出版社 : 彩流社
いま、最も注目を集めているポルトガルを代表するノーベル賞作家サラマーゴが、詩人フェルナンド・ペソアの「異名」リカルド・レイスを主人公に、句点の少ない独特の文体で、暗い歴史の転換点ーーリスボンの1936年を描く問題の歴史心理小説!/「数あるサラマーゴの作品のうちでも特にこの小説に心惹かれたのは、リスボンへのサウダーデによるのかもしれません。小説や文献を読むときには地図を片手にという長年の習慣から、私にとっては、リスボンの町がふるさとのようになつかしいものになってしまっているようです。『リカルド・レイスの死の年』は、政治小説とも恋物語とも、いろいろな読み方が可能ですが、リスボンという町なしには成り立ち得なかったであろう小説と言えましょう。」(訳者あとがき)
“魔性の女”ズィーニアの正体は?──人生を弄ばれた、三人の女性に執拗に取り憑くズィーニアの影が、再び三人を危機に追い込む。その結末は……。 ──アトウッド自身「自分の作品の中でも、いちばん翻訳しにくいかもしれない」という翻訳者泣かせの労苦にもかかわらずやってこられたのは、作品の面白さである。アトウッドの手法はユニークである。推理小説ではないが、次に話がどう展開するのだろうか、と読者を先に急かせるサスペンスがある。読み手側がこうなるのではないか、と思いながらもとんでもないどんでん返しがある。結末についてはなかなか分からない。エンターテイメント的要素もあるが、心理描写はさすがで、哲学もあり、知的小説である。暗いテーマを扱いながらも、辛味の効いたウイットとユーモアで軽みをだす。さすがである。彼女の中では物語が枯渇するということがないのではないかと思う。(「訳者あとがき」より)
ポルトガル語圏初のノーベル賞作家が独自の文体で描く異色作。孤独な戸籍係の奇妙な探求を通して、人間の尊厳を失った名も無き人の復活劇を描く! ●『あらゆる名前』は一見、この上なくシンプルなプロットの動きの少ない小説である。しかし、そのなかにはカフカに通じる官僚化する現代社会を見つめる視点や、人間と人間との関係について、そして背景には、やはり歴史的につくられたポルトガルの風景や言葉などがある。あるいは、あるひとりの人を追い求め人間の心の内を心理学的コンテクストで読むこともできるし、他人を求める人間という視点から、他者あっての自分を考える材料ともなり、ひとつひとつの出来事を社会学的視点から解読していくことも、また全体を包括する広い宇宙という観点から哲学的に楽しむこともできる。聞き手がどのような方向から、どのような距離からアプローチしても相応に答えてくれる小説と言える。
死んだはずの“魔性の女”が再び現れた…… かつて彼女に振り回された苦い経験を持つ三人の中年女性が、若き日を回想しながら新たなる人生の危機に立ち向かう。鋭い時代感覚で照射する80年代カナダの肖像。ミステリー仕立ての知的エンターテイメント。ブッカー賞受賞作家の長編小説!
