出版社 : 徳間書店
高貴なる血を受け継ぐディアナ。白い花の館で、狂気の中で生きるディアナ。彼女の息子である、将軍リュドーサ-ムール5世-が戦死した。カトゥサ、26歳の時であった。彼もまた、父こそ違うがディアナの子。出生の秘密ゆえに王への道ではなく、大神官への道を選んでいた。しかし、運命の血は、それを許さなかった。将軍カトゥサ-ムール6世-。〈運命〉は流れ出したのだ。王となるための…。数奇な運命を歩んだディアナ、ムール帝国の始祖、カトゥサ・ディア・ムール。その若き日の苦悩と悲劇を描く壮大な物語。
「あなたの子供ヨ」平沢美樹の目の前に、15歳の香織とその父、ちょんまげ頭の哲哉、そして3カ月になる赤ん坊が。1年前、美樹が大学4年のことである。おかげで就職は失敗、義父、哲哉の探偵事務所を手伝う羽目に…。今日は、親友の蕪木に頼まれたスージーの子守りのため、エミリントン夫人宅にいる。そこへ突然!スージーは連れ去られ、ムスクの香りがあとに残った。翌朝、エミリントン夫人は死体に、さらに蕪木は行方不明。美樹は、彼女がメンバーだったという秘密クラブに女装して潜入した。そこでは、信じられない光景が!
維新の激動まだ鎮まらぬ明治11年。かつて海道一の親分と謳われた清水の次郎長もすでに老境、汽船会社や英語塾の開設に奔走していた。ある日、山岡鉄舟の紹介で寄宿した男、のちに「東海遊侠伝」で次郎長の名を広めた青年天田五郎。老ヤクザの親分と新時代の青年、この二人に持ち込まれる怪事件の数々。名推理でさばく絶妙のコンビが、明治の人情世情を鮮やかに浮き彫りにする傑作推理。
永田町・首相官邸。20W電球の下で火鉢を囲み、密談を交わす老人二人。何を隠そう、エネルギー危機に策もなく、米国にもアラブにも見放された首相と官房長官なのだ。藁にも縋りたい二人は、ついに久留田博士のおならエネルギー開発に縋ってしまった。久留田理論とは?へ理屈ではない!これぞ、ヨコジュンの妄想が紡ぐ魔訶不思議の異郷だ…表題作他、究極のSF世界を展く空前絶後の7篇を収録。
大人の玩具の新製品開発に没頭する初老の男、その実験台になってやる30過ぎた踊り子、出稼ぎに来てバーの女と失踪した父親、親元に子供を預け、パートで貯めた大金を芝居一座の花形に入れ揚げた母親。通天閣を見上げる猥雑の街では、ネオンが溢れ、安アパートがひしめき、騒音と塵芥の渦の底で、人生の長い影を引きずる男と女が、陽だまりに群れている…。ほろ苦くも物哀しい男と女の物語7篇。
海原投資研究会の主幹・海原大介には、かつて業界最大手・大田黒証券に在職中、K電機とY建設株の暴落から顧客に恨みを買い、妻子を焼殺された辛い過去があった。事件後、退職した海原は自棄の生活を送っていたが、ふと飲み屋で手にした証券新聞でその二つの株の値上がりを知り、自分の読みの正しさを確信、再び“現代最高の戦場”兜町へと勇躍、戦いを挑むのだった。株式投機の裏面を活写する長篇経済小説。
サンディエゴで開かれた大会に全米の探偵たちが大集合。“名無し”も、彼を父親のように慕う女探偵シャロン・マコーンも参加したが、何と会場となったホテルで墜死事件が発生した。目撃した“名無し”はシャロンとコンビを組んでさっそく事件の究明に乗りだした。だが、新たな事件が次々と起こり、危険な罠が二人を待ち受けていた。危機一髪の窮地を脱せるか…。新コンビによるミステリー・サスペンス長篇。
浅見光彦は母親の雪江のお伴で兵庫県の城崎温泉を訪れた。彼には但馬に残る土蜘蛛伝説の取材もあり、郷土史家の安里家を訪ねたが孫の利昌が応対に出て、何の成果も得られない。翌日光彦は、レンタカーで母親と出石へ行く途中、かつて金の先物取引の詐欺事件で有名な保全投資協会の幽霊ビルで、3人目の死者が出た事件に遭遇する。警察では3人共自殺としたが、彼の勘では他殺である。そこで第1の死者、水野を調べ始めた光彦は、出石焼の作陶家の娘、矢沢まゆ子と再会-思いがけず但島伝説と殺人事件を繋ぐ接点に…。
