと大人の眼を通して複雑な家庭問題と夫婦間の微妙な関係を描く、楽しくも悲しみに満ちた物語。スペイン文学のベストセラーの初訳!
チュニジアの首都チュニス。穏やかな兄ヤーシーンと、怒りんぼの妹アーイダ。それぞれの日々と、アーイダの恋を軸として描かれる現代の、そして古き良き時代の、人びとの生活や街の風景…。「幸せのかたち」が静かに、鮮やかに浮かび上がる。
時は清教徒革命から王政復古へいたる動乱期、 幽閉された伯父のもとへ、ひとりの若者が馬を駆るー ジョージ・エリオット14歳の筆になる、未完の歴史ロマンス。 作者のマリアン・エヴァンズ(1819-80)はのちに男性名のペンネームを用いて作家となり、小説(『サイラス・マーナー』『ミドルマーチ』など)、エッセイ・評論を執筆。「ジョージ・エリオット」という名はイギリス文学史に深く刻まれた。 本書では、第一部で『エドワード・ネヴィル』のテクストにC・アレグザンダー、J・マクマスター教授らによる詳細な解説を付した「ジュヴェニリア出版」版(オーストラリア)の翻訳を、第二部では『エドワード・ネヴィル』の主要登場人物のひとりヘンリー・マーテンと彼が生きた清教徒革命の時代、舞台となった場所などを詳しく紹介。大作家となる以前のひとりの少女の想像力と創作の過程を追う。 はじめに 第一部 『エドワード・ネヴィル』/マリアン・エヴァンズ著 ジュリエット・マクマスター他 編 はしがき ジュリエット・マクマスター 本文についての覚書 ボニー・ヘロン/タニア・スミス 『エドワード・ネヴィル』 マリアン・エヴァンズ(ジョージ・エリオット) 注解 ジュリエット・マクマスター 解説 ジュリエット・マクマスター 史的事実についての後記 タニア・スミス 引用文献および参考文献 第二部 『エドワード・ネヴィル』をめぐって/ 樋口陽子 著 第一章 『エドワード・ネヴィル』について 一 作者/二 未完の歴史ロマンス/三 ジュヴェニリア出版 第二章 副主人公ヘンリー・マーテン 一 親族/二 ヘンリー・マーテンと清教徒革命 第三章 ゆかりの地を訪ねて 一 チェプストウ教区教会とチェプストウ博物館 二 チェプストウ城とティンタン修道院/三 ピアスフィールド 四 ハンティンドン博物館/五 ケンブリッジ大学シドニー・サセックス・コレジ 参考書目 あとがき 年表
ノーベル文学賞の受賞に限りなく近いといわれたスペインの国民的作家ミゲル・デリーベスの「ナダル賞」受賞の長編! ミゲル・デリーベスは2010年3月12日、故郷バリャドリッドで亡くなった。スペイン国民はその死を悼み喪に服した。 本書は、デリーベスのデビュー作で、スペインの芥川賞とも言うべき「ナダル賞」受賞作品であり、デリーベスの生涯のテーマである「幼年時代への回想と死へのこだわり」が糸杉の影に託して色濃く投影された作品である。 第1部では孤児で育った主人公ペドロが同じく孤児の境遇にある12歳の親友を肺結核で失い、幼くしてすでに人生に深い虚無感を抱く過程が描かれる。 第2部では、少しでも俗世間を離れるべく船乗りの職業を選ぶのだが、ふとした機会に最愛の女性に巡り会う。人生を厭い、すべてに懐疑的なこれまでの生活を捨てて彼女の手を取り、希望の未来へ向けて歩み始めたばかりのところで身重の妻を交通事故であっけなく失ってしまった。ここに親友の死と最愛の妻の死とがひとつに重なって主人公を悲嘆のどん底へ突き落とすのだが、やがてそこから瞳をあげて明るい将来へ踏み出すまでの姿を描いている。
ノーベル賞候補のスペイン文学を代表する国民作家の記念碑的な作品! フランコ独裁政権下、作家として抵抗する作者デリーベスが、カスティーリャ地方の貧しい農村の描写を通して、その怒りを文学に昇華させたロングセラー!
