出版社 : 彩流社
毀誉褒貶の激しい評価を受け続けた『ヴィレット』とは!?『ジェイン・エア』に勝るとも劣らない名作との再評価が高まる作品の魅力に迫る。
主人公サラ・スュルタナの年齢は三十歳、東京でフランス語を教えている。物語は父が死に、サラがパリに帰るところから始まる。東京に戻った彼女は、父の死が引き金になって過食症に陥る。無気力、虚脱感、孤独感、不安、自己嫌悪、これらからの逃避、それが彼女にとっては食べることだ。…そしてサラは精神分析医の治療を受ける。そんなある日、彼女は東京日仏学院でリュカ・アルシンスキーと出逢う。
18世紀後半のアイルランドー政略結婚が渦巻く時代、ふたりの美しい貴婦人が自由を求めてウェールズに逃走した。高い教養を身につけたふたりは、“レイディーズ”と敬われ、“ノブレス・オブリージ”を体現した心豊かな生活を五十年間送る。自ら工夫した見事なインテリアで満たした住まい、数千にのぼる蔵書、表敬訪問に訪れる文人、政治家、貴族たち…。英国フェミニズムの黎明期に、地位と名誉を棄て、自立の夢を果たし、精神の貴婦人となった女性の物語。
1846年、ヴィクトリア朝を代表するふたりの詩人、ロバート・ブラウニングとエリザベス・バレット・ブラウニングがイタリアへ駆け落ちした。ブラウニング夫人の実在のメイド、エリザベス・ウィルソンは彼らとともに故国を離れ、イタリアで数奇な運命をたどることになるー。E.B.ブラウニングの伝記で王立協会文学賞を受賞したマーガレット・フォースターが、緻密な調査を基に、ヴィクトリア朝時代を活写。高名な詩人夫妻の素顔、越えられない階級間の溝ー困難な現実を乗り越えて成長していく女性の姿を見事な筆致で描いた名作。
“魔性の女”ズィーニアの正体は?──人生を弄ばれた、三人の女性に執拗に取り憑くズィーニアの影が、再び三人を危機に追い込む。その結末は……。 ──アトウッド自身「自分の作品の中でも、いちばん翻訳しにくいかもしれない」という翻訳者泣かせの労苦にもかかわらずやってこられたのは、作品の面白さである。アトウッドの手法はユニークである。推理小説ではないが、次に話がどう展開するのだろうか、と読者を先に急かせるサスペンスがある。読み手側がこうなるのではないか、と思いながらもとんでもないどんでん返しがある。結末についてはなかなか分からない。エンターテイメント的要素もあるが、心理描写はさすがで、哲学もあり、知的小説である。暗いテーマを扱いながらも、辛味の効いたウイットとユーモアで軽みをだす。さすがである。彼女の中では物語が枯渇するということがないのではないかと思う。(「訳者あとがき」より)