出版社 : 新潮社
聡明で強い呪術の能力を持ちながら、出世の野心なく、貧しい人々の住む陋巷に住み続けた顔回。孔子の最愛の弟子である彼は師に迫る様々な魑魅魍魎や政敵と戦うサイコ・ソルジャーだった…息づまる呪術の暗闘、政敵陽虎との闘争、影で孔子を護る巫儒の一族。論語に語られた逸話や人物を操りつつ、大胆な発想で謎に包まれた孔子の生涯を描く壮大な歴史長編、第一部。
時は寛永八年、徳川家光の時代である。対朝鮮外交を一手に握る対馬藩の家老、柳川調興が突然、所領の返還を申し出た。調興の訴えは幕府を揺るがす一大スキャンダルに発展していく。朝鮮王と徳川将軍の間で交わされた国書が対馬藩の中で偽造されたり改竄されたりしていたというのは本当か。そして調興の真意は一体何なのか。…史実を基に大胆な発想で描く時代法延ミステリー。
鬼怒川沿いの大きな宿場町、阿久津。行き交う多くの人々で賑わいを見せているが、何かと事件も多い。川船の仕事一切、宿場の管理も請け負う河岸問屋を舞台に、日々の出来事の中から拾い上げられたホロリとさせられるような人情話が花を咲かせる。若い船頭・喜作と薄幸の娘・ユリとの悲恋を語る「鬼怒の船唄」、その喜作が子持ちの後家と山雀師の縁を結ぶ「鬼怒で鳴く鳥」等連作9話。
死の床にある父に古びた十字架を示され、これをジュネーブに亡命中の元ソ連反体制指導者、ウォルコフ教授に渡してほしい、と遺言されたルーシー。ロシア革命時に破壊されたと思われていたその十字架は、ウクライナ人にとっては指導者の証であるという。ジュネーブへ飛びウォルコフに会ったルーシーには、思いがけない運命が待ち受けていた…。ソ連邦崩壊を背景に描くサスペンス。
スター女優のキャット・ディレーニーは、心臓移植手術を受け、成功。だが彼女は華やかな世界には戻らず、地方局で恵まれない子供に養子縁組の道を開く番組を始めた。恋人もできて、順風満帆に見えた新生活だったが、彼女と同じ日に移植手術を受けた者たちは次々に不慮の事故で死亡していった…。全米ベストセラー作家が『私でない私』に次いで世に問う、濃密なラブ・サスペンス。
長い五寸のくわえ楊枝に三度笠も懐かしい、上州無宿の渡世人・木枯し紋次郎が帰って来た。時は嘉永三年、股旅生活にさらに十年の歳月を加え三十九歳になった紋次郎が、十年前の浮世の義理に身を阻まれて、珍しく上州中仙道は板鼻宿最大の旅籠花菱屋に逗留し、遭遇した事件の数々。一世を風靡した孤高の渡世人・木枯し紋次郎の長脇差が翻る傑作連作小説集。
フツーの家族のフツーじゃない愛のカタチ。宮内家はどこにでもいる四人家族、なんだけど-神戸で「話し屋」として働くママは、誰よりパパを愛しているのにパパだけじゃ我慢できない困ったヒト。パパは誰かに恋して輝いてるママを包み込む大人の男だけど、若い女の人にフラフラしたり。高校生の明彦は女の子が放っておかないルックスにも関わらずホモセクシャル。中学生の美香は「大人の恋愛」に憧れてはいるものの、恋に恋するお年頃。ある日、美香はママの長電話から「ママの恋愛」を知る…。
「一ヵ月8kg減で、誰もが理想体重に」ダイエット美女を決める最終選考まで、あと二ヵ月。夏のヒロインを選ぶコンテストの幕が開いた。今度こそ、絶対に生まれ変わってみせる。痩せてみせるわ。たとえ「私」を殺してでも…。「あなたは私のことを何も知らない。愛してたなんて嘘よ」そう言い捨てて、恋人は姿を消した。手掛かりを捜すうちに浮かび上がる、恋人の偽りに満ちた過去と、ダイエットコンテストの謎。もし、痩せられなければ、私には、帰るところがないの…。「もう、駄目かもしれない…。今度リバウンドしたら、その時、私は…」デビュー作『僕を殺した女』に続く驚異の第二作。華やかなダイエットコンテストに渦巻く謎と、深まる狂気を描く本格的心理サスペンス。