『1984年』『動物農場』で舌鋒鋭く共産主義・全体主義の 矛盾を語ってきたオーウェルが、書店員の経験を元に、 窓辺に飾る鉢植えの「葉蘭」と「貧困」という現代的テーマで書いた、 意外に知られていない自伝的作品の新訳!
アイルランドが生んだ現代最高の短編作家と評価される トレヴァー円熟期の作品。 多弁を避け、行間ににじませる余韻によって 余すところなく登場人物の意識の動きを描き切る 作者独特の心理描写の手法で紡ぎだされた珠玉の12編。 アフター・レイン ●収録作品 ピアノ調律師の妻たち…鈴木 邦子 訳 ある友情…………………佐治 小枝子 訳 ティモシーの誕生日……神谷 明美 訳 子供の遊び………………鈴木 邦子 訳 小遣い稼ぎ………………神谷 明美 訳 アフターレイン…………神谷 明美 訳 未亡人姉妹………………鈴木 邦子 訳 ギルバートの母…………安藤 啓子 訳 馬鈴薯仲買人……………鈴木 邦子 訳 失われた地………………安藤 啓子 訳 一日………………………佐治 小枝子 訳 ダミアンとの結婚………安藤 啓子 訳 ウィリアム・トレヴァーについて トレヴァーの作品を訳して……………… あとがき
降霊術師を母にもったジャック・ロンドン…極北の自然を舞台にした『荒野の呼び声』『白い牙』の作家が、死の直前に描いた幻想に満ちた四編の初訳を含む五編で編む。
19世紀半ばのインドーー 大英帝国の植民地支配に反旗を翻したひとりの王妃がいた。 英国軍司令官は彼女をジャンヌ・ダルクにたとえ、「もっとも勇猛に戦った戦士」と褒め称えた。 インドの独立運動に大きな影響を与えた王妃ラクシュミーを描く歴史物語。 はじめにーー物語の背景 プロローグ 第1章 チャビリー 第2章 お転婆マヌ 第3章 縁談 第4章 結婚式 第5章 騎馬隊の結成 第6章 ジャンシー城 第7章 ヴァラナシー巡礼(1) 第8章 ヴァラナシー巡礼(2) 第9章 王子の誕生 第10章 国王逝く 第11章 王国没収 第12章 金髪のエリス 第13章 ラング弁護士 第14章 ハミルトン特使 第15章 牛の屠殺解禁 第16章 山賊サガール・シン 第17章 モチ・バイの冒険 第18章 不穏な動き 第19章 スケーンの危機 第20章 セポイの反乱 第21章 オルチャの侵攻 第22章 ローズ将軍の作戦 第23章 王妃の決断 第24章 ジャンシー攻防戦 第25章 月夜の脱出 第26章 総攻撃 第27章 作戦会議 第28章 クーンチの戦い 第29章 カルピー城 第30章 退却と転進 第31章 グヮリオール城 第32章 ヒンドスタンの明日の空へ エピローグ 日本の読者の皆さんへ 訳者あとがき 王妃ラクシュミー関連年表 《地図》一八五七年当時のインド/現在のインド 《主な用語解説》/《主な登場人物》 ■(社)日本図書館協会 選定図書 ■書評……井上貴子氏(大東文化大学教授・南アジア地域研究)〔北海道新聞(2008年12月7日)〕
人間はなぜ天から堕ちたのか。なぜこの地上で、苦しみの日々を送らねばならないのか。その謎を解くために詩人は魂に導かれ、宇宙へ、天国へと旅立つ。水晶の岸辺に神の御使の出迎えを受けた詩人は、天上の原と神の御座の偉観に心を奪われる。勧められるままに「記憶の泉」の水を飲む。そこで詩人のみたものは…。
極上のワインを求めて!フランス・ブルゴーニュから、隠れキリシタンが密かにワインを醸造する、トルコ・カッパドキア「月の谷間」へー。十字軍時代のひと味ちがった聖杯探求物語。