出版社 : 文藝春秋
親しい人だけでなく、この国さえも操ろうとした、愚か者がいた。 四国・松山の名門高校に通う二人の青年の「友情と裏切り」の物語。 27歳の若さで代議士となった男は、周囲を魅了する輝きを放っていた。秘書となったもう一人の男は、彼を若き官房長官へと押し上げた。総理への階段を駆け上がるカリスマ政治家。 「この男が、もしも誰かの操り人形だったら?」 最初のインタビューでそう感じた女性記者は、隠された過去に迫る。 『イノセント・デイズ』の衝撃を越える、そして、『店長がバカすぎて』とも全然違う、異色の不条理小説が誕生。 国際政治学者・三浦瑠麗氏、推薦! 「冷酷とは真に空っぽであることなのかもしれない。読了してそう思った。 政治のみならず人間の怖気だつような貌を描き出す小説。ルサンチマンのもたらす破壊力はかくもすさまじい」
父を旗本奴に殺された少年・予助は、水戸光圀によって剣の腕を見出され、捨て子を間諜として育てる幕府の隠密組織「拾人衆」に加わる。仲間とともに火つけ盗賊「極楽組」を追っていたが、父の死の真相を知りー。了助と光圀、「極楽組」の絡み合う因縁。そして、新たな師を得て了助は日光道中へ。さらに加速する大江戸諜報劇!
演出家、劇作家、俳優、映画監督、小説家とマルチに活躍する松尾スズキ、三年ぶり待望の新作小説。 放送作家見習いの「俺」は、十年間師匠と仰いでいた人物が自殺した日、映画館で偶然出会った女・スミレにいきなり結婚を申し込む。スミレは離婚したばかりだった。 することのない俺とスミレは、酒浸りの日々を送るようになる。 そんな中、俺を捉えて離さないのは、師匠が手首に入れていた矢印形の刺青のことだったーー。 次々と地獄の扉が開いていくような男女の転落物語でありながら、どこかに人間存在を見つめる苦い笑いがにじむ松尾ワールドの真骨頂。
小さい頃から、殴って、殴られるのが普通だった。誰も本当のことを教えてくれなかった。なぜ自分だけが、こんな目にあうんだろうー上京して芸人となった石山の前に現れる、過去の全て。ここにいるのは、出会いと決断があったから。著者渾身の初小説。
中学で登校拒否になった沙羅は、一年遅れで入学した通信制の高校で 幼馴染だった万葉に再会。読書好きの万葉に読書の楽しさを教えられ、 自分なりに本を読むように。一方で、大学に進学した万葉は、 叔父さんの古本屋を手伝いながらも将来に迷いを感じていたーー。 宮沢賢治「やまなし」、伊藤計劃「ハーモニー」、福永武彦「草の花」など、 実際の本をあげながら描く瑞々しい連作短編集。
コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営む杉浦草は、秋のある日、道端で「たすけて」と書かれたメモを拾う。 折しも紅雲町では女子中学生が行方不明中。メモと関連づけ、誘拐・監禁を視野に警察も動き出すが、直後に少女は家出とわかる。そして、無関係なメモの件は放置される。 腑に落ちないお草は周辺をあたり、独居の老女が自宅で倒れているのを発見、救助する。ところが数日後、留守のはずの老女宅に人の気配を感じてーー。 親の介護や「8050問題」に悩む人びとに、お草さんの甘いだけではなく厳しさも伴う言動は響くのか。 人気シリーズ第9弾! 第一章 昼花火 第二章 桜が一輪 第三章ストーブと水彩絵の具 第四章 コツン、コツン 第五章 月夜の羊
この者は、神か、悪魔かーー。 気鋭の著者が、医療の在り方、命の意味を問う感動巨編。 大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。 あるとき、難病の少年の治療方針をめぐって、二人は対立。 「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。 そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。 大学病院の闇を暴こうとする記者は、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と西條に迫る。 天才心臓外科医の正義と葛藤を描く。
言うまでもなく北原白秋は、明治・大正・昭和にわたり詩人、歌人、民謡作家、童謡詩人として活躍したマルチの文芸家。この鳥越碧さんの小説は、創作における苦悩の軌跡を縦軸、三人の妻との愛憎を横軸にして、その文学者白秋の生涯を追ったものです。白秋は明治18(1885)年、福岡県柳河(現・柳川)の造り酒屋の跡取りとして生まれました。早くから文学に目覚め、中学卒業を前に、文学を一生の仕事にすると決意して東京に出奔、早稲田大学に入ります。『明星』の与謝野鉄幹、晶子、石川啄木、木下杢太郎らと親交を結ぶ中、次第に詩人として頭角を現わし『邪宗門』で世の寵児となりますが、経済的には実家が倒産し、苦境に陥ります。そんなとき出会ったのが、隣家の人妻、松下俊子でした。彼女と愛し合うようになった白秋は、俊子の夫から姦通罪で訴えられて拘置され、仕事も名声も失います。二人は一度は別れますが、やがて再会して結婚。しかし結婚生活はうまくいかず離婚、白秋は経済的のみならず創作の面でも行き詰まります。そんな中、『青鞜』に勤めていた江口章子(あやこ)と知り合い再婚、心の安定を得ます。尽くす章子に支えられながら童謡の仕事を始めた白秋は、ようやく窮乏生活から脱しますが、自宅を新築した地鎮祭の夜、なぜか章子は雑誌編集者と駆け落ちをしてしまいます。三度目の妻は佐藤菊子。子供にも恵まれ、ようやく安らかな家庭を得ましたが、すでに詩歌壇の大御所となった白秋は、文学的苦悩からしばしば感情を爆発させるようになります。誰からも怖れられて距離を置かれ、糖尿病から視力も奪われ、孤独感を募らせる中で白秋は昭和17(1942)年、58歳で世を去ります。著者・鳥越碧さんは平成2(1990)年に、尾形光琳の生涯を描いた『雁金屋草紙』で第1回時代小説大賞を受賞、その後も多くの作品を世に問うてきたベテラン作家で、その練達の筆で白秋の苦闘の実相に迫ります。
舞台は室町時代、播磨国。律秀・呂秀の兄弟は、庶民を相手に病を診て、薬を方じ、祈祷によって物の怪を退ける法師陰陽師。だが、実際に物の怪が見えているのは弟の呂秀だけだった。ある晩、呂秀のもとに恐ろしい異形の鬼が現れる。鬼は、かつて蘆屋道満に仕えた式神で、三百年以上も新たな主を求めていたのだったー。新たな陰陽師ものの誕生!
