出版社 : 新潮社
前関白・近衛前久が「面白き童」と信長に推挙した、踊り手・加賀邦ノ介。妖にも似た魅力をもつ邦ノ介に、信長に忠義を誓う森“乱”成利の心はかき乱される。その胸中を察した明智光秀は、森乱にある取引を持ちかけた。さらに邦ノ介が「上様の念友にしていただきとうございます」と信長に分不相応なことを申し出て…。信長、千宗易、家康ら戦国の猛者に対峙し、歴史を動かした流浪の芸能者の目的とは。
平凡な日々に飽き飽きとして生きる高校生のカヤ。16歳の誕生日を迎えた直後、深夜のバス停で出会ったのは爪と目しか見えない異世界の少女だった。真夜中に邂逅を重ねるうち、互いの世界に不思議なシンクロがあることに気づき、二人は実験を始めるー。ああ、俺は、あの子の、英雄になれるじゃないか。大ベストセラー『君の膵臓をたべたい』の著者が描く、初の恋愛長篇!
東京で働いていた32歳の都は、親の看病のために実家に戻り、近所のモールで働き始めるが…。恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなの無理!誰もが心揺さぶられる、7年ぶりの傑作小説。
インフルエンザの流行下、幾度目かの入院。ホールの雛飾りに節句の頃におこった厄災の記憶が去来する(『雛の春』)。改元の初夏。悪天候と疫病にまつわる明の医学者の教え、若かりし日に山で危ない道を渡ったことが甦る(『われもまた天に』)。梅雨さなかに届いた次兄の訃報。自身もまた入院の身となり、幼い日の敗戦の記憶、亡き母と父が浮かぶ(『雨あがりの出立』)。台風の被害が伝えられるなか、術後の三十年前と同様に並木路をめぐった数日後、またも病院のベッドにいた(『遺稿』)。現代日本文学をはるかに照らす作家の最後の小説集。
自分を弄んだ男性教師を追ってたどり着いたインド・ガンジス河岸の聖地。傷心の女子大生は、ここでも「象牛」なる謎の存在に翻弄される。果たして彼女はこの懊悩から解脱できるのかー表題作の他、大阪「比〓〓駄(ひらかだ)」を流れる淀川河岸を舞台に、恋に似た短く激しい熱情を描く「星曝し」を収める、芥川賞受賞後初の作品集。
ギタリストの倉石が、マドリードの古本屋で入手した古楽譜の束。その裏には、十九世紀の文豪ホフマンの行動を辿る謎めいた報告書が綴られていた。倉石の妻・麻里奈の依頼を受け、古閑沙帆はドイツ文学者の本間に、古文書の解読を託すが…。解読が進むにつれて、ホフマンの知られざる人生と共に、彼ら自身にも繋がる不可解な暗合と因縁が浮かび上がる。この古文書は一体ー?予測不能の結末68頁は袋綴じ仕様。
次々と語られる、闇に遭遇した者たちの怪異譚。ゲストハウスでほんの一時関わっただけの男から送られてくる、罪の告白。その内容は驚くべきもので…。(「さまよえる絵描きが、森へ」)。弟が殺人事件を起こし、一家は離散。隠れ住む姉をつけ狙う悪意は、一体、誰のものなのか。(「やがて夕暮れが夜に」)。全五篇。
会社を辞め、都会での生活に行き詰まっていた真芽は、入院した一人暮らしの祖母・ハルに頼まれ、生家の庭の様子を見に行く。だが、花々が咲き誇っていた思い出の庭は、見る影もなく荒れ果てていた。ハルの言動を不審に思う真芽だったが、彼女の帰宅を信じ、庭の手入れをはじめる。しかし、次第にハルの認知症が心配され、家を売却し施設に入れる方向で話が進もうとする…。きびしい現実の先をやさしく照らす、心に沁みる感動作。
ー負けました。これをいうのは人生で何度目だろう。将棋に魅入られ、頂点を目指し、深みへ潜ってしまった男。消えた棋士の行方と魔の図式の謎を追って、北海道の廃坑から地下神殿の対局室まで旅が始まる。芥川賞作家が描く傑作将棋エンタテインメント。
1930年代末、アメリカ南部の町に聾唖の男が現れた。大不況、経済格差、黒人差別…。カフェに集う人々の苦しみをその男だけが、いつも静かに受け止めてくれた。-村上春樹が「最後のとっておき」にしていた古典的名作、新訳で復活!
いとこのサブリナの葬儀の前、美容部員のコリーナに祖母は言った。「あんたがメイクしてやりなさい」-サブリナは、黒髪に淡いブルーの瞳のとびきりの美人。なのになぜ、一族の悲運に連なるように、死を選ばなければならなかったのか。女たちは若くして妊娠し、男たちは身勝手に姿をくらます。だが一族の絆は固く、知恵のある祖母が、しばしば娘と孫を助ける。コロラド州デンバーのヒスパニック系コミュニティで、やるせない日常を生きるさまざまな世代の女たち。アメリカ建国以前からこの地に根ざしながら、非白人として疎外される痛みと苛立ちを描いて、一躍注目を集めたデビュー短篇集。2019年、全米図書賞最終候補作。
16歳の夏、私は彼女に出会った。引っ込み思案な高校生・鈴美の前に現れた、凛とした雰囲気をまとう同級生の比呂。自分と全く違う彼女に圧倒された鈴美は、その背中を追い始める。
十三年前の夏、小学四年生の百合は男に誘拐され、五年もの間、監禁された。今は男装クラブで働き、必死に自活する彼女の身辺で、犯人の仮釈放と同時に奇怪な出来事が続く。無言電話、姿なき足音、首を切られたテディベア。そして、ルームメイトが次々に失踪したー『クリーピー』著者の不気味な新境地!
稀代の毒殺魔も、三十人殺しも。日本犯罪史に残る最凶殺人鬼たちが、また殺戳を繰り返し始めたらー。新たな悲劇を止められるのはそう、名探偵だけ!善悪を超越した推理の力を武器に鬼の正体を暴き、そして、滅ぼせ!
羊飼いの青年が開拓地を求めて挑んだ険しい山、その向こうに謎の国「エレホン」はあった。手づくりの清潔な街並みに住む人びとはみな優しく、健康的で美しい。でも、それには“しかるべき理由”があった。病める者、不幸な者が処罰される一方で、お金持ちは罪を犯しても心の迷いとして許されるー。自己責任、優生思想、経済至上主義、そしてシンギュラリティ…150年前、自由主義経済の黎明期に刊行されたイギリス小説があぶり出す、現代人が見ることになりそうな未来、人間の心の暗がり。
首都直下巨大地震のAI予告がひょっこり産み落とした異物。退避を拒んだ住民を前に、皇帝就任を宣言する男が現れたのだ。究極の凡人か、はたまた超人か。その従者となることを申し出た青年は、当初の目的を忘れ、皇帝とともに破滅へのカウントダウンを待つことを選んだ…。その時、もう一人の「陛下」は??タブーに挑む空前のファンタジー。
「年齢・性別・属性の異なるメンバーが夢の世界で生活を共にする」。特殊睡眠導入剤“フェリキタス”の開発で莫大な財を成した、ソムニウム社による極秘人体実験“プロジェクト・インソムニア”。被験者に選ばれた蝶野は、心に癒えぬ傷を抱えた失意の日々から一転、自らの願望を具現化できる“夢”の世界に魅了されてゆく。しかし、とある“疑念”の発露が、完全なる理想郷を突如おぞましい悪夢へと変貌させる。ここは夢か、それともー。蝶野のかつての盟友、蜂谷が囁く。「聞いたことないか?夢の中で死ぬと、現実でも死ぬっていう都市伝説」。世間を震撼させたバラバラ殺人事件、消えた天才ピアニスト、口径が合わない大量の銃弾、そして、終わらない殺害予告。幾重にも張り巡らされた“悪意”の連鎖が前代未聞の惨劇を呼び起こす。巧緻にして大胆不敵、期待の俊英による新感覚ミステリ。