出版社 : 文藝春秋
衆議院議員の宇田清治郎は、総理がらみの疑惑を糾弾されていた。その最中、三歳になる孫娘が誘拐された。犯人の要求は、罪の自白!タイムリミットは、翌日の午後五時。犯人の動機は宇田家への怨恨か。総理の罪を暴くことにあるのか。保身のための駆け引きを模索する官邸サイドと戦う宇田一族。幼き少女を救うための「家族の戦い」が始まる!
一八六一年三月十三日、横浜に生まれた。二十五、六になるまで、定職に就くことなく、風の吹くまま、浮き雲暮らしをしていた。四十を過ぎて、報われない女遍歴にも終止符を打つのだが、戦争の機運が高まり、日露戦争が始まっ 、従軍記者として急遽、戦場に派遣されることになってしまった…。
妻を惨殺された南町の同心土久呂凶四郎は、奉行の根岸により夜の市中見回りを仰せつかった。除夜の鐘が鳴る大晦日の日もまた、江戸を探索していた。ゴーンと鳴った鐘の音にしばし聞き惚れた土久呂だが、その音が移動しているのに気が付いた。「ウン、鐘が動く?」手下の源次とともに鐘の音を追いかけるのだが…。
土佐高知藩山内家の家臣の重富家に、次男・利次郎が生まれた。だが利次郎はやんちゃが過ぎて祖父の家に預けられることになる(「初恋の夏」)。一方、雑賀衆の姥捨の郷で育った霧子は、復讐の思いを秘めたまま、実の両親の仇である泰造に従っていた…(「霧子の仇」)。坂崎磐音の弟妹ともいうべき若者たちの青春の日々を描く連作集。
天才少女と呼ばれ、成長に従い無駄なことを切り捨てていく薫と、無駄なものにこそ人のあたたかみが宿ると考える雪子。すれ違う友情と人生の行方を描く表題作。男が先輩の結婚式で出会った美女は、人間関係を「レンタル」で成立させる業者だったー「レンタル世界」。既存の価値観を心地よく揺さぶる二篇を収録。
19世紀末、キューバの独立戦争に米西戦争で介入した米国が勝利し、スペインの後釜に居座った。スペイン軍の少年兵アンヘルは仲間と脱走し、サンチャゴ・デ・クーバで戦後、財を築く。その彼が小作の娘に産ませた男子こそ“幼き獅子”フィデル・カストロだった。キューバ革命の英雄カストロ父子を描いた、シリーズ第3弾。
妻子と別居中の榊は、恋人を東京に残したまま、地霊うごめく土地を遍歴する。秋田の娼家と清廉な女子高生たち、厳冬の佐渡で理容店の女主人が持つ剃刀、三河八橋で一夜を共にした人妻の乳房、非在ゆえに一層ふくらむ女たちの気配ー官能と死のあわいから異界が立ち現われる瞬間を描く、藤沢周の本格小説集。
人生の大半を路上で過ごしてきた、ろくでなしの青年・グン。妻・娘とともに施設に入所した桧山優作が、幼い息子だけを置き去りにしたのは何故なのか。心象風景=“道”を歩いたグンは、驚愕の真実に突き当たる…。古より存在する「歩く者」たちと、世界の壮大な意味。圧巻のラストへと導かれる異次元ロードノベル。
武家の妻女風の女が、何の記憶もない状態で寺に保護されながら、直後に姿を消した。女は記憶がない“ふり”をしていたらしいー。一方、仇討免許状を届け出た若い侍が女を捜していた。侍は兄を朋輩に斬られて仇討を決意し、その兄の妻こそが例の女のようだ。女の目的は何なのか、そして真相は?緊迫の展開の好評第4弾!