ショウは教会を襲撃して逃走した若者二人組を追跡していた。難なく居場所を割り出して二人を見つけ出したショウだったが、その眼前で一人が崖から身を投げて死亡してしまった。教会襲撃は冤罪で、いずれ疑いは晴れるはずだったのにー自殺した若者は“オシリス財団”なるカルトグループの研修を受けていたという。彼は洗脳されたのではないか。調査を始めたショウは、同カルトに関する記事を発表した記者が殺害されていたことを知る。“オシリス財団”が死の原因ならば、これ以上の犠牲を阻止せねばならない。ショウは身分を隠し、ワシントン州の山中にあるカルト施設への潜入調査を決意した。指導者イーライのもと、屈強な男たちが目を光らせるカルト村。ここで何が行なわれているのか。若者はなぜ自ら命を絶ったのか。この村に隠された真の目的とは?武器なし。外部からの援軍なし。24時間の監視下で、ショウの孤独な戦いがはじまる。「静」の名探偵リンカーン・ライムに続いて名手ディーヴァーが生み出した「動」の名探偵コルター・ショウ第二作。緊迫度、孤立無援度100%の傑作誕生。
「わが懐にはいった窮鳥をどうして殺せようか」これまでの劉備の生きかたを観て、-人からうけた恩を返す型の人間ではない。と、洞察した。どれほど曹操が厚くもてなしても、劉備に滲みてゆくものはない。檻にはいった虎に愛情をかけても、檻からでた虎は飼い主をいきなり襲うであろう…。中国歴史小説の第一人者がいざなう「魏」を創った男たちの物語!
冴えない僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい 日常の風景が一転! 思わず二度読み! 痛くて、切なくて、引きずり込まれる……。 6つの物語が照らしだす光と闇 島清恋愛文学賞、本屋大賞ノミネート『自転しながら公転する』の山本文緒最新作! 伝説の直木賞受賞さく『プラナリア』に匹敵るす吸引力! これぞ短編の醍醐味! ばにらさま 僕の初めての恋人は、バニラアイスみたいに白くて冷たい……。 わたしは大丈夫 夫と娘とともに爪に火をともすような倹約生活を送る私。 菓子苑 舞子は、浮き沈みの激しい胡桃に翻弄されるも、彼女を放って置けない。 バヨリン心中 余命短い祖母が語る、ヴァイオリンとポーランド人の青年をめぐる若き日の恋。 20×20 主婦から作家となった私。仕事場のマンションの隣人たちとの日々。 子供おばさん 中学の同級生の葬儀に出席した夕子。遺族から形見として託されたのは。
「ホノカは何度も炎上したが、そのたびに必ず復活した。炎上が、文字通りこの不死鳥をさらに強くしたのだ」脅される“パパ活女子”、女性を狙う“ぶつかり男”、トリプルワークの“デリバリー配達員”、人気女子アナを襲った“ネット炎上”…。いま池袋で起きているトラブルに、Gボーイズが打った手とはーI/W/G/P第17弾!
