出版社 : 新潮社
真希は29歳の版画家。夏の午後、ダンプと衝突する。気がつくと、自宅の座椅子でまどろみから目覚める自分がいた。3時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。が、この世界には真希一人のほか誰もいなかった。そしてどんな一日を過ごしても、定刻がくると一日前の座椅子に戻ってしまう。いつかは帰れるの?それともこのまま…だが、150日を過ぎた午後、突然、電話が鳴った。
寂しさを、ずっと誤魔化して生きてきたんだと思う…いろんな女性を愛したけれど、家族を持とうとはしなかった父。孤独を奥深くに抱き、家族を持つのが怖かった娘。白い木綿のような不思議な魅力に溢れる、衝撃のデビュー作!第6回小説新潮長篇新人賞受賞作。
ジコチューで、ワガママで、都合よく頼ってくるくせに、こちらが頼りたいときは、冷たいオンナ。それが「調子のいい女」。銀座のナンバーワンホステスが、男どもを騙しつつ、懸命に貯めたお金をもとに、アメリカへ留学した。ボストンの学校で出会った日本人の女は整形で塗り固めた、「調子のいい女」だった。第6回小説新潮長篇新人賞受賞。
「赤ずきん」「ヘンゼルとグレーテル」など、世界の子どもたちに親しまれているグリム童話。その産みの親のグリム兄弟は年子として、18世紀後半のドイツに生れた。兄ヤーコプと弟ヴィルヘルムは、45年の歳月を費やし210の童話と579の伝説を世に送り出す一方、言語学者としても活躍。この本は、口伝のお話の収集方法やグリム(ドイツ語)辞典の業績を中心に描く、兄弟の人間性あふれる評伝。
「ぼくはどこの者か?ぼくは子供時代の者だ。ぼくは一つの国の者であるように子供時代の者だ」と書いたサン=テクス。子供時代を常に創造の基点とし、飛行士としてジャーナリストとして視野を広げつつ、夢想と行動のはてに築かれたその生涯と作品世界。生誕100年を迎え、全世界でますます高まる人気の源泉を、日本におけるサン=テグジュペリ研究の第一人者が克明に解きあかす。
ナンタケットの冷たい海底に沈む豪華客船、アンドレア・ドリア号の残骸。だが、そこにコロンブス以前の貴重な財宝が眠っていることを知る者は少ない…。NUMA特別出動班のカート・オースチンは、モロッコの沖合いで作業中に、何者かに襲撃されていた美貌の考古学者ニーナ・キーロフを救う。ニーナが探り当てていた人頭石像の秘密とは?NUMAの精鋭総登場の新シリーズ発進。
海中の財宝を独占しようと企む大実業家ハルコンの真の狙いとは何か?その背景には、15世紀に端を発し、300年以上も休眠状態にあったスペインの秘密結社の存在が隠されていた。その理念を継ぎ、合衆国南西部からメキシコにかけて一大新国家を設立、君臨しようという野望。その阻止に動くNUMAの面々に、驚くべき新事実がもたらされる。鍵を握るのはアンドレア・ドリア号だー。
俺は今昔亭三つ葉。当年二十六。三度のメシより落語が好きで、噺家になったはいいが、未だ前座よりちょい上の二ツ目。自慢じゃないが、頑固でめっぽう気が短い。女の気持ちにゃとんと疎い。そんな俺に、落語指南を頼む物好きが現われた。だけどこれが困りもんばっかりで…胸がキュンとして、思わずグッときて、むくむく元気が出てくる。読み終えたらあなたもいい人になってる率100%。
美貌の北朝鮮女性空軍将校・柳英姫。大連留学で知り合った日本人商社員・西山哲男への想いから、亡命を決意する。亡命実現のためパイロットとなった英姫は、グライダーを使ったソウル奇襲部隊の一員に選ばれる。悪天の中、作戦は決行され、韓国への潜入に成功した英姫だったが…。
