出版社 : 文藝春秋
破滅寸前の天才数学者ケイン。彼を悩ませる謎の神経失調には大きな秘密があった。それは、世界を根底から揺るがす「能力」の萌芽だったのだ。それを狙い、政府の秘密機関“科学技術研究所”が動き出し、その権力を駆使してケインを追いはじめた。なぜ彼らはケインを追うのか?彼らが狙うケインの「能力」とは何なのか?そして科学者トヴァスキーが進める「研究」の目的とは?執拗な追手から逃れつつ、ケインはその謎に迫ってゆく。いくつもの物語が謎をはらんで一斉に疾走、ここに前代未聞のアイデアを仕込んだジェットコースター・サスペンスが幕を開ける。第1回世界スリラー作家クラブ新人賞受賞作。
数学者ケインとCIA工作員ヴァナー。圧倒的窮地に陥った二人が共闘を開始した。一方ケインを追うフォーサイス博士も戦闘のプロを動員、火力とマンパワーを増強して捕捉作戦を過激化させる。これで役者はそろった。すべての布石の配置は完了した。強大な敵に追いつめられたケインの「能力」は、ついに発現する。非力な民間人にすぎない彼の唯一最大の武器が発火するー確率的にありえない連鎖反応を引き起こし、やつらの包囲網を突破するのだ。すべての物語はここに至って一点に集中し、炸裂する伏線、伏線、伏線。つぎつぎに明かされる意外な真実。そして、この長く壮絶な戦いの「目的」とはいったい何なのか?未曽有の超絶的サスペンス、結末へ向けて全力疾走を開始!第1回世界スリラー作家クラブ新人賞受賞作。
埼玉県蓮田市で、ある朝、一家四人が忽然と姿を消した。炊きたてのごはんやみそ汁、おかずを食卓に載せたまま…。両親と娘、その祖母は、いったいどこへ消えたのか?女性ライター・五十嵐みどりは、関係者の取材をつうじて家族の闇を浮き彫りにしてゆくー。一方、戸田市内では謎の連続通り魔事件が発生していた。たまたま事件に遭遇した売れない推理作家の「僕」は、自作のモデルにするため容疑者の尾行を開始するのだがー。
水戸・徳川家と会津・松平家の間になにやら秘密があるらしい。桑山十兵衛にその秘密を探れとの密命が下った。旅の絵師に扮した十兵衛は会津へ潜入するのだが…。同時に進展する上総の旧家の出戻り娘・登勢と十兵衛の恋の行方は如何に?八州廻り・桑山十兵衛が関東各地を駆けめぐる人気シリーズの第四弾。
21年前、ボートの操舵ミスで房総の海に投げ出された浅見光彦の父は、美瀬島の漁船に助けられるが、生死の境をさまよう床の中で奇妙な声を聞いた。「こんなにつづけて何人も送ることはない」「そうだな、来年に回すか」。父は、その翌年亡くなった。父の死の謎を解くべく島を訪れた浅見の前で、知人の水死体が相次いで発見される…。
サチコ、底辺を這いずる痩せた、小さな女。手首に無数のためらい傷を抱えて。その女を知って、高校教師の内のハリガネムシが動きだす。血を流し、堕ちた果てに…。身の内に潜む「悪」を描き切った驚愕・衝撃の芥川賞受賞作。人間存在の奥の奥を見据えて、おぞましくも深い感動を呼び起こす。単行本未収録「岬行」併録。
「女らしいってどういうこと?」ある日突然、男勝りのミカがユウスケに聞いてきた。青いインコによれば、ミカはどうやら振られてしまったらしい。恋をして変化するミカに戸惑うユウスケ。そんなユウスケにも告白してくる女の子が現われて…。中学生になった双子の日常を爽やかに描く「ミカ!」第二弾。
炭鉱労働、安保闘争、『ノストラダムスの大予言』や『エクソシスト』の大流行、某ヨットスクール事件に、バブル崩壊と援助交際…。戦後日本を象徴するチープな事件をモデルに、運命に翻弄され、転落の一途をたどる主人公・沼田永吉の人生を描く。日本の昭和は、これでよかったのか?霞っ子クラブと著者との座談会を収録。
元女子プロレスラー司書…殺人犯似の民宿主…ドイツ人の靴修理屋…ウクライナ人のバニーガール…お水販売のホテトル嬢…コンピューターの個人指導をする42歳独身・高山邦夫。人付き合いの不得手な彼が出会うバラエティゆたかな人々。ときに困って迷って悲しんで喜んで驚いて楽しんでネットワークは広がっていく…。
「管鮑の交わり」で知られる春秋時代の宰相・管仲と鮑叔。二人は若き日に周の都で出会い、互いの異なる性格を認め、共に商いや各国遊学の旅をしつつ絆を深めていく。やがて鮑叔は生国の斉に戻り、不運が続き恋人とも裂かれた管仲を斉に招くー。理想の宰相として名高い管仲の無名時代と周囲の人々を生き生きと描く。
異国の森の小さな家で、幼子と二人きり、妻を待つ。森から声が聞こえる、奇妙な住人が訪れる、妻は戻らない…三島由紀夫賞受賞作『にぎやかな湾に背負われた船』から四年、小説の新たな可能性を切り拓く傑作短編小説集。
昭和20年8月9日、ソ連軍は突如、満洲に侵攻を開始した。その頃、牡丹江の森田酒造では、保安局の氷室が、白系ロシア人家庭教師エレナをスパイ容疑で斬殺する。栄華の絶頂から奈落の底へ。二人の子供を抱えた森田波子の苦難の逃避行が始まる。自らの引き揚げ体験を元に運命の転変と戦争の悲劇を描く感動の長篇小説。
「あなた、この着物要らない?」高校時代からの親友の言葉には続きがあった。「この着物を着てある女に逢ってほしいの」そしてー。奥さんにしたいナンバーワンといわれた女の、その実は?からみあう愛と憎悪の中で、予期せぬ結末が待つ十二の物語。女は見かけによらぬもの、あなたもだまされて下さい。
桶狭間の戦いで今川義元の首級を挙げた毛利新介と服部小平太。二人は信長に武功を認められ昇進を果たすが、その後、新介は織田家の家督を相続した信忠に、小平太は豊臣秀吉に仕え、別々の道を歩むことになった。二人の武将を待ち受ける数奇な運命と信長、秀吉の天下人への道のりを克明に辿った戦国歴史長篇。
産婆のオバァのまじないによって姿を見えなくされてしまった愛する息子。末婚の母、津奈美は命をかけて井戸に飛び込み、“陰”の世界へと向かう。他の人間にかけられた「七つの願い」を奪うことで、息子の姿を取り戻すのだ…。美しい島の自然を背景に、若き母親の一途で壮絶な愛を描いた、ファンタジーの傑作。
1985年、御巣鷹山に未曾有の航空機事故発生。衝立岩登攀を予定していた地元紙の遊軍記者、悠木和雅が全権デスクに任命される。一方、共に登る予定だった同僚は病院に搬送されていた。組織の相剋、親子の葛藤、同僚の謎めいた言葉、報道とはー。あらゆる場面で己を試され篩に掛けられる、著者渾身の傑作長編。