出版社 : 文藝春秋
レイは故郷に戻ってきた。TV脚本家としての名声を捨て、生まれ育った団地の町に貢献するために。貧困と荒廃に覆われた町のハイスクールで、レイは講師をはじめる。少しずつ生徒たちとの交流も深まってきた頃ー何者かが彼の頭を殴打し、瀕死の重傷を負わせた。だがレイは警察に犯人の名を明かさない。捜査を担当することになった刑事ネリーズは、レイの幼なじみだった。献身的に町のために尽くしてきたレイは何を隠しているのか?ネリーズの捜査が、レイに関わった人びとそれぞれの物語を引き出してゆく…それはひとつひとつが悲しく、あるいは暖かく、そして何より彼らにとってかけがえのない物語だ。その果てに明かされる真相。善行をなそうとした男を見舞った悲劇の理由。スティーブン・キング、エルモア・レナードら、小説巧者たちが絶賛の声を惜しまない感動の大作。痛ましい現実に満ちた世界のなかで、しかし希望の光が最後に灯される。
兄弟を殺害して即位した君主を処刑するために、わが子をも欺いて死なせた衛の石〓(さく)、叛乱で父を亡くしながらも速やかに君主を救い、後に中国史上初の成文法を作った鄭の国僑(子産)、楚王に復〓(しゅう)するために呉に仕え、呉王を霸者にした伍員(伍子胥)など、移りゆく国勢と王室の動乱に揉まれながら、国をたすけた名臣二十人の軌跡。
アパレルメーカー新入社員の仲江翠は、入社後すぐにエリート課長との不倫が始まったが、しばらくして同期で課長の部下とも交際。きちんと仕事もこなしつつ、ゲーム感覚の恋愛を楽しんでいた。だが、同じように社内不倫をしていた女子社員に思わぬ事件が発生。それを機に翠の恋愛ゲームにも暗雲が立ち込める。
愛する妻を殺され、汚職の疑いをかけられたベテラン刑事・蛯原。妻が失踪して途方に暮れる高校教師・辻。事件の渦中に巻き込まれた二人は、やがてある宗教団体の関与を疑い、ともに捜査を開始するのだが…。新本格の雄が、綿密な警察取材を踏まえて挑む本格捜査小説。驚天動地の結末があなたを待ち受けます。
有力地銀合併に絡む贈収賄事件で事情聴取を受けていた財務省キャリアの大貫が墜死した。事件との関連の薄い彼の死に不審を抱いた東京地検特捜部の後鳥羽検事は、大貫が改革派議員と組んで日本再生のために大掛かりな日米経済改革を行おうとしていたことを知る。事件は財務省、日米政府を巻き込む大謀略に発展した。
沢渡三姉妹が山奥のクラシック・ホテルで毎年秋に開催する、豪華なパーティ。参加者は、姉妹の甥の嫁で美貌の桜子や、次女の娘で女優の瑞穂など、華やかだが何かと噂のある人物ばかり。不穏な雰囲気のなか、関係者の変死事件が起きる。これは真実なのか、それとも幻か?巻末に杉江松恋氏による評論とインタビューも収録。
「私と別れても、逍ちゃんはきっと大丈夫ね」そう言って日和子は笑う、くすくすと。笑うことと泣くことは似ているから。結婚して十年、子供はいない。繊細で透明な文体が切り取る夫婦の情景ー幸福と呼びたいような静かな日常、ふいによぎる影。何かが起こる予感をはらみつつ、かぎりなく美しく、少し怖い十四の物語が展開する。
人気女優の吉川香里が六本木のホテルの一室で殺された。死体の顔の部分には鉄製の鍋がかぶせられていた。それに次いでクラブのママ・石黒和子が殺され、彼女の顔には今度は紙製の釜がかぶせられていた。さらには結婚式を翌日に控えた浅野由香里が深夜、多摩川べりで殺され、現場には奇妙な和歌が書かれた紙が残されていた。ここに至って十津川は、米原市の筑摩神社で行われる「鍋冠祭り」がこの事件と何らかの関連があると、現地に赴く。やがて見えてきた犯人の恐るべき殺人の動機とは。
下級公家がいかに権力の中枢にのし上がっていったのかー構想四十余年。歴史の“虚”を剥ぎながら、卓越した分析力と溢れる好奇心で、真摯に史料と対峙し続けた評伝の最高峰。
有罪、それとも無罪?被告人の運命は、あなたたち六人に委ねられた。いわくありげな裁判員たち、二転三転する評議、そして炸裂する究極のどんでん返し!裁判員制度のすべてがわかる、傑作リーガルサスペンス。
俺の名前は草吹大輔。ノンフィクション作家だ。三ヶ月前に全国の引き篭りの若者たちのインタヴューをまとめた『引き篭り悲喜こもごも』を出版し、それが見事に大ベストセラーとなり、各マスコミから時代の寵児と、祭り上げられたばかりだ。(表題作「ニートピア2010」より)。あらゆるメーターを振り切る、13の小説を体験せよ。
沈黙の淵に身を沈めながら、唯一信じる“親”のために人を殺し続ける男。その貌は、聖者に似ていた。「主はあなたをお救いになります」「私は神を信じません」神よ、男はどこへゆこうとしているのか?神とは、救いとは伊集院文学の最高峰。
ファウルズ。とある町の名前でこの町の名前。人が降ることで有名で、地理の試験に出ることは決してないが、誰もがみんな知っている。人が降るっていうのは人が降るってことで、つまり文字通り人が降る。降るなら雨か雪、せいぜいがところ蛙程度にしておいて欲しいという要望は上まで届いたことがない。そんな町に送られてきたユニフォームとバットを身につけたレスキュー・チーム=町の英雄たちの物語。第104回文學界新人賞受賞作。知の迷宮をさまよう「つぎの著者につづく」併録。
「まるで不作の生大根をかじっているようだ」さんざんにもてあそばれた挙句、罵られ捨てられたお松は、偶然出会ったその男、煙管職人の勘蔵を絞殺してしまった。-この言葉を胸に秘めて、数奇な運命を辿るお松を評して、長谷川平蔵は、「男にはない乳房が女を強くするのだ」というが…。鬼平犯科帳番外篇。
お台場にあるテレビ局が、72時間テレビ生本番の最中に、正体不明のグループにのっとられた。劇場型犯罪に翻弄される警察。犯人たちの真の狙いは何か?30歳を目前にした女子経理部社員が、人質になった恋人を救うため、たったひとりで立ち向かう。手に汗握る、著者の全てが詰まった幻のデビュー作。
人気絶頂のときに突然失踪、同居していた姪の自分も捨てて隠遁生活を送っている女優、叶紅子。シナリオライターの仕事に行き詰まりを感じ、失踪以来会ったことのない紅子を訪れた奈三子は、生まれながらに「女優」である伯母、紅子の壮絶な生き様を見せつけられるー人気脚本家が描いた究極の女優像とは。