出版社 : 徳間書店
「ゑびすだァ、ゑびすじゃねぇか」やつがれは、同町内の古株刑事・広田勘蔵を誘って、ケイヅ釣に行った。釣り上げたのが、正真正銘のゑびすの土佐衛門だった。水死体は白い狩衣をまとい、大きな黒鯛を抱えこんで、七福神のゑびすそのものだった。水死体の身元が割れた。兄が見つかったのだ。兄は色黒で大黒天とそっくりの恰好の闇米屋だ…(「ゑびす殺し」)。他、著者の博引旁証の奇想世界作品集。
京都の旅荘〈八十八〉の客室で高名な写真家新門寿久が刺殺された。同伴のクラブママ由美が入浴中の出来事だった。手掛りは現場に落ちていた芥川龍之介「羅生門」の文庫本と“らしょうもんかずら”のしおり。ベル旅行社のツアーコンダクターで、〈八十八〉で旅館業務を研修中の夏木梨香は、旅行評論家の姉・香奈を通じて警視庁の小早川警視正に相談する。が、伊豆蓮台寺で第二の殺人が…。長篇本格推理。
NYの宝石商《ヘリテージ・ギャラリー》に勤める美女タラ・アルヴァラード。彼女は1150万ドル相当の12個のダイアモンドを盗む計画をかつての悪友に持ちかけられ、警察に通報する。捜査に乗り出したのはNY市警のリトル・ジョン・ローリングズ刑事とブレンダン・トマス刑事。水も漏らさぬ警備態勢の中、12個の宝石はきれいに盗まれてしまう。誰が、どうやって。お酒落なマンハッタン・ミステリー。
縄田一男氏をして「逸品との心踊る邂逅。剣の修羅場を通して瞬時にして結ばれる高誼を、実に巧みに、そして確実に描いている」と評させた宮本昌孝。続刊を心待ちされた第二巻も、期待に違わず気合の篭った作品に仕上った。多言は無用。義輝の雄渾孤高の旅へいざ。
1995年11月23日の感謝祭当日、三沢・横田・厚木の米軍基地を、完全武装の自衛隊が突然襲撃、無血占領した。米国の経済的報復措置や、核燃料処理施設への米軍機墜落などに業を煮やした日本政府が、基地返還を求めて起こした行動であった。一方、奪還を宣言した米国は、先制攻撃でステルス爆撃機B-2から対地ミサイルを放つが、国産VTOL艦上戦闘機「海燕」によって撃墜されてしまう…。
日米経済界トップが和平工作に奔走する最中、米軍第7艦隊が政治的事情で日本の防衛ラインを強行突破した。無弾頭の対艦ミサイルでこれを迎え撃ち、米軍のイージス艦、空母「インディペンデンス」のほか、数多くを葬り去った自衛隊だったが、その腹中は両軍の被害を最小限に止めることと、戦争の政治的解決にあった。しかし、徒に時を費やす頑迷な両国首脳のために、戦局は最悪な方式へと進んでいく…。
変転きわまりない戦乱の世に、満々たる野望と闘志で天下を窺い、京へ上る野武士の一団があった。満身創痍の豪放な武士・中西太兵衛、その太兵衛に兄事を誓った美丈夫・豊田小隼人を先頭に、同道を願い出た牢人達がつづく。時は永禄元年、織田信長二十五歳、徳川家康十七歳、上杉謙信二十九歳の頃である。名将ひしめく戦国時代の歴史を塗替えたかも知れぬ男達の数奇なる運命を描く本格的長篇時代小説。
“太平洋一年戦争”のミッドウェー海戦で、大勝利をおさめた日本は、連合国側と対等な講和を結んだ。戦後の大不況で東北地方を中心にソ連の支援を受けた革命勢力は、東京都の東半分と茨城県、埼玉県から北に東日本共和国を建国し、西日本帝国と対峙した。-1998年12月、西日本帝国海軍中尉・愛月有理砂は非常呼集で、三宅島沖の母艦〈赤城〉に運ばれ、内容も知らされず出撃した。
柳生石舟斎に討たれた影丸、霧丸の忘れ形見萩丸は、肥前唐津で成人した。長ずるにつれ剣の奥義極め、やがて柳生の里へ。だが宿敵石舟斎はすでに他界。萩丸の怨情は嫡子宗矩に向けられた。江戸へ出た萩丸は、二代将軍秀忠の剣術指南を務める宗矩に、果たし合いを挑んだ。柳生新陰流の一閃に、萩丸の秘剣〈松の葉〉は…。