出版社 : 文藝春秋
茶の間と重なりあったリビングの、ソファと重なりあった半透明のチャブ台に、曾祖父がいるー。戦時下の日常の光景が、二〇二〇年の現在と重なっている!大混乱に陥った東京で、静かに暮らしている男に、昭和二十年三月十日の下町空襲が迫っている。曾祖母は、もうすぐ焼け死ぬのだ。わたしたちは幻の吹雪に包まれたオフィスで仕事をしながら、静かにそのときを待ったー。
36歳の京子ともうすぐ40歳の俊介。結婚して6年目の夫婦の悩みは、子どもができないことだ。愛なんてこの世にないかもしれない。でも、京子に子どもが生まれたならば。諦めきれない俊介が提案したのは、驚くべき解決策だった。男二人と女一人。過去が思いがけない形で未来へと接続される、危うい心理劇。
「あたしは羽衣お炎。こう見えても、江戸じゃあちっとは知られた稼業人さ」四年前に佐渡へと送られた無宿人。嘘か真か、それが想い人の青峰信三郎らしい。“羽衣”の異名を持つ女渡世人のお炎はそんな噂を聞きつけ、アメリカ製の最新式六連発銃・コルトM1847を携え信三郎を探す旅に出た。しかし佐渡の金山には、「オドロ様」なる奇怪な像を信仰する邪教が広がっていた。オドロ様一党と対立し、追い詰められたお炎はコルトを抜くが、やがて恐るべき陰謀に巻き込まれるー。濁流のようにうねる物語。圧倒的なリーダビリティを誇る時代長編!
不況の嵐が吹き荒れる江戸ー同心を辞し、庶民相手に鍋釜や小銭を貸す「損料屋」として暮らす喜八郎。与力や仲間たちと力を合わせ、巨大な敵と渡り合う!二千坪の土地を牛耳る黒幕の目的は?危機感をつのらせる深川の住人たち。
明治に舞台を移した「新・御宿かわせみ」シリーズ第5弾・待望の文庫化! 婚礼の日の朝、千春の頬を伝う涙の理由を兄・麻太郎は摑みかねていた。 「かわせみ」の若者たちに訪れた転機と事件を描く。 表題作ほか、「宇治川屋の姉妹」「とりかえばや診療所」「殿様は色好み」 「新しい旅立ち」の全五篇収録。
「満洲国の人間」を名乗る老人からのNHK爆破予告電話をきっかけに、元週刊誌記者セキグチは巨大なテロ計画へと巻き込まれていく。暴走を始めたオールド・テロリストたちを食い止める使命を与えられたセキグチを待つものは!?横溢する破壊衝動と清々しさ。これぞ村上龍と唸るほかない、唯一無比の長篇。
幼いころに父を失い、織田、今川両家の人質となり、苦労を重ねる家康。桶狭間の戦いで、今川から自由となったが、織田と同盟を結んだことにより戦はまだまだ続く。越前朝倉攻め、姉川の戦い、三方ヶ原の戦い、長篠の戦い、甲州討入り、上田合戦。この時代に生きる事とは戦う事であった。戦無き世を夢見て、家康は戦い続ける。
本能寺の変、伊賀越え、小牧・長久手の戦い、小田原攻め、関東移封、朝鮮出兵、関ヶ原、大坂の陣。遂に戦無き世を実現させた家康だが、天下を落ち着かせるにはまだ果たさねばならないことがある。戦国乱世を終わらせた武将にして現代日本の礎を築いた男の一生を渾身の筆で世に問うた遺作、遂に文庫化。
昭和4年。著者の父・宮本演彦は慶應の予科に通い、さらに本科に進む。教壇に立つのは西脇順三郎や折口信夫。またたびたび訪れた歌舞伎座の舞台には、十五代目羽左衛門、五代目福助が…。父が遺した日記は、時代の波の中に浮かんでは消えていく伝説の人々の姿を捉えていた。“本の達人”が描く小さな昭和史。著者のライフワーク3部作第2巻。
毎夜、午前一時にバーに現われる男。投函されなかった手紙をたったひとり受け留め続ける郵便局員。植物になって生き直したいと願う青年ー狂おしいほどに愛を求めながら、満たされず生きてきた彼らの人生に、ふいに奇跡が訪れる。抗えないはずの運命に光が射すその一瞬を捉えた、著者史上もっともやさしい作品集。魔性の50 Stories。
秋雨が十日も続き、仕事にあぶれた住民たちが食べ物にも事欠くようになった新兵衛長屋で、炊き出しが行われることになった。その会場の空き部屋で、勝五郎が金無垢の根付を見つけた。元の住人は夜鷹の女、しかも部屋には家探しした跡がある。小藤次は根付の持ち主探しにかかわるが、はたして根付は誰のもとに落ち着くのか!?
冬季閉鎖中のホテルで起きた惨劇から30年。超能力“かがやき”をもつかつての少年ダンは、大人になった今も過去に苦しみながら、ホスピスで働いていた。ある日、彼の元に奇妙なメッセージが届く。差出人は同じ“かがやき”をもつ少女。その出会いが新たな惨劇の扉を開いた。ホラーの金字塔『シャイニング』の続編、堂々登場!
「あの人たちが野球少年を殺してる!」少女アブラは超能力を介し、陰惨な殺人事件を「目撃」する。それは、子どもの“かがやき”を食らって生きる“真結族”による犯行の現場だった。その魔の手はやがてアブラへと迫る。助けを求められたダンは、彼らとの闘いを決意。そして次なる悪夢へと導かれる…。
夫の夢 維新を助けた 愛妻ーー 明治維新を成し遂げた隆盛を陰で支える糸子。歴史を創るのは女と男。微笑みと愛に溢れる波瀾万丈の一生! 糸子は寝物語や団欒で、隆盛を勇気づけ、薩長盟約が成り江戸城無血開城となる。 男三人を産み、島妻(あんご)愛加那の二人の子も、こつこつのびのびほめほめ、と育てる。 イラスト満載で語られる歴史ロマン。
この四兄弟がいなければ、幕末の歴史は変わっていただろうー。子福者と天下に羨まれた徳川傍流・高須家から尾張、会津、桑名に散った若き兄弟は動乱の中、維新派と佐幕派に分かれ対立を深めてゆく。葵の御紋の誇りを胸に、新時代の礎となった高須四兄弟の運命を描く!
京都・祇園祭の夜に銃声が響いた!コリアンマフィアと中国マフィアの抗争の背後には、北朝鮮のサイバーテロ、そして仮想通貨強奪計画があった。さらに絡まる半グレと芸能ヤクザの闇を、警視庁公安部のエース青山望が追う!同期カルテットも結集して日本の敵を「一網打尽」にできるのか?公安を知りすぎた著者の絶好調シリーズ第10弾。
長老との結婚を拒んで舌を抜かれた女。武装集団によって拉致された女子高生たち。夢の奴隷となったアイドル志望の少女。死と紙一重の収容所の少年…人間社会に現出する抑圧と奴隷状態。それは「かつて」の「遠い場所」ではなく「今」「ここ」にある。何かに囚われた状況を炸裂する想像力と感応力で描いた異色短編集。
「乗客全員をマークせよ」。警視庁副総監の特命を帯び、人気豪華列車「ななつ星in九州」に乗り込んだ十津川警部。台湾からの旅行客、アメリカ人夫婦、気鋭の歴史学者、外務省の職員…同乗する彼らの目的が、隠された日中の歴史の真実を明かすことだと突き止めるも、相定外の妨害工作が襲う。絶体絶命の危機に、乗客たちの運命は!?