出版社 : 文藝春秋
豊後関前藩の若き武士3人が帰藩したその日に、互いを斬り合う窮地に陥る。友を討った哀しみを胸に、坂崎磐音は江戸・深川の長屋で浪人暮らしを始める。大家の金兵衛に紹介された両替屋での用心棒稼業で、やがて幕府をもゆるがす大きな陰謀に巻き込まれ…。平成を代表する超人気時代小説の“決定版”が、ついに刊行開始!
ビール会社の営業課長、明良。都議会議員の妻、篤子。テレビ局の報道ディレクター、謙一郎。それぞれの悩みや秘密を抱えながら、2014年の東京で暮らす3人が人生の中で下した小さな決断が驚愕のラストへとつながるー「週刊文春」連載時から話題沸騰。吉田修一史上、最も熱い議論を呼んだ意欲作を文庫化。
喘息持ちだった少年エルネストは舞台女優ジャスミンとの恋など青春を謳歌しつつ、やがて医学生となる。1952年、ペロン政権下の母国アルゼンチンを出て親友ピョートルと共に南米大陸縦断の旅へ。社会の弱者らと出会いながら成長していくー。キューバ革命の英雄たちが躍動する著者渾身のシリーズ、原点を描く青春編が開幕!
フランスて菓子作りの修業をしたパティシエールの亜樹は、菓子職人の祖父のもと、下町の西洋菓子店「プティ・フール」で働く。女ともだち、恋人、仕事仲間、そして店の常連客たち……。店を訪れる人々が抱える様々な事情と、それぞれの変化を描く連作短編集。巻末にパティシエール・岩柳麻子さんとの対談を収録。解説・平松洋子 クロゼイユ ヴァニーユ カラメル ロゼ ショコラ クレーム 対談 岩柳麻子×千早茜 解説 平松洋子
偉大なるスター、キング・オブ・ポップが51歳で急逝した。子供時代、二人の兄と一人の姉と共にデビュー後、独立して類稀な歌と踊りで世界の救世主となっていた。遺されたのは11歳の娘“傷痕”。だがその出生は謎でイエロージャーナリズムは色めき立つ。彼女は、世界は、カリスマの死をどう乗り越えるのか。
あのころ知りあいのだれもがなにかしらのウソをついて暮らしていたー長く潜伏したあとでひょっこり姿をあらわした、よく似た姉妹による巧妙なウソ。郵便受けに届いた1枚の葉書が呼び起こした、弟との30年前の秘密。猫めいた老婦人、白い紙の舟。消えゆく記憶の彼方から、おぼろげに浮かび上がる6つの物語。
突然、死んだ夫は名前も職業もすべてが嘘だった。真実を求めて、雅代は彼の遺した小説を読み進める。そこには奇妙な連続少年失踪事件が描かれていた。ストーカー化した前夫の影に怯えながらも、雅代は小説の舞台を訪れ、やがて一軒の洋館に辿り着く。何が現実で、何が虚構か?折原ワールド全開の長編小説。
東宮妃として入内を待つ内大臣の娘・月冴。ところが入内が近くなった矢先に東宮は急死。新東宮となった弟宮はまだ幼く、入内は十年先送りに。邸に閉じこもり鬱々としている月冴の前に天狗や化狐が現れ…。あやかし者の力を借りてドラマティックな恋を求める姫君とやんちゃな妖怪たちの王朝ファンタジー。
八月十六日、京都・五山の送り火の夜。興奮にざわめくホテルの屋上から、情事の相手が姿を消した。女が残していったスーツケースを手に、呆然と東京に戻った男を待っていたのは…鉄壁のアリバイ崩しに挑む本格推理「火と汐」。ほかに「証言の森」「種族同盟」(映像化作品「黒の奔流」原作)「山」の全四篇を収録。
坂本龍馬とともに暗殺された男、中岡慎太郎。彼はいったい何者だったのか。土佐藩の山間の小さな村の庄屋の家に生まれた光次(のちの慎太郎)は、やがて志士活動に身を投じ、幕末という時代を駆け抜けてゆく。地味で地道でいごっそう(頑固者)。真面目と理屈っぽさが取り柄の男は、魑魅魍魎うずまく幕末の世で何をなすことができたのか?龍馬がもっとも頼りにした男の波瀾万丈の一代記。
夏祭りが近づくたび、艶夢のなかで激しく乱れる舞桜子。どれだけ過去から逃れても、年の離れた男しか愛せない秋実。夫との夜がなくなって以来、熾火のような欲求を抱え続ける小夜子…。神々を祭らふ夜。男と女は、人の世の裂け目を踏みはずすー恋愛と官能の第一人者が多様な“性”を描き尽くす!六つの禁断の物語!