累計2000万部の人気時代小説シリーズ「居眠り磐音」〈決定版〉 青雲の志をともにした幼馴染を失い、豊後関前藩を揺るがせた内紛は、 坂崎磐音の活躍によって終結を迎えます。 しかし、磐音の想い人は忽然と姿を消して……。 秋深まる西国から、京都、金沢、そして江戸へ。 様々な人と事件に遭遇しながら、磐音は奈緒を追いかけます! 2019年5月17日に公開される映画「居眠り磐音」。 巻末には、京都の撮影所を陣中見舞いに訪れた様子を、 佐伯さんが書き起こした〈特別エッセイ〉を収録!
累計2000万部の人気時代小説シリーズ「居眠り磐音」〈決定版〉 5巻「龍天ノ門」では、おこんに危険が迫ります。 おこんの慰労のために訪れた紅葉狩りでは、 狼藉を働く直参旗本に出くわし、 おこんが今津屋の女中だと知った旗本たちは 江戸市中に戻った後にも難癖をつけにやってきます。 さらに、狐火見物に出掛けた先でも、 おこんに災難が! 必死で探す磐音たち。 ページをめくる手が止まらなくなります。 果たして、おこんは無事なのか!? 初版の帯は、 2019年5月17日に公開される映画「居眠り磐音」で おこんを演じる木村文乃さんのお写真です。
クワコーこと桑潟幸一准教授が、たらちね国際大学に転勤して最初の夏休み。低偏差値大学の「受験生応援プログラム」というリクルート大作戦の一環として、ティッシュ配りにあけくれていたクワコーへの、次なる指令は?「ゆるキャラの恐怖」…大学対抗ゆるキャラコンテストに着ぐるみで出場せよ。審査委員長はみうらじゅん、「おそろしき事がおこるぞよ」との脅迫状が届いて…。「地下迷官の幻影」…セミの次はキノコだ!理想の食材を求めるクワコーは、エロナマズ大王に恫喝され、学園に渦巻く権力闘争の暗流に巻き込まれる。文壇のマエストロの脱力系ミステリー!
小説家、芥川龍之介。東方と西方の物語と伝承と信仰に魅せられた男。そのなかで静かに渦を巻く不安。それがページから少しずつ滲み出す。半透明の歯車が帝都を襲った震災の瓦礫の彼方にうごめき、頽廃の上海の川面には死んだ犬が浮き沈み、己が生み出した虚構の分身と邂逅し、キリストと信仰の物語に心を囚われ、漱石がロンドンでの怪異を語る。河童。ポオ。堀川保吉。ドッペルゲンゲル。鴉。マリア像。歯車。羅生門、藪の中、蜘蛛の糸、西方の人ーキリスト。私のキリスト。イギリスの鬼才が芥川文学をコラージュし/マッシュアップし/リミックスして生み出した幻想と不安のタペストリーを、精妙に美しい日本語に移し替えた決定的翻訳。文学的にして音響的、イギリス文学であり日本文学であり、近代文学と現代文学を越境する野心作。
チェルノブイリ原発事故から1年ー1987年(昭和62年)4月、東洋新聞の記者・土井垣侑が特派員としてモスクワに降り立った。当時のソビエト連邦はペレストロイカ政策が進められていたが、記者はソ連政府の管理下でしか取材をすることができず、しかも本社からは当局を刺激しないよう「特ダネ禁止」を言い渡されていた。そんな状況に不満を抱いた土井垣は、独自ネタを拾おうと精力的に街へ繰り出す。だが、ソ連政府は一記者にまで監視の目を光らせていて…。
左手に宿る“兄”と俺。奇妙な2人の逃避行が始まるーある事故以来、左手から死んだ兄・海斗の声が聞こえるようになった岳士。家出した2人は殺人事件に巻き込まれ、容疑者として追われるはめに。濡れ衣を晴らそうと奔走する岳士と海斗だが、怪しいドラッグ「サファイヤ」、そして美しい彩夏との出会いで“兄弟”の思惑はすれ違いだす…予想不可能のラスト、切ない衝撃に涙があふれる。