出版社 : 新潮社
千数百年間、隠されてきた「謎の神」、驚天動地の真実!軒先の括り猿、祀られる猿田彦神、庚申堂の三猿ー奈良を歩く編集者の橙子の目に、次々に「猿」が飛び込んできた。それは『記紀』で天孫降臨を先導しながら奇怪な死を遂げた「謎の神」の正体に迫る手掛りなのか?博覧強記の民俗学者・小余綾俊輔の推理と論証は、古代から現代に至るまで秘められてきた歴史を浮上させ、ある「血統」を巡る論争に終止符を打つ!
気鋭の学者が舌禍事件により教授に負の烙印を押され、病に見舞われながらも生き抜こうとするが、苦痛のあまり、自死を選ぶ。親友として学者の苦悩に寄り添ったつもりだった医師もまた、学者の妻からの辛辣な言葉に、自己嫌悪に苛まれ…。学者と医師、ふたりの絶望を通して、「愛の不在とは」「宗教とは」「精神医学とは」を問う。
左右田始(そうだ・はじめ)、50歳、職業俳優。演技経験は豊富でも、端役ばかりで名前を知る人は少ない。しかし脇役ならではの観察眼で、あらゆる現場で生じた綻びを解決し、「犯人」の心を動かし癒していく。五篇からなる、エンタメ業界ミステリー!
リスは夏のはじめについて考えたい。クマは二度とケーキを食べたくない。スズメは冷静さを身につけたい。アリはリスと真剣に話したい。イカはだれかに招かれたい。カブトムシはみんな陰気になってほしい。マンモスは絶滅をとりやめたい。カメはカタツムリにやさしくされたい。トカゲは目立ちたい。ザリガニは最悪なことに見舞われたい。カゲロウは明日話したい。ハリネズミはなにもほしくない…。63のどうぶつそれぞれに、まったくばらばらの、奇妙で切実な願いがある。その奇妙さが鏡となって、わたしたちの心をうつしだす。『ハリネズミの願い』『きげんのいいリス』『キリギリスのしあわせ』につづく、トーン・テレヘンの“どうぶつ物語”第4弾。
『源氏物語』の作者の日記には、平安から現代まで、一千年の日本が凝縮されている。『平家物語』の現代語訳を手掛けた「同業者」が紫式部を召喚して描く、この国の人々の新しい肖像画。
ネット界随一の情報屋“市民調査室”。食レポから芸能ゴシップ、政財界の不祥事まで、幅広く“有益”な情報を発信して、熱狂的なフォロワーを獲得していた。だが、ある日を境に、その投稿にフェイクが混ざり始め、ネットリンチを扇動するように。サイバー犯罪対策課・延藤は、必死に捜査を進め、その足取りを追っていくのだが、ついに現実世界で死者が出るー。
ルネサンス随一の天才、その奥に秘められた哀しみと孤独。圧倒的才能を誇りながら、周囲との軋轢が絶えなかった孤高の芸術家。イタリアの人気美術キュレーターが、ミケランジェロになり切って、一人称でその複雑なパーソナリティと人生を描く伝記的小説。
死に損ねて、かといって生き損ねて、ならば己は人間ではない。人間のなりをしながら、最早違う生き物だ。明治後期、人里離れた山中で犬を相棒にひとり狩猟をして生きていた熊爪は、ある日、血痕を辿った先で負傷した男を見つける。男は、冬眠していない熊「穴持たず」を追っていたと言うが…。人と獣の業と悲哀を織り交ぜた、理屈なき命の応酬の果てはー令和の熊文学の最高到達点!!
最愛のひとり息子を失った桜子は、カウンセラー・久根ニコライから「帰還の壺」を与えられる。3つの約束さえ守れば、息子が帰ってくるというが…。クリスマス・イブにWEBで公開され大反響を呼んだ「帰還の壺」(「あたえるひと」改題)ほか、書下ろしを加えた全7編!
子供のころ、誰もが読んだ優しい物語が今の私の心に大切なことを思い出させてくれるー。契約社員の野花つぐみは、実家の本棚でお菓子レシピが挟まった、見慣れない『小公女』の古書を見つける。それは不思議な老女・メアリさんの遺品だった。どうやらその本はつぐみだけでなく、この街の様々な人に届けられているらしい。『小公女』の「ぶどうパン」、『不思議の国のアリス』の「女王様のタルト」、『ドリトル先生』の「アブラミのお菓子」…つぐみの本探しと物語の菓子作りはやがて、簡単にはやり直せない過去を抱えた人々との優しい縁を結び始める。じんわり涙がこぼれる6つの連作集。
片桐は高校の同級生。負けず嫌いで口だけ達者、東大に行って起業すると豪語していたが、どこか地方の私大で怪しい情報商材を売りつけていたらしい。それが今や80億円を運用して六本木のタワマンに暮らす有名投資家。ある日、片桐の有料ブログはとつぜん炎上しはじめ、そんな中で僕は寿司屋に誘われる…。著者自身を彷彿とさせる「僕」が、怪しげな人物たちと遭遇する6つの連作短篇集。
泥徒が産業として躍進する世界。欧州の小国で、泥徒創造主の名門家に育ったマヤは、若くして自らの泥徒スタルィを創りあげる。…だが、それは、後に待ち受ける永き旅路の、ささいな幕開けに過ぎなかった。ある日、工房で父が変わり果てた姿で見つかる。そのうえ、一族に伝わる秘宝にして泥徒を“完全なる被造物”に至らしめるための手がかりである「原初の礎版」が、何者かに奪われたのだ。行方を暗ました三人の愛弟子を追走するマヤとスタルィ。しかし、やがて世界を二分する戦火に身を投じることとなりー。沸き立つ活劇、溢れる叙情、そして、万感の終極に刮目せよ。
近所で目撃した光景を投稿したのをきっかけに絡んできた、粘着質なアカウント。芽衣子は、彼をスマホの中で「飼う」ことに決めるがー。SNSで、職場で、近所で、家の中で。どこからか湧いてくる、可哀想な蝿たちや、蓋をしてしまいたい感情。誰もが日々「見て見ぬふり」をしているものを突き付ける、ブラックでリアルな短篇集。