出版社 : 文藝春秋
四国統一を目指す長宗我部元親の旗下で、勇名を馳せた名将・波川玄蕃。元親の妹・養甫を妻とし、領民からの信望も篤い玄蕃だったが、いつしか元親の暗い嫉妬を買い、次々と失脚の罠を仕掛けられる。やがて襲う悲劇ー戦国乱世における夫婦の情愛、家族の絆、側近達の活躍が生き生きと描かれる感涙時代小説。
幕末の乱世、尊王攘夷派志士の中心人物として短い人生を駆け抜けた久坂玄瑞。長州藩医の子として生まれ、黒船来航から間もなく家族を喪ない、攘夷の志に燃えた。松下村塾の双璧として高杉晋作と並び称され、師・吉田松陰の妹を妻とした。詩を愛し、武に生き、もののふとして散ったその生涯を描いた決定版。
過去の徴兵検査で第二乙種不合格、そして三十二歳となった今、兵隊にとられることはないと確信していた山尾に、召集令状が届く。この一枚の紙が、山尾のみならず家族の運命までも大きく狂わすことに。古兵の制裁にも耐え復員したが、すべてを失った山尾は、召集令状を作成した区役所兵事係への復讐を誓う。
金が欲しいんやったら爺を紹介したる。一千万でも二千万でも、おまえの手練手管で稼げや。妻に先立たれ、結婚相談所で出会った二十二歳歳下の小夜子と同居を始めた老人・中瀬耕造は、脳梗塞で倒れ一命を取り留めたものの意識不明の重体に。だが、その裏で、実は小夜子と結婚相談所を経営する柏木は結託、耕造の財産を手に入れるべく、周到な計画を立てていた。病院に駆けつけた耕造の娘・尚子と朋美は、次第に牙をむく小夜子の本性を知り…。
クラス替えは、新しい人間関係の始まり。絵の好きな中学3年生のヒロシは、背が高くいつも一人でいる矢澤、ソフトボール部の野末と大土居の女子2人組、決して顔を上げないが抜群に絵のうまい増田らと、少しずつ仲良くなっていく。母親に反発し、学校と塾を往復する毎日にうんざりしながら、将来の夢もおぼろげなままに迫りくる受験。そして、ある時ついに事件が…。 大阪を舞台に、人生の入り口に立った少年少女のたゆたい、揺れる心を、繊細な筆致で描いた青春群像小説。
観音様が見下ろす街で、珈琲豆と焼き物のお店『小蔵屋』を営む、おばあさんの杉浦草。常連客からは親しみを込めて、「お草さん」と呼ばれている。その『小蔵屋』がある紅雲町にある疏水のそばに、ぽつんとある商店街というには小さな「ヤナギショッピングストリート」がある。そこへ、雨の日に買い物に出かけたお草さんは、さみしそうな男が落としていった手紙を拾おうとして、黒い車にひかれそうになり、誤って電器店の店先にあるマスコット「ドリ坊」を壊してしまう……。 電器店の店主の五十川からは、高額の弁償を迫られるが、商店街の他の人たちが間に入り、弁償の件は棚上げとなる。しかし、草が気がかりなのは拾った手紙のほうだった。 手紙の「帰っておいで」の文字は、水ににじんで、器の牡丹餅の景色のよう。それは、一体、誰から誰への手紙なのか。そして、小さな商店街にもある〈秘密〉があった。 北関東の地方のある街を舞台に、老若男女が織りなす日々を「小さな謎」を軸に、たおやかに描き出した、コーヒーのように、すこしビターな味わいの短編集。 「小蔵屋」のお草さんが活躍する「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ第四弾。
違法薬物の売人たちが次々と殺され、騒然とする街・渋谷。トラブルメーカーの友人翡翠からある情報を託されたことで、いくつもの集団から追われる身となった17歳の家出少女・ジョウは、傷つきながらも必死に活路を開いていく。追っ手は何者か? 情報の正体は? 全てが見えたとき、彼女は起死回生の一手を放つーー「女性刑事クロハ」シリーズで注目を浴びる著者によるノンストップ・ハードボイルド・ミステリー。タフでクール、これまでにない新しいヒロインが誕生しました。
英米ミステリ賞総嘗め、24歳の天才新人登場! クアラルンプールの摩天楼内の銀行襲撃計画。爆薬の仕掛けられた金の奪還。裏社会のディテール満載で描く21世紀最高の犯罪小説。
書き下ろし時代小説の巨星、ついに文春文庫登場! 背は低く額は禿げ上がった老侍で、なにより無類の大酒飲み。だが、ひとたび剣を抜けば来島水軍流の達人である赤目小籐次が、次々に難敵を打ち破る痛快シリーズ登場。
湖畔の村に彼女が帰ってきた。東京に出て芸能界で成功した由貴美。ロックフェスの夜に彼女と出会った高校生・広海はその謎めいた魅力に囚われ、恋に落ちた。だが、ある夜、彼女は言う、自分はこの村に復讐するために帰ってきたのだと。村の秘密と美しい女の嘘が引き起こす悲劇。あまりに脆く切ない、恋の物語。
自己啓発書を読み漁って空回る若きサラリーマン、お見合いパーティに参加しても動物の行動を観察するように冷静になってしまう三十代女性、リストラされたことを家族に言い出せない二代目ベンチマン…この時代を滑稽に、しかし懸命に生きる人々を短篇の名手が描いた、ユーモラス&ビターな七つの物語。
大検校菊沢寿久が守ってきた、深く寂しく強靱な生命力を底に流す地唄の世界。継承者として期待された娘の邦枝は、偉大な父に背いて日系二世の男と結婚、渡米する。古き伝統の闇と新旧世代の断絶、親子の確執を描くデビュー作「地唄」を収録した初の長編小説。若き有吉佐和子の圧倒的筆力と完成度の高さに酔う!
テレビでおなじみの作家・岩下尚史が描く三島由紀夫の知られざる物語。 舞台は、約50年前の東京。赤坂の一流料亭の長女として、絹に覆われ贅沢に育った19歳の満佐子は、才気あふれる一人の文士と出逢う。本来、住む世界が違うはずの二人はなぜか強く惹かれあい、逢瀬を重ねるうちに、男はある“決心”を固める。若き三島由紀夫の秘められた恋を、実話をもとに絢爛たる文体で小説に仕立てた傑作。