シリーズ第十弾。最新長編。 今、明かされる「ガリレオの真実」。 房総沖で男性の銃殺遺体が見つかった。 失踪した恋人の行方をたどると、関係者として天才物理学者の名が浮上した。 警視庁の刑事・草薙は、横須賀の両親のもとで過ごす湯川学を訪ねる。 「愛する人を守ることは罪なのか」 ガリレオシリーズ最大の秘密が明かされる。
台湾でドラマ化進行中! 台湾モダンホラーの決定版が満を持して登場。 タクシー運転手の呉士盛(ウー・シーシェン)は人身事故を起こして借金に追われて、娘は家出し妻とも言い争いが絶えない。ある日、タクシーの溜まり場に放置されていた車の中で古いカセットテープレコーダーを見つけ、何気なく再生ボタンを押すと男のかすれた声が漏れてきた。 「……ミナコ?」 士盛の妻・郭湘瑩(グオ・シャンイン)は最近、ひどい耳鳴りに悩まされていた。 耳鳴りはやがて台湾語や日本語が混ざった幻聴となり、ある夜ついに幻聴と幻覚に操られ、自宅の屋上から墜落し重傷を負う。 病院に駆け付けた士盛はその帰りに、気味の悪い道尼をタクシーに乗せる。道尼は士盛に、「早く穢れを解かなければ、妻は死ぬ」と告げた。 湘瑩は「ミナコが私と娘を殺しに来る」と言い続けるようになり、ついに精神科病棟に隔離される。その夜、湘瑩は首を 180 度捻じ曲げた異様な状態で死んでいるのが発見される! 妻の死に、謎の声が囁く「ミナコ」が関わっていると直感した士盛は道尼から聞き出した「毒を持って毒を制する」呪法を用いて悪霊を倒すべく、玉山(新高山)西峰の悪霊の棲家を目指す。
折口山に暮らすのは…セックスの回数を記録する愛人、徘徊癖のある妻を介護する老人、アパートのドアが開きっぱなしの裸男、朝どうしても起きられなくなってしまった女、困った人の面倒を見たがる聖職者。町はずれの植物園に、彼らは吸い寄せられるようにやってくる。
『ぼぎわんが、来る』(『来る』とタイトルを変えて映画化)で衝撃のデビューをした澤村伊智さん。 次々とホラー、ミステリーの力作を発表し続ける澤村さんの、新たな代表作が誕生しました。 舞台はどこにでもある平凡なニュータウン。そこにカルト教団の信者の家族が引っ越してきます。その家族は明らかにご近所から浮き上がっていて、しかも娘の茜はどうやら虐待を受けているらしい。主人公の慧斗は、茜の現状を見かねて救出に乗り出すが……こう書くと悪の組織から「お姫様」を救い出す子どもたちの冒険物語が展開されるのかと思いきや、そこが一筋縄でいかないのが澤村伊智さんの魅力です。 どんな風に「一筋縄でいかない」のかは是非ご自身の目で確かめてみてください。
横山秀夫氏、感嘆。 やられた。英国人作家が書いた「東京」 に迷い込み、気がつけば、心はあらかた 「占領」 されていた。 すこぶる付きの闇と謎と情念。 しかも、 小説としてべらぼうに面白い。 ーー横山秀夫 (作家) 1949年、7月。GHQ占領下の東京で、国鉄総裁が出勤途中に姿を消し、深夜の鉄路で発見された。列車にはねられた無残な轢断死体としてーー。 戦後最大の怪事件、「下山事件」。その闇にイギリス作家が挑む未曾有のミステリー大作。 下山国鉄総裁、変死体で発見。おりしも国鉄は、GHQの方針により大規模な人員整理に着手したばかりで、労働組合や左翼分子による犯行が疑われた。 GHQ上層部のウィロビーらの命で捜査を担当することになったGHQ捜査官スウィーニーは、裏社会とのコネを手がかりに占領都市の暗部へと潜ってゆく。総裁の死は他殺か自殺か。警視庁捜査一課と捜査二課が対立し、マスコミや世論も揺れる中、スウィーニーの捜査線上にGHQの謀略機関〈本郷ハウス〉の影が見え隠れし、彼は徐々に戦後の“黒い霧”に呑み込まれてゆく……。 1964年、6月。初のオリンピックを目前にする東京で、下山事件に関する作品の取材を進めていた探偵小説作家・黒田浪漫が失踪した。編集者を名乗る男の依頼で黒田の行方を追うことになったのは元刑事の私立探偵・室田。だが消えた作家の足跡を追ううちに、室田は東京の暗い半面にひそむ黒い黒い迷宮に少しずつ踏み込んでゆく……。 そして1988年、12月。病床に臥せる天皇の容態を憂えて沈む東京に、翻訳家ライケンバックはいた。かつてCIA工作員として日本に派遣され、やがて日本文学の研究者として東京に住むことになったライケンバックのもとに、戦後の忌まわしい事件の亡霊がやってきた。彼の運命を狂わせた下山事件。その亡霊が、今、ここ、昭和の最後の年に。あのとき、いまだ復興していない占領下の東京で何があったのかーー? あの占領下の黒い霧を清算するときが来た。 戦後最大の怪事件「下山事件」にブリティッシュ・ノワールの鬼才が挑む。あの“黒い霧”を追い、狂わされ、追いつめられ、破滅していった者たちの姿を描く切迫の新文体。 もはや読むべき「下山事件」はないと思っていた。挑んだ筆者に敬意を表したい。 異形の「シモヤマ・ケース」をありがとう。(横山秀夫) 犯罪小説史に異形の刻印を黒々と刻む〈東京三部作〉、完結編にして最高傑作の誕生。