出版社 : 徳間書店
王串ミドロ、三十三歳。声優としてもぱっとせず、お笑い芸人としても無名。だが年末のマンザイ・グランプリで優勝すれば、どんなに無名でもキャリアがなくても、一夜にしてスターになれる!こうして漫才コンビ“ゼロワン”は、マングラの頂点を目指し、悩みながらも奮闘を開始。頼りなくも健気で熱心な若き相方零、圧倒的な人気と実力を誇るライバル“クロエ”、自由奔放な恋人マドカらの存在を糧に、芸人・王串は自分の笑いを形づくろうとする。零の兄で不慮の死を遂げたかつての相方壱が、王串の作るネタに落とす影とは…。笑って泣けて元気の出る、青春小説の傑作!
ポンポコッ!と変化の呪文を唱えて、化け物に姿を変えれば、人間を脅かして食べ物を手に入れられる。でもおいらは江戸の町で独りぼっち。そんな化け狸のぽん太に、人間の友達ができた。けれども彼女は…。大切なものを守るため、ぽん太は稲亭にむかう。「おいらを買ってください」-事情を聞いた夜ノ介は驚きの提案をする。妖怪たちから「最近、影が薄い」と評判の刀弥に、幸あれ!書下し。
女性の変死体が、密室で見つかった。“第二捜査官”の異名をとる神村の推理は…(安東能明「密室の戦犯」)。「女を捜してほしい」暴力団の若頭補佐が頼み込んできた。刑事の米沢は札束を受け取り…(深町秋生「卑怯者の流儀」)。-悪事を隠蔽しようとする者、嗅覚と執念でそれを追う者。混沌とした世界の中で、思いも寄らぬ真実が焙り出される。注目の作家たちが紡ぎだす、警察小説傑作集。
将軍御成に備え、市中警備のため高積見廻り同心の手伝いを命じられた一ノ瀬金吾。通りがかりの荷車の轍が深く沈みすぎていることに不審を抱く。鉄砲の抜け荷と睨んだ金吾は、軽業を得意とするお恵を使って荷車の行方を探らせる。小網町の問屋の蔵へと運び込まれた荷の中身は、鉄砲ではなく小判、それも新品だった。意外な荷の背後には大きな陰謀が横たわっていた。書下し長篇時代小説。
「俺、店を出すぞ」ある日、自称・ツイてる養鶏農家の村田二郎が、村おこしに立ち上がった。その店とは、世界初の卵かけご飯専門店。しかも、食事代はタダ、立地は限界集落の森の中、とあまりに無謀。もちろん村の仲間は大反対だ。それでも二郎は養鶏場を担保に、人生を賭けた大勝負に出てしまう。はたして、過疎の村に奇跡は起きるのか? 食べる喜び、生きる素晴らしさに溢れたハートフルコメディ。
十年前、陽一の母とユカリの父が結婚し、二人は兄妹になったが、五年前に両親は他界。中三のユカリは義母のレシピ帳を参考に料理し、陽一は仕事で生活費を稼ぎ、支えあいながらの二人暮らし。ある日、庭先に猫が現れる。二人は猫を飼い主らしき人へ届けに行くのだがーー。のんびり屋の兄と、しっかり者の妹が織りなす、陽の光差すような、猫もまどろむほのぼのあったかストーリー。
幼少時に海外で行方不明となった経緯から、非常時における冷静さ残酷さ、常人離れした危機回避能力を得た小日向純也。現在、そんな彼は警察庁のキャリアとしての道を歩んでいた。しかし、ある日、純也が思いを寄せる木内夕佳が何者かに殺されてしまう。背後にちらつくのは新興宗教〈天敬会〉と女性斡旋業〈カフェ〉。真相を探ろうと奔走する純也だったが、事態は思わぬ方向へと展開し……。警察小説のニューヒーロー誕生!