西山哲男が権利を持つ、旧ソ連が開発した巨大飛行艇“怪鳥艇”。レーダーを避け、多数の人員・機材を運ぶことのできるその能力に目をつけた中国は、カスピ海に眠る“怪鳥艇”を狙う。一方、北朝鮮の工作員は、亡命に成功し、インド空軍外人部隊に在籍する柳英姫を執拗に追う…。
女は壊れた愛の記憶にとり憑かれ、亡霊のように息を潜めていた。男は日系ペルー人の宿命に翻弄され、ぎりぎりまで追い詰められた。この地上に居場所を持てない2つの魂が、出逢い、触れ合った、世界の果ての3日間。
辛辣なまでのウィット、強い意志を持ったエレガンス。いつも母は、娘に鬱陶しくまとわりついてくる。プロデューサーは女優を脱がせたがる。口先だけの男に退屈な夫、成就しない不倫。あの人はずうっと振り向いてもくれないし、久しぶりに会った友人は何を考えているのかわからない…。あなたの隣にもきっといる「鳥」たちを、現代アメリカ文学きっての短篇の名手がユーモラスに、シニカルに、けれどエレガントな筆致で描く、女と男の不安と孤独、12篇。我が子がガンに冒された経験をもとに小児ガン病棟を描き、新境地を拓いた異色作『ここにはああいう人しかいない』(O・ヘンリ賞受賞)を収録。
面の持つ怨念によって村内に死者が急増し、社に封印されたという伝説を持つ「凶笑之面」。その由来を調査して欲しいとの依頼が、蓮丈那智の研究室に届いた。差出人は業界でも悪名高い骨董商の安久津圭吾。不可解な思いを抱きつつも長野へ赴き、調査を始めた矢先、安久津は死体となって発見される。果たして面の呪いなのか?写真だけが残された「喜人面」の実物はどこに?(表題作)伝承は死なず、必ず甦る。封じられた怨念は、深き業を糧に何度でも息を吹き返す-。最新の民俗学を大胆に取り入れ、日本人の根源を容赦なく抉り出す。本邦初、本格民俗学ミステリー。
類人猿の言語能力を研究し、チンパンジーと人間を同列に扱うことを主張する学者・井手元。大学を辞め、チンパンジーと隠遁生活を送っていた彼が失踪。残されたチンパンジーが示唆したのは、残酷な結末だったーヒトとサルの境界はどこか、聖域を越えた研究の果てに真理はあるのか。哀切かつ危険なラストまで二転三転、人類のアイデンティティをゆるがし、新世紀へ跳躍する問題作。
最大瞬間風速88メートル、未だかつて日本が経験したことのない大型台風が三浦半島を直撃した。電話も電気も不通、陸路も遮断され、孤立したリゾートマンション。猛る風と迸る雨は、心に台風の眼のごとき空白を抱える滞在客を見境なく襲う。立て続けに訪れる極限の恐怖。そして炎までも、彼らを舐め尽くすべく身じろぎを始めたー若竹ミステリの分岐点となった大パニックサスペンス。
発端は女だった。富豪の老人を夫に持つ美女ノーラ。彼女が青年チャドにうずきを覚えたときから、悲劇は始まった。二人の関係を知った夫は、自らの死を偽装して保険金を手に入れる計画に、彼らを巻き込もうとしたのだ。三つ巴の化かし合いは、いつしか予想だにしない展開を迎えることにー。人種の坩堝ホノルルを舞台に、クールな笑いと色気と騙りで読者を煙にまく新世代犯罪小説。
カール・ハーボールドの脱獄が、ブルーワー郡を恐怖に陥れた。退職を迎えた保安官エズィー・ハージの脳裏からは、カールたちの犯行とされた暴行殺人事件の謎が今も離れない。牧場主デルレイ・コービットも状況を憂慮して、流れ者のジャック・ソーヤーを雇い入れた。デルレイの義娘で耳の不自由な未亡人アンナは、一粒種デイヴィッドとの平穏な生活を根底から揺さぶられてゆくー。