第160回芥川賞候補作。武装警備員としてイラクに赴いたKに、さまざまな思いが去来する。何が日常で何が非日常か。日本と戦地を隔てるものは。誰が敵で誰が味方なのか。荒涼とした紛争地、資本主義社会の裏側を乾いた筆致で描き出す。著者デビュー作「市街戦」も併録。
途方もない悲しみが、若き牧師の心を引き裂いたー6歳の僕の前にあらわれたジェイコブス師。神を呪う説教を執り行ったのち、彼は町から出て行った。しかしその後も僕は、あの牧師と何度も再会することになる。かつては電気仕掛けのキリスト像を無邪気に製作していた牧師は、会うたびごとに名前を変え、「聖なる電気」なるものを操る教祖にのぼりつめる。少年小説であり青春小説である前半を経て、得体の知れぬ恐怖が徐々に滲み出す。忌まわしい予感が少しずつ高まる中、あなたは後戻りのきかない破滅と恐怖への坂道を走りはじめる。
何かが起こった。ジェイコブス師の稲妻の肖像写真に撮られたオクラホマの娘に、恐ろしい何かが起こった。牧師の電気治療でドラッグ中毒から脱した僕の身にも何かが起こるのだろうか?オクラホマ娘の一件で再び僕のもとから去ったジェイコブス師。だが運命の糸は僕たちを三度目の邂逅へと導いてゆく。二〇〇八年。初老となった僕はジェイコブスが「ダニー牧師」と名を変えて、一大信仰運動を開始したのを知る。牧師の主催する集会にもぐりこんだ僕は、彼の「癒し」を目撃する。“聖なる電気”による電撃で、歩けなかった者が歩きだし、病に苦しむ者は苦痛から解放される。まやかしか?それとも電気の魔術は本物なのか?僕と牧師の運命が、またもやひとつに撚り合わされる。だが僕は知りつつあった。ジェイコブスの「癒し」を受けたひとびとに何かが起こっていることをーそして僕がジェイコブスとともに稲妻の降り注ぐ山荘を訪れたとき、ああ、何かが起ころうとしていた、ひどく忌まわしい何かが!この世ならざる怪異。悲しみの淵から噴き出す恐怖、恐怖!ホラーの巨匠が、久々に放つ怪奇小説大作、ついに恐るべきものが電撃とともに頭をもたげる!
今年33歳になる竹宮ひかるは、結婚を前提に交際していた相手の母親から、手切れ金と共に息子と別れるよう言い渡される。幼い頃から母に束縛され、上京してきてからも人生が思い通りにいかない。そんな時、亡くなった父から、一通の封筒が届く。そこには携帯の番号と「開けるヒント」という言葉が書かれていた。その番号の相手は、ひかると高校時代に孤独を分け合い、いまも孤独の只中にいる達郎だった。再会した二人は、修学旅行で乗った特別列車「あおぞら号」にいた、幸運をもたらすと伝えられている「ソラさん」を思い出す。彼を見つけることが、いまの人生を変えるきっかけになるのではないかと思い、二人の「ソラさん」を探す旅が始まる。
命さえ惜しくない愛に巡りあったとき人はーいとこのお糸の危機を救うべく奔走するお菓子職人の晴太郎と幸次郎。たとえ、絶望の淵に突き落とされても人を笑顔にする和菓子がある!
土地も金も水も米もない、ないない尽くしの藤戸藩に、道具役(能役者)の長男として生まれた屋島剛は、幼くして母を亡くし、嫡子としての居場処も失った。以来、三つ齢上の友・岩船保の手を借りながら独修で能に励んできたが、保が切腹を命じられた。さらに、藩主が急死し、剛が身代わりとして立てられることに。そこには、保の言葉と、藩のある事情があったー。
廃病院に集まった十二人の少年少女。彼らの目的は「安楽死」をすること。決を取り、全員一致で、それは実行されるはずだった。だが、病院のベッドには“十三人目”の少年の死体が。彼は何者で、なぜここにいるのか?「実行」を阻む問題に、十二人は議論を重ねていく。互いの思いの交錯する中で出された結論とは。