出版社 : 文藝春秋
故郷を奪われ、生き方を変えられた。それでもアイヌがアイヌとして生きているうちに、やりとげなければならないことがある。北海道のさらに北に浮かぶ島、樺太(サハリン)。人を拒むような極寒の地で、時代に翻弄されながら、それでも生きていくための「熱」を追い求める人々がいた。明治維新後、樺太のアイヌに何が起こっていたのか。見たことのない感情に心を揺り動かされる、圧巻の歴史小説。
江戸時代から続く金沢の芸者置屋・盲剣楼で、終戦直後の昭和二十年九月に血腥い大量斬殺事件が発生した。軍人くずれの無頼の徒が楼を襲撃、出入り口も窓も封鎖されて密室状態となった中で乱暴狼藉の限りを尽くす五人の男たちを、一瞬にして斬り殺した謎の美剣士。それは盲剣楼の庭先の祠に祀られた伝説の剣客“盲剣さま”だったのか?七十余年を経て起きた誘拐事件をきっかけに、驚くべき真相が明かされる!?
元服の儀を済ませ、名実ともに当主となった林弥は、義姉への告げられない想いを募らせながら、運命の濁流に翻弄される。身分や立場の差を超えて時代を変えようとする少年剣士の友情と成長を描く、傑作青春時代小説。
森の中に建つ屋敷“ブラックヒース館”。そこにはハードカースル家に招かれた多くの客が滞在し、夜に行われる仮面舞踏会まで社交に興じていた。そんな館に、わたしはすべての記憶を失ってたどりついた。自分が誰なのか、なぜここにいるのかもわからなかった。だが、何者かによる脅しにショックを受け、意識を失ったわたしは、めざめると時間が同じ日の朝に巻き戻っており、自分の意識が別の人間に宿っていることに気づいた。とまどうわたしに、禍々しい仮面をかぶった人物がささやくー今夜、令嬢イヴリンが殺される。その謎を解かないかぎり、おまえはこの日を延々とくりかえすことになる。タイムループから逃れるには真犯人を見つけるしかないと…。悪評ふんぷんの銀行家、麻薬密売人、一族と縁の深い医師、卑劣な女たらしとその母親、怪しい動きをするメイド、そして十六年前に起きた殺人事件…不穏な空気の漂う屋敷を泳ぎまわり、客や使用人の人格を転々としながら、わたしは謎を追う。だが、人格転移をくりかえしながら真犯人を追う人物が、わたしのほかにもいるというー英国調の正統派ミステリの舞台に、タイムループと人格転移というSF要素を組み込んで、強烈な謎とサスペンスで読者を離さぬ超絶SFミステリ。イギリスの本読みたちを唸らせて、フィナンシャルタイムズ選ベスト・ミステリ、コスタ賞最優秀新人賞受賞。多数のミステリ賞、文学賞の最終候補となった衝撃のデビュー作!
文政9年正月。今年こそは平穏な日々を送りたいと願う小籐次のもとに元日早々、藤藩の近習頭・池端が訪ねてくる。旧主久留島通嘉が床に伏せって新年の登城を拒んでおり、窮状を救えるのは小籐次だけだという。じつは通嘉は何者かから、初登城の折、森藩の御鑓先を頂戴すると脅されていた。「御鑓頂戴」をもくろむのは何者か?
「この国に、真の諜報組織をつくれ!」警視庁公安部長の密命を受けた、国際派の若きキャリア公安マン片野坂彰。最強の先輩情報官と、音大出身で三か国語を操る女性捜査官を相棒に、特捜チームが始動する。最初の事件は、国境を望む対馬。一撃で三人を殺した黒幕はー。大人気の青山望シリーズに続く、公安小説の最先端!
金持ちなのにドケチな女社長・中島ハルコは、超パワフルなスーパーマダム。そんなハルコのもとには、様ざまな悩み事を抱えた人たちが集まる。恋も仕事もパッとしないフードライターの菊池いづみもその一人。ハルコの核心を突く毒舌と正論で長年の不倫生活から脱却した。最近は、ハルコに何かと用事を言いつけられて…。
坂本龍馬と祝言を挙げるも、大酒を呑んで勝海舟に毒舌を吐く「妻らしからぬ」おりょう。龍馬の周囲からは離縁を迫られるが、寺田屋事件で活躍して名を上げる。夫婦は仲睦まじく薩摩へ、軍艦に乗って長崎へ。龍馬亡きあと、おりょうが選びとった意外な後半生とはー激動の世に自立した魂が輝く!爽快長編小説。
山の麓の売春宿にやってきたオランウータンのポポロと、ヤギの甘汁。動物たちの活躍ぶりに、人間が戦慄する表題作をはじめ、“極限状況”に置かれた人々の悲哀と、そこから見いだした美しい光を、リズミカルな文体と、ぶっとんだユーモアでお届けする“イエロートラッシュ”シリーズ・第二弾の全四編。
廃寺のコケの上に置かれた赤ん坊「なにか」。「ええ声」を持つ彼は、ある夫婦に引き取られ「オニちゃん」と呼ばれて成長する。ある時、その特別な声を否定され、いつしか「悪声」となっていくー。迸るイメージ、疾走するストーリー。まっさらな姿勢で見たまま感じたままを連ね、河合隼雄物語賞を受賞した力作長篇。
旗本の黒崎を訪ねた柳河藩士が帰りに斬殺された。物盗りの仕業ではないが、なぜか藩ではこの件を隠そうとしているようだった。一方、黒崎は書画骨董好きで有名だが悪い噂もあった。そして黒崎家には、若く相当な剣の遣い手の武士がいた。はたして闇討ちの下手人は誰か、そして柳河藩が事件を闇に葬ろうとした理由とはー。
師走、寒気増す江戸深川・六間堀長屋で、燗徳利に挿した水仙を静かに愛でる浪人・坂崎磐音。そこに今津屋の老分番頭・由蔵からの使いが訪れる。主人・吉右衛門の妻・お艶が亡くなって一年四ヶ月が経ち、主人の再婚に心を砕く由蔵。小田原宿の小清水屋の娘、お香奈を後添えに迎えるべく、鎌倉へ向かうという由蔵に磐音は同道することに。滞りなく対面は済んだはずだったが、翌朝、お香奈は姿を消す。姉には想い人がいた……。そう吐露する妹のお佐紀。磐音は行方を追う。 巻末には、著者特別インタビューを収録!
深川の長屋で浪人暮らしの坂崎磐音は、日光社参の勘定を担うことになった両替商・今津屋からある提案を持ちかけられる。一方、麻疹が流行して将軍家にも患者が出るが、長崎から上府した阿蘭陀商館付の医師は、反対派による妨害のために城中での診察がかなわない。さらには、医師の暗殺計画までも浮上して…。磐音の剣が疾る!
上野に到着した青森発上り急行「津軽」の車内で絞殺死体が見つかった。身元は保険証から赤木喜一と判明したが、郷里の湯沢からは9日前に上京したという。しかも駆けつけた妻は「主人ではない」と証言。犯人は誰を殺したのか。赤木本人はどこに消えたのか。追憶の彼方へ去りし“出稼ぎ列車”が蘇る新装版。
父が殺された。父は詐欺師だった。奴隷解放運動の資金の名目で大金を巻き上げ、それを狙う悪党に殺された。12歳の少年チャーリーは金を約束どおり届けようと決意する。時は19世紀。父の贖罪のため、少年は遙か南へと旅立つ。だがそのあとを父を殺した男たちが追う…。『音もなく少女は』『その犬の歩むところ』の名匠の新たなる感動作。