出版社 : 彩流社
喧嘩じゃ勝てない、得意な科目なんてない、将来やりたいことも、別にない…どうしようもなく流されて生きるやせっぽっちの少年、ビリー。彼のまなざしは「ケス」と名づけた鷹とともに空高くー。名匠ケン・ローチ監督の最高傑作『ケス』-イギリス版「大人は判ってくれない」の原作、本邦初訳。
『イギリス人の患者』の作者が、故郷スリランカに取材して書き上げた自伝的作品。忘れがたい人々、意表をつくエピソードの数々が熱帯の風景とともに鮮やかに蘇る。そして亡き父の面影を追い求める彼が発見したものは…。ポストコロニアル文学の傑作。
『シャーロット・ブロンテの生涯』の著者として有名なイギリスの女流作家の恋愛長編小説の本邦初訳。19世紀のイギリスの漁港を舞台に「真実の愛とは何か」をキリスト教信仰と「海の永遠性」とを絡めて描く。100頁の詳細な解説付。
31年間日本に住み、徳島の地に果てたポルトガルの文豪が三人の友人(ロドリゲス、アルブケルケ、カンポス)と交わした私信の本邦初訳。モラエスが神戸領事に就任した経緯、マカオに残した妻子のこと、徳島隠棲の理由など赤裸々に綴る。
社交界のスノビズムを嫌悪し、片田舎の城館に若くして隠棲するトニィ。平穏な日々をおくる彼はしかし、美しい妻の心が次第に自分から離れて行くのを知らなかった…。息子の死をきっかけに知る妻の情事、館を去る彼女、離婚の手続きのために今度は彼が演じる浮気の芝居ー物語は急展開し、トニィはアマゾンの奥地へ向う探検行へ。そして熱病にかかり死線をさまよった彼を待ち受けていたのは、奇怪なディケンズ狂の老人だった…。「美しい郷愁の世界」と醜い現実とのはざまで、心ならずも悲しきファルスを演じるはめになる主人公に、個性ゆたかな脇役たちを配し、緻密な文体で描いた、イーヴリン・ウォーの最高傑作を、清新な翻訳でおくる。アメリカの雑誌連載時の「もうひとつの結末」を付した。
ハックは「アダム」、トムは「蛇」か。自由を求めてミシシッピを下るハックとジムー行く手を阻む「蛇」(トム)。ハックの冒険に「神話」世界を浮かび上がらせる作品論。
幼くして日光山に入門し、僧侶としての修行を積むも、性の目覚めとともに不邪淫戒を破って破門。山岳修験者として各地を巡るうち忠次と出会う。やがて江戸に出た円蔵は、斎藤弥九郎の練兵館で剣術と四書五経を学び、黒船来航に揺れる時代の風にふれる。一方、忠次は大前田栄五郎の下でヤクザ修行をし、故郷の上州で忠次一家を名乗っていた。幕吏に追われる忠次が籠もる赤城山に立ち寄った円蔵は忠次一家の軍師として迎えられる…。迫り来る新時代の波に押されて幕府は忠次を捕縛、処刑する。円蔵は、その後長崎に出向き、シーボルトに医学を学び、栃木県初の歯科医として明治九年まで貧しい人たちの治療に当たった。『侠客有名鏡』に西の前頭八枚目にランクされた円蔵の知られざる生涯。
スペイン語圏で多くの読者をもつデリーベスの最新作。独裁者フランコの死を前に騒然とした空気に包まれたカスティリャの小都市で、つつましい生活を送る画家が、亡き妻の思い出を娘に語りかける悲哀に満ちた物語。
“ソクラテスになったマーク・トウェイン”。老人と若者との対話形式で、近代社会を支える人間存在を、自らの欲望で動く「機械」にすぎないと断言するパラドックス的人間論。作者晩年の代表作でペシミズムの影が現れた哲学的な作品。
19世紀スペインの生んだ天才詩人の描く幻想的な世界の物語。兄を殺して王になった弟の手から血の色が消えない…。破壊の神シヴァと救済の神ヴィシュヌの争いを背景に、贖罪の旅に出るインドの王と恋人。愛、情熱、勇気、恐怖……。
迫りくるファシズムと戦争の跫音を逃れ、故郷への道を急ぐ男の脳裡には、少年の日、秘密の池で見つけた巨大な魚の影がおどる。-しかし、何もかも〈ピカピカ、ツヤツヤ、スマート〉なこの時代に、変り果てた町で見たものは…一人の中年サラリーマンのささやかなオデッセイを通して鮮やかに描かれる、〈普通の人〉の生の軌跡。1930年代に早くも、20世紀末の状況を的確に予見していたオーウェルの傑作長篇小説。
ヴェトナムで被弾した背中をガールフレンドとの交渉中にも決して見せない帰還兵、オルガスムが得られぬまま自分のからだを男たちに与え続ける「私」。60年代の昂揚の去った後、喪失の世代の哀しみの群声が、抑制された文章でつづられる。
「おヨネとコハル」「徳島の盆踊り」などで知られるポルトガル人作家モラエスが1910年(明治43年)から1928年(昭和3年)まで、本国にいる妹フランシスカへ書き送った書簡。当時日本で大流行した絵葉書付。(カラー多数)