聖地アンヌピウカでのUFO目撃以来、北海道の小さな町・富産別町では、UFOフェスティバルを推進する者、密かに巨利を企む者など、さまざまな思惑が蠢きだしていた。そんななか行方不明になっていた第一目撃者・亜紀子が戻ってくる。彼女はアイヌの心霊治療を身につけていた…。バブル崩壊後の時代状況を鋭く捉える野心作。“もうひとつの現実”をユーカラにのせて描く叙事詩的長篇。
夫が出稼ぎに発った晩から激しくなるばかりのからだのほてり。東北の海辺の町に住む35歳の浜浦登世は、自分でも不可解な性の衝動を抑えきれなくなり、幼なじみの英子に相談を持ちかける。やがて英子は病気で入院し、皮肉なことに登世はその留守中に近づいてきた英子の夫・聖次を受け入れてしまう。ある日、抱擁の現場を息子に覗かれ…。性に翻弄されて狂ってゆく平凡な女の運命。
不倫の場を覗かれた日から、貧しいながらも幸福な家庭に魔の影が忍び寄る。脅迫者に豹変した息子と娘は共謀して登世をゆすりだし、愛人にもやがて捨てられる。流産、結核の兆候、際限なくエスカレートする子らの要求…。追い詰められた登世は、パート先の事務長にからだを買われることに。破滅へと加速度的に転がる坂道。人間の内に潜む性の魔性を照射して新境地を拓いた長編。
女に手ひどく捨てられた極端に臆病な侍がどういうわけか一念発起して“千人斬り”達成をめざし始めた…。哀れな侍の末路を描く表題作。虎を奇天烈な方法で退治して金玉という情けない姓を拝領してしまった男のその後の系図を辿る「金玉百助の来歴」。落ちこぼれ忍者のドジな結末を描く「伊賀の蟹八」等、21編の掌編に8編の怪異譚を加えた痛快無比、抱腹絶倒のショートショート集。
電気工の青年が修理に訪れたのは昼休みの風俗店だった。手作りのサンドイッチを俯いて食べていたヘルス嬢に青年は一目見て恋をした。以来、青年は客として彼女を指名するようになるのだが…。アスベストの被害に遭い長くは生きられない電気工と路地裏の風俗店で息を潜めて生きる女。大都会の裏側で蠢く不器用な男女の切なく哀しい恋を紡ぎ出す傑作「一輪」など、中編二編を収録。
ヘイドンのもとに青年時代の父を描いた絵の写真が屈いた。緑の瞳の美女の写真が続き、不審な写真が次々に送られてきた。そして最後にヘイドン自身の写真がー前日に撮られたもので、頭に銃弾を受けた様が書き加えてある。一体誰が、なぜ。一方、私立探偵スウェインの惨殺死体が見つかった。なぜか彼の部屋にはヘイドンの写真が…。秀逸な洞察力と精緻な背景描写の大作。
ホワイトハウスが新たな軍縮政策である『第一段階』を宣言したヴェテランズ・デイ前夜、陽は明日昇るの暗号のもと愛国者たちが行動を起こした。ある者はF-14トムキャットをハイジャックし、ある者は大統領の暗殺を企て、そしてー彼らは何者なのか。真の目的は。核ミサイルの抑止力に依存する軍縮交渉の場を軸に、核による人類の危機をリアルに描く迫真の軍事サスペンス。
愛称ゼーブル(縞馬、おかしな奴)の仕事は公証人。高校の数学の教師のカミーユと結婚して15年、13歳の息子と7歳の娘の父親である。彼は最愛の妻と可愛い子供たちに囲まれて愉快な人生を送ってきた。しかし妻と出会った時のあの愛の刺激を求めていたゼーブルは、愛の倦怠に耐えられなかった。そして、匿名でラヴレターを妻へ送り続けたが。フランスの気鋭が描く永遠の夫の逆転劇。