公安調査官・加下千里が、羽田空港入管ゲートで知りあった中国服の美女に誘われて入った中華料理店に、すでにこと切れた男が転がっていた。加下を嘲笑うかのように、口紅で書かれた「李大福死刑」の五文字が、男の胸で躍っていた。香港・東京を結ぶ麻薬密輸ルートを求め組織に潜りこんだ加下の前で、次々と消される男たち…非情の世界を軽快なタッチで描く好評シリーズ。長篇推理。
不動産業で財を成した大沢円次郎の長女良江は、夫・英夫との第二のハネムーンで何者かに殺害された。英夫は愛人をつくって円次郎の不興を買っており、この旅行はその改心の証しだった。犯人は良江の死体を車に積んだまま事故死した元愛人と見られたが、良江の妹・沙織は不審を抱き、大学の同級生・飛田雄介とともに事件解明に乗り出し、英夫のアリバイ崩しに挑むのだが…。長篇トラベル・ミステリー。
牧村幸二は“航宙刺激ホルモン”を分泌し、数百光年を一瞬にして跳躍する輸送手段“非対称航行”を可能にする唯一の存在“脳”だ。“ブレイン”は無数のクーロン脳“ブレイン”を生みだし、ついには虚空間に棲む“鏡人(M)=狂人(M)”を生むに至った。そして、M・Mと空間と虚空間を自由に行き来できる“悪魔憑き”たちとの、時空を超えた戦いが始まったのだ…!究極のSF巨篇、待望の第二弾。
不審な浪人が出入りする空屋敷を襲った鞍馬天狗は、だが、床下に仕掛けられた爆薬からからくも逃れ、相次ぐ浪人殺害の下手人を追った。一方、弟・差竹主水正殺害犯人を追う春日井右京までが狙撃され、父と伯父の仇を追う佐竹恵之助。一味の姿を求めて踏みこんだ信州路だが、そこにはすでに鞍馬天狗の姿があった…。浪士殺害の黒幕の正体は?その狙いは?傑作時代長篇完結篇。
グレート・ウェスタン保険会社の支払調査部長から、〈私〉に、焼死事件の調査依頼が舞いこんだ。かつてはゴールド・ラッシュに沸き、今やゴースト・タウンと化した町マスケット・クリークを観光地にしようと目論む〈ノーザン開発〉の社長宅の火事で、当の社長が焼死したのだ。失火か、それとも放火か。ところが調査開始早々、第二の事件発生で、事は厄介な方向に…。“名無しの探偵(ネイムレス・オプ)”シリーズ最新作。
雨の降りつづく四月の夜。ポートランドのちっぽけなバー〈ミル〉。その薄汚れた店で悪夢のような事件が起こった。若い娘サラが酔客たちの生けにえになったのだ。さっそく、この事件は警察に通報され、美貌で野心満々のキャサリンが担当検事補に任ぜられた。迫真の法廷シーン、執拗なキャサリンの捜査、揺れ動くサラの心ー人気女優ジョディ・フォスターとケリー・マクギリスが火花を散らす大作の小説化。
時効-このスリリングな限界に挑戦した著者会心の一千枚に及ぶ大長篇ミステリー。戦後日本を揺がした「60年安保」。右翼少年が起した暗殺計画が、15年の歳月を経て殺人事件に発展する…。
2月12日、福島県郡山の山林で発見された女性の他殺死体と、その3日後に福井県九頭竜湖“夢の架け橋”爆破の際にみつかった損傷者らしい死体が、どちらも森口麻衣子と断定された。報告をうけた鉄道警察の高杉春雄警視は、〈北斗星5号〉に彼女と同乗していたとみられる菅野祐子についての情報収集に乗りだした時、今度は徳島県の小鳴門橋爆破され、JR新四国あて、犯行声明と瀬戸大橋爆破予告の脅迫状が届いた。高杉はこの事件と先の2県は繋がってると直感した。犯行の動機と2県の女性死体は何を意味するのか?