その病に、理由ありーー。妊娠したという幼い娘が持参した丸薬の秘密。薬種屋の主が、仕入れの旅に出ないと言い出した理由。どんな薬を煎じても一向に治らない咳病とは……。京都・鷹ヶ峰で幕府直轄の薬草園を営む藤林家で養われた女薬師・元岡真葛が、薬草を通じて隠れた悩みを解きほぐす。『若冲』の著者が贈る、心に沁みる絶品時代小説。
二十七歳のOL早水深雪は、清楚な美貌の持ち主。模範的な社員として上司や同僚から信用されている。しかしその姿は仮のもの。本当の深雪は、出張SM嬢として、サディストの男たちに嬲られる仕事をしていた。金のためでなく、快楽のため、彼女は鞭で打たれ続ける。そんな深雪にも、伊吹浩介という恋人が出来た。浩介は深雪にプロポーズをするが、深雪の心は揺れ動く。わたしは、結婚してはいけない人間。きっと浩介を不幸にしてしまうーー。
かわら版は江戸時代の新聞であり、その記者を当時は矢立屋と呼んだ。寺子屋師範にして矢立屋の顔も持つ柿江新平太は、お上の許可を得ずに出版するもぐりのかわら版専門。大ネタであればあるほどよく売れるのだが、ネタに鼻が利く性分ゆえに、次々と事件に巻き込まれてしまい…。市井の人々との温かな交流とともに、泥棒、殺人という江戸の闇までをも描く、新感覚時代ミステリー!
地井邦夫は浮気調査専門の私立探偵。つかんだ証拠で浮気夫から金を強請る。そのうえ依頼主である妻には気晴らしの浮気を焚きつけ、風俗に沈めて上前をはねる…。依頼者たちをとことん食い物にし、破滅の淵に突き落とすのだ。阿漕に稼ぐ悪徳探偵の金の行き先は、二十も年の離れた女子大生仲村美園だった。昼間は天使、夜のベッドでは高級娼婦のような美園に、地井は魅入られていた…。草凪エロス&ノワールの到達点。
父は盗賊に惨殺され、母は妖しい笑みを浮かべながら盗賊とともに家を飛び出した…。お琴は、七歳のときの悪夢のような出来事を今でも忘れられずにいる。尾張屋の主・宗因たちが招かれたある祝言に、角倉屋敷の台所働きをしているお琴も手伝いにいくことに。そんな晴れやかな夜、怪しい足音が…。悪夢から十一年後、明らかになる事件の真相とは一体ー。大好評の連作シリーズ第八弾!
雷獣クロスケの姿が見えない。え、家出!?その原因は、「おめえだよ、刀弥」-。誤解が誤解を生み、いじけたクロスケが“疫病神”と恋におちてしまって、さあ大変!大きな揺れとともに謎の灰が降ってきて、江戸中みんなが寝込んでしまう大ピンチ。“疫病神”と雷獣、最強最悪の組み合わせに立ち向かうのは、唯一元気な妖怪改方の冬坂刀弥。お江戸を、統子を、そしてクロスケを救えるのか。
信州上田城にて徳川家康に反旗を翻した真田昌幸・幸村親子は、直江兼続、前田慶次郎とともに三河勢を見事撃退した。家康に惨敗し続けた羽柴秀吉は、捲土重来、岡崎・刈谷攻めの両面作戦に打って出る。手薄の三河勢の隙を突き、真田は諏訪に進撃する!一方、秀吉の不興を買う希代の軍師黒田官兵衛は、反秀吉の策謀に蠢くのだった。戦国の英傑たちが激突する怒涛の合戦シミュレーション!
数百人の士卒がむらがっていた。「幸村殿のもとで死なば、このうえのしあわせはない」との想いが胸中にたぎっていた。寄せ集めの牢人で編成した真田隊だったが、一万の伊達隊を圧倒しつづけた。めまぐるしく進退を繰り返し、わずかな乱れを見逃さずつけこんでゆく。目の当たりにした政宗は鳥肌を立てた。「やはり幸村は怪物だっちゃ。真田の赤武者はもう見たくねえ」。合戦小説の精華!
真田の郷の故地を回復する悲願のために、信州善光寺の商人・次郎三郎は上杉家に身を寄せていたが、信虎追放後の武田晴信(信玄)と、道鬼坊こと山本勘助を通じて結びつくことになる。信濃に再び戦雲渦巻くなかで、駒を操る滋野の一党を糾合し、知謀を尽くして奮戦していた。後に大坂方の知将として知られる真田幸村の祖父・真田幸綱の活躍。名門真田家のルーツに迫る戦国大河がここに!
父との確執、妹への思い、娘に対する後悔、甥との戦。豊臣、徳川、上杉、伊達が躍動する戦国乱世。男は苦しみ、夢をみた。羽州を豊かに。家臣に太平を。歴史小説界の麒麟児が最上義光を活写する!
「島流し」とさえ言われる、雪降りしきる陣屋で…勘定、検見や郷まわり、仕事に忙殺される鉄之助。着物や白粉、紅を買う余裕のない妻、紀久。桑名に子を残し、遠く越後に赴任してきた夫婦はふるさと帰参の願いを梅に託す。望郷の念が胸を衝く、至高の時代小説!