出版社 : 文藝春秋
朝鮮出兵の前半、文禄の頃。一通の文箱が博多の津に打ち上げられた。それは半島に渡った夫を思う妻のものだった。興味を持った豊臣秀吉は女を名護屋に呼び寄せたが…(「汐の恋文」)。顧みられること稀な戦国の世の夫婦の姿に焦点をあて、「武」の背後に秘められた様々な情愛の光景を描いた傑作短編七作を収録。
郷里ゆかりの地で漁師になった長尾。彼に伴われ移り住んだ紗江は「二号丸」と呼ばれ、地域のコミュニティから拒まれる一方、長尾の妻とは電話を通じて不思議な交流を続けていたが…。表題作ほか、プリンを巡る男たちの思いが熱い短篇三作と、大震災以降を生きる女性たちを描いた中篇「あの日以降」を収録。
天保の大火でお袖を失い自堕落な生活をおくる色男・瓢六。しかし老中・水野忠邦と“妖怪”鳥居耀蔵の陰謀に苦しむ人々を見ていられず、また謎の武家女性・お奈緒の魅力に導かれるように、相棒の堅物同心・篠崎弥左衛門と幕政の理不尽に立ち向かう。大切な人を喪った者のみが知る優しさが漂うシリーズ第四弾。
新米同心vs大奥出身の尼僧。江戸の新本格! 若き定町廻り同心の仁八郎は、上役の命で訪れた先で元大奥勤め・年齢不詳の庵主と出会う。その周囲で次々と不審な事件が起こるが…。
久慈屋の大番頭、観右衛門の依頼で芝神明大宮司、西東正継を助けることになった小籐次。社殿前の賽銭箱に若い男が剣で串刺しにされ、死んでいたという。大宮司は、小籐次に思いもかけない秘密を打ち明けたー。“酔いどれ”の名が江戸市中に広まり、小籐次の身には次々に新たな難題が降りかかる。ますます快調の決定版第5作!
何をしていましたか?ツイッターに投げられた質問に思い思いの答えを返す人たち。問いの全文が知らされるのは答えが出揃ってからー小説家のネムオが震災後に始めたそんな言葉遊びが、さまざまな場所にいるさまざまな男女の人生を丸くつないでゆく。この著者にしか書けない、静かだけれど力強い長編小説。
カメラマンの喜多川はある日、若い女性から余命短い母親の遺影用の写真を撮ってほしいと依頼される。母親はかつて喜多川に撮影されたことがあるというが、全く記憶にない。一体どんな因縁があったのかー(「遺影」)。50歳から22歳まで、フィルムを巻き戻すようにさかのぼって人生の哀歓を描き出す傑作。
医療は平等なり。近代医療の父の高潔な生涯 パリで神聖なる医学の精神を学んだ医師・高松凌雲は、帰国後、旧幕臣として箱館戦争に参加する。近代医療の父を描いた幕末歴史長篇。
「俺は、俺を殴ってやろうと思ったけれど、どう殴っていいのかがわからない。」 スーパーでアルバイトをしながら、いつの日かスポットライトを浴びる夢を見る売れないバンドマン。ライブをしても客は数名、メンバーの結束もバラバラ。恋をした相手はピンサロ嬢。 どうでもいいセックスや些細な暴力。逆走の果てにみつけた物は……。 人気ロックバンド・クリープハイプの尾崎世界観による、「祐介」が「世界観」になるまでを描いた渾身の初小説。 たったひとりのあなたを救う物語。 著者プロフィール・尾崎世界観(おざき・せかいかん) 一九八四年、東京生まれ。二〇〇一年結成のロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル、ギター。多くの人から言われる「世界観が」という曖昧な評価に疑問を感じ、自ら尾崎世界観と名乗るようになる。一二年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビューし、日本武道館公演を行うなど、シーンを牽引する存在に。男女それぞれの視点で描かれる日常と恋愛、押韻などの言葉遊び、そして比喩表現を用いた文学的な歌詞は、高く評価され、独自の輝きを放っている。
晴太郎が恋をした!? 江戸の菓子所「藍千堂」シリーズ第2弾 穏やかで実直、菓子づくりのことばかり考えている兄・晴太郎が惚れたのは、訳ありの女画師だった。店を守るため、弟・幸次郎は兄を止めるのだがーー。 煉羊羹に柏餅、金平糖など、晴太郎が工夫を凝らして丁寧に作り上げる季節のお菓子も色を添える、江戸人情小説。
医学生ゲバラは友人ピョートルとオンボロバイクにまたがり、南米大陸を駆け巡る。放埒な人妻、偉大な詩人、抑圧された人々、病に苦しむ患者と接し、次第に目覚めていく…。没後50年(2017年)、生誕90年(2018年)にゲバラを、キューバ革命を、そしてラテンアメリカを書き尽くす4部作の第1弾!
ノーベル文学賞作家の不朽の名作を新訳で ジャングルの動物に育てられた少年モーグリの冒険譚。映画化も進行中の、ノーベル文学賞作家の不朽の名作がみずみずしい新訳で蘇る。
弁才天はいつから琵琶を持つようになったのか? 神々の逢瀬に歯噛みする猿、秋に桜を咲かせる木、蝶に変わる財物ーー京の不思議がつぎつぎに晴明と博雅をおとなう大人気シリーズ。
安倍晴明と源博雅のコンビが平安の闇を祓い続けて夢枕作品は百を越えた。映画、歌舞伎、ドラマ、音楽、漫画と越境を繰り返し「陰陽師もの」という一大ジャンルを築く元となった小説・陰陽師シリーズの磁力の源と謎に、インタビュー、対談、座談会、エッセイ、登場人物紹介、全話解説等あらゆる角度から迫ったファン必携の一冊。