「幼ない時」の思い出、青春時代、祖国、そして父母 ……日常のなかに見え隠れする在日二世世代の光と影”を映す。 収録作品 ●幼ない時 ●北の恋人 ●父 母 ●長白 ●初老の男 ●ある三男の結婚 ●プライド ●丁 一 ●Fのこと ●永井の記憶 ●幸一の決心 ●和男の失恋 ●一浩と弘子 ●和美の場合 ●真 希 ●酒飲みOL ●李少年
「狐」「人形」「てんとう虫」という三つの愛らしいシンボルに秘められた、男女のすさまじい葛藤を描く愛の三態。天才作家ロレンスの傑作三編を、『ロレンス全集』の決定版ともいえるケンブリッジ版をもとに編む本邦初の書! 「狐」…狐に魅せられた女の自己喪失の物語。主人公が完全犯罪をねらって男性の殺害を企て る後半のシーンは、雑誌掲載後につけ加えられたものとして有名である。 「大尉の人形」…愛人の人形を作ったばかりに、その人形ともども数奇な運命をたどること になるヒロイン、ハネリの運命は……。 「てんとう虫」…てんとう虫をかたどった指貫から、伯爵夫人の想像力は果てしなく拡がって いく。愛人、そして夫……。旧版では欠落があった原稿が復元された本邦初訳。
ブラジル「発見」500年、記念出版!“ヴェルデーアマレーロ”原生林と黄金の国をグローバルに理解するために、500年にわたる文学事象を、文化、社会、政治等の視座から通観する本邦初の画期的な文学事典。
少年の息づかいが聞こえてくる、山村での甘酸っぱく、ほろ苦い青春、そして日々の生活。ベストセラー作家が描く文学史にのこる“スペイン版スタンド・バイ・ミー”。--「この小説はドン・キホーテ以来受け継いできたスペイン文学の伝統を引き継いだものである。主人公に立身出世を望む父。その主人公も金持ちの娘ミカに憧れ、年が十も違うのに結婚さえ望む。これらを理想主義の象徴とすれば、この村に止まり、ガキ大将ローケの下に庇護されて、楽しく子供として過ごし、やがてはソバカスだらけのウカ・ウカをお嫁さんにしようか、という現実主義、この二つが主人公の心の中で絶えず戦いながら、最後にウカ・ウカによって、現実主義と理想主義の統一を暗示する構成になっている。また、悪童三人組が繰り広げるいたずらの数々、ガキ大将ケーロの逞しさはピカレスク小説の祖『ラサリーリョ・デ・トルメスの生涯』を彷彿させるものがある。」(訳者あとがき)
フォークナーに繋がる黒人問題を最初に扱った先駆的作家が、クレオール文化の花咲くアメリカ南部を描く激動のドラマ。クレオール問題を知るための古典的名著ー 。ながらくフランスやスペインの植民地だった南部のルイジアナは、1803年、ナポレオンのフランスからアメリカが買収した土地だった。したがってアングロ系文化とは異質のヨーロッパ風ラテン文化に、奴隷として連れてこられたアフリカ系アメリカ人が持ち込んだ文化が影響しあい、ほかの地域では見られない独特のクレオール文化が花開いたのである…。
ロシアの百科全書派チュルコフによる女性版ピカレスク・ロマン「可愛い料理女」、 夭折の詩人スシコフの「ロシアのウエルテル」、 文豪カラムジンの名作「哀れなリーザ」等、全5篇。 ロシア心理小説の源流を訪ねる懇切な解題を付す。 Пригожая повариха, или Похождение развратной женщины (Мнхаил Дмитриевич Чулков) Колин и Лиза () Российский Вертер (Михаил Васильевич Сушков) Остров Боригольм (Николай Михайлович Карамзин) Бедная Лиза (Николай Михайлович Карамзин) 可愛い料理女 または放蕩女の遍歴譚・・・・・・ミハイル・チュルコフ コーリンとリーザ 物語・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・作者不詳 ロシアのウェルテル 半ば真実の物語・・・・・・・ミハイル・スシコフ ボルンホルム島・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ニコライ・カラムジン 哀れなリーザ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ニコライ・カラムジン 訳註 解題 あとがき
カナダは移民の国だ。時代や地域によってそこに移り住んだ人々は異なる。本書は、マニトバ州出身の作者が、教員経験を活かして書いた中篇連作。移民の子供たちの物語を通して、過去が豊穣に蘇り、個人的な体験が普遍的価値に昇華されている名作。
愛の悲喜劇を完璧な筆致で描く英国不倫小説の極致!それは恋なのか、臓腑をえぐる欲望なのか?ロレンス、ジョイスなど20世紀を代表する作家を世に送り出した名編集者にして英国モダニズムの巨人、本